アマゾン、専用のボーイング機を50機に増やす計画 拡大する自前の航空貨物事業
米アマゾン・ドットコムは昨年末、米オハイオ州ウィルミントンの航空貨物会社、エア・トランスポート・サービシズ・グループ(ATSG)との提携を拡大し、同社専用の航空貨物機を今後2年かけて10機増やすと発表した。
同社が米国で航空機を使った輸送業務を開始したのは2016年のこと。当初は、ATSGのほか、米アトラス・エア・ワールドワイド・ホールディングスから「ボーイング767-300」を約10機リースし、同社のeコマース商品を輸送していた。
しかし今では40機となり、これらが日々、約20の空港を行き来している。アマゾンによると、これらの航空機では1日当たり、合計数十万個の荷物を輸送しており、増え続ける顧客の要望に応えているという。
今後は同機材の専用機を50機に増やし、急ぎ便配送のさらなる効率化を図るとしている。
アマゾン、航空貨物施設も拡大中
米メディア(トランスポート・トピックス)によると、アマゾンはこのときの発表に先立ち、シカゴ・ロックフォード国際空港にある航空貨物施設の敷地面積を今の6700平方メートルから1万8600平方メートルに拡大する計画を明らかにしていた。
また、今年は、テキサス州のフォートワース・アライアンス空港に新たな航空貨物ハブを開設し、オハイオ州のウィルミントン・エアパーク空港に新たな貨物仕分け施設を開設する計画だ。
アマゾンの発表資料によると、同社はこのほか、ケンタッキー州のシンシナティ・ノーザンケンタッキー国際空港の航空貨物ハブを28万平方メートル(東京ドーム6個分)に拡大する計画も立てている。
これについて、米ビジネス・インサイダーは、ケンタッキー州の同空港では、アマゾンの専用機を100機以上収容できる可能性があると伝えている。
UPS、フェデックス、USPSに及ぼす影響は?
アマゾンは、「Prime」会員向けの急ぎ便サービスを提供するため、米UPSや米フェデックス(FedEx)、米郵政公社(USPS)などの物流業者に配送業務を委託している。
今後は、同社が自前の物流業務を拡大していくのに伴い、これら物流業者のビジネスが脅かされるのではないかと指摘する人もいる。
しかし、ビジネス・インサイダーは、アマゾンの物流事業が、すぐにUPSなどの大手の規模になることはないだろうと伝えている。
とは言ってもUPSなどにとって、アマゾンが重要な顧客企業であることに変わりがない。例えば、フェデックスの売上高は、その3〜5%がアマゾンからもたらされている。UPSではこの比率が十数パーセントになる。
一方、専用機を使った自前の航空貨物事業を行うことで、アマゾンは荷物1つ当たり、2〜4ドルのコストを削減できると米モルガンスタンレーのアナリストは試算している。
その2019年におけるコスト削減の合計額は20億ドル(約2200億円)に上るという。
- (このコラムは「JBpress」2018年12月26日号に掲載された記事をもとに、その後の最新情報を加えて編集したものです)