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整形よりも肉体改造!? “美しすぎるフィットネス・タレント”たちが韓国で大人気のワケ

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
女性たちも憧れる“美しすぎるフィットネス・タレント”の講義風景(写真:ロイター/アフロ)

前回のコラムで紹介した『マッスルマニア』で火がついた韓国の“マッスル美女ブーム”の反響の多さにちょっぴり驚いている。日本でも筋肉アイドルの才木玲佳が登場しているが、韓国の“マッスル美女”たちは “マッスル・セクシー“を謳っているだけに毛色が違って映ったかもしれない。同じ筋肉であっても、日本と韓国では求めるものが違うのかもしれない。

“女神ボディ”で空前ブームを牽引する美しくセクシーな“マッスル美女”たち ヤフーニュース個人 16/05/02

ただ、韓国はもともと健康志向が強く肉体美への憧憬心が強いところがある。数年前にはルックスも抜群な芸能人たちが鍛えた筋肉美を自慢する“モムチャン(「ナイスバディ」という意味の造語)”ブームが起き、食事や運動で理想の健康美を目指す“ウェルビーイング”ブームもあった。素敵なルックスと美しいボディラインを代名詞にする芸能人が登場すると、そのトレーニングを担当したコーチが話題になり、そのノウハウが詰まった書籍やトレーニング器具が人気を集めることも多い。

数年前に日本でも一大ブームを巻き起こした“モムチャン・アジュンマ(おばさん)”ことチョン・ダヨンなどが良い例だろう。前回紹介したユ・スンオクは、チョン・ダヨンに大きな影響を受け、彼女からフィットネス・トレーニングの指導を受けたこともあるという。「ワナビー(Wannabe)・モムメ(肉体)」「モムメの終結師(究極の肉体という意味)」「Dカップ女神ボディ」と呼ばれるユ・スンオクは、とある雑誌インタビューで世界的に有名な“ヴィクトリアズ・シークレット・エンジェル”になることが夢だとも語っている。まさにカラダひとつで成功を掴もうとしているわけだ。

そんな彼女の出現もあって、今、韓国ではフィットネストレーナーたちが人気でもある。前回コラムで紹介した「脱アジア級」と騒がれるレイヤンもミスコリア出身のフィットネストレーナーだが、彼女のほかにもパク・チョロン、イ・ヨンなど、多くのフィットネストレーナーがテレビや雑誌に引張りダコとなっている。

彼女たちに共通するのは、もともと芸能人やアスリートたちを指導&サポートしていたパーソナルコーチ出身が多く、その経歴もさることながら若くて美しく話術も優れていることからタレント化していること。“美しすぎるフィットネス・タレント”として、新たなカテゴリーを作り上げていることだ。

(参考記事:ブームを作り上げた“美しすぎるフィットネス・タレント”4傑

なかでも人気絶大なのがイェ・ジョンファだ。大学卒業後に地方テレビ局のフィットネス番組を担当する無名トレーナーだったが、ネットで公開された一枚の写真で“射撃女”として一躍有名になり、一気に全国区へ。「完璧ボディ」「特級モムチャン」「ナチュラルビューティー」の愛称で雑誌やインターネットメディアに引っ張りダコになり、今ではテレビのバラエティ番組でも頻繁に出演するほど。

(参考記事:完璧すぎる美女トレーナー、イェ・ジョンファの“奇跡の一枚”

しかも、ただ“美しいフィットネス・タレント”ではなく、昨年はアメリカンフットボール韓国代表のストレンスコーチも任された。それも自ら密かに志願して試験に合格してコーチの座を手にした。美しく実力があって努力も惜しまないのだから、人気が出ないわけがない。男性はもちろん、同性の女性たちからも支持を集めている。

注目すべきは今や理想のセクシーアイコンとなっている“美しすぎるフィットネス・タレント”たちに憧れて、美に対する韓国女性たちの価値観が変わりつつあることだ。

長らく韓国では「色白で細い」ことが理想的な女性像とされてきたが、最近行われたとあるアンケート調査では「顔よりもスタイルが良い人のほうが羨ましい」と答える人が60%近くいたという。韓国メディアの記事によると、美容整形よりもフィットネスジムやティラピス、ホットヨガなど肉体改造にお金を使う女性も増えており、“アスレジャー”と呼ばれるファッションスタイルも流行しているらしい。

顔立ちよりも体のシルエットが“美しさの基準”になりつつある韓国。ゴールデンウィークも終わった今、日本でも夏に向けて体を鍛え絞っていきたいと思う人も多いはず。そんな思惑を察知して、韓国の “美しすぎるフィットネス・タレント”が日本上陸をする日も来るかもしれない。そう、かつての“モムチャン・アジュンマ”のように。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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