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「トリプルスリー」から打率3割を外し、これを加えて「新トリプルスリー」とすると…。達成者は3人だけ

宇根夏樹ベースボール・ライター
松井稼頭央 January 21, 2004(写真:ロイター/アフロ)

 日本では、1シーズンに30本塁打以上と30盗塁以上と打率3割以上を記録することを「トリプルスリー」と称している。ただ、30本塁打以上と30盗塁以上ながら打率3割未満の「トリプルスリーではない30-30(サーティ・サーティ)」と区別すべきかどうかには、議論の余地がある。というか、区別すべきではないと思う。その理由については、先日、「「トリプルスリー」は「打率3割未満の30-30」より上なのか!?」で書いた。

 ただ、「トリプルスリー」は――おそらく、バスケット・ボールの「トリプル・ダブル」に由来するのだろうが――捨てるには惜しいフレーズだ。そこで、打率3割に代わる適当なスタッツがないか、探してみた。

 出塁という点からすると、四球がふさわしい気がするものの、30四球では少なすぎる。四球率30%は、反対にハードルが高すぎる。「30-30」を達成した延べ18人中、四球率が最も高い、2019年の山田哲人(東京ヤクルト・スワローズ)でも17.2%だ。ちなみに、今シーズン、規定打席以上の四球率トップは、セ・リーグが17.2%の村上宗隆(東京ヤクルト)、パ・リーグは17.0%の浅村栄斗(東北楽天ゴールデンイーグルス)だった。2人とも、各リーグで唯一人、100四球を超えた。

 一方、二塁打30本なら、ハードルとしては問題がないように思える。倍の60本に達する選手はまずおらず(歴代シーズン最多は、2001年に谷佳知が記録した52本)、30本以上を打てば、たいてい、そのシーズンのリーグ・トップ10にランクインする(今シーズンの30本以上は、セ・リーグが5人、パ・リーグは9人)。これらの特徴は、ホームランとよく似ていて、盗塁ともそうかけ離れてはいない。

 また、ホームランと盗塁と二塁打は、いずれも同時には記録されない。それに対し、ホームランを打つと、同時に打率も上がる。二塁打30本は、表記も、30本塁打と30盗塁と揃う。順序はともかく「30-30-30」となる。打率とホームランと盗塁の場合は「.300-30-30」だ。

 もっとも、この「30-30-30」――あるいは「新トリプルスリー」もしくは「トリプル・サーティ」――にも、欠点はある。ホームランがパワー、盗塁がスピード、二塁打は??? となってしまう。強いて挙げれば、ギャップ・パワー(ギャップ=外野手と外野手の間)やラインドライブの打球の多さといったところだろうが、ホームランと盗塁のようなわかりやすさに欠ける。

 なお、「30-30」を達成した選手のうち、そのシーズンに二塁打も30本以上は3人しかいない。2002年に36本塁打と33盗塁の松井稼頭央が二塁打46本、2015年に34本塁打と32盗塁の柳田悠岐(福岡ソフトバンク・ホークス)は二塁打31本。山田は4度の「30-30」のうち、3度がそう。ホームラン、盗塁、二塁打の順に表記すると、2015年が38-34-39、2018年が34-33-30、2019年は35-33-35となる。二塁打が30本未満の2016年は、38-30-26だ。

 1995年の野村謙二郎は、「30-30-30」まであと「1」に迫った。32本塁打と30盗塁に加え、29本の二塁打を打った。「30-30」の達成者以外では、1950年の川上哲治と1958年の長嶋茂雄が「30-30-30」にリーチをかけている(もしかすると、他にもいるかもしれない)。どちらもホームランが1本足りず、川上は29本塁打と34盗塁と二塁打34本、長嶋は29本塁打(と幻のホームラン1本)と37盗塁と二塁打34本を記録した。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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