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「トリプルスリー」は「打率3割未満の30-30」より上なのか!?

宇根夏樹ベースボール・ライター
山田哲人(左)と柳田悠岐 December 1, 2015(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

 日本では、1シーズンに30本塁打以上と30盗塁以上の「30-30(サーティ・サーティ)」よりも、それに加えて打率3割以上を記録した「トリプルスリー」が浸透しているようだ。NPBのオフィシャル・サイトも、各種記録達成者一覧に「トリプルスリー」の10人(12度)を掲載しているが、打率2割台の「30-30」は載せていない。ちなみに、打率1割台や0割台で「30-30」を達成した選手はいない。

「トリプルスリー」を含め、「30-30」の達成者は12人(18度)を数える。1963年の張本勲は33本塁打と41盗塁と打率.280、2001年の井口資仁は30本塁打と44盗塁と打率.261だ。また、簑田浩二は2度の「30-30」のうち、1度目の1980年が31本塁打と39盗塁と打率.267。秋山幸二は3度のうち、1度目の1987年が43本塁打と38盗塁と打率.262、3度目の1990年が35本塁打と51盗塁と打率.256。山田哲人(東京ヤクルト・スワローズ)は直近の4度目、2019年が35本塁打と33盗塁と打率.271だ。

 打率だけを比べれば、3割以上は3割未満よりも上だ。言うまでもない。

 ただ、2019年の山田は、打率こそ3割未満の.271ながら、出塁率は.401を記録している。一方、「トリプルスリー」のなかには、出塁率4割未満の選手も――山田は3度ともそうではないが――何人かいる。

 打率の計算式は「安打÷打数」、出塁率は「(安打+四球+死球)÷(打数+四球+死球+犠飛)」だ。分母は違うものの、打率は安打によって出塁した割合、出塁率は安打以外の四球と死球を含めた出塁の割合を示している。打率は安打を打った割合でもあるが、出塁という点において、安打と四球と死球の間に差はない。

 例えば、同じシーズンに同じチームでプレーした2人が、ホームランも盗塁もまったく同数の「30-30」を達成し、一方は打率.320と出塁率.380、もう一方は打率.270と出塁率.400だったとする。ホームランと盗塁の数だけでなく、シーズンとチームを同じと仮定したのは、時代や球場によって生じる違いを除くためだ。

 この場合、彼らを「トリプルスリー」と「そうではない30-30」として、区別すべきだとは思えない。

 なお、「30-30」は達成していないが、30本塁打以上と30盗塁以上を別々のシーズンに記録した選手については、こちらで書いた。

「「30-30」はないが、シーズン30本塁打と30盗塁をどちらも記録した選手。長嶋と衣笠は各2度以上」

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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