なぜレアルはアンチェロッティを信頼するのか...チュアメニとリュディガーの獲得と“現状維持”の判断。
王者として、新たなシーズンを迎える。
レアル・マドリーは昨季、リーガエスパニョーラとチャンピオンズリーグで優勝を達成した。カルロ・アンチェロッティ監督の復帰一年目でドブレテ(2冠)を達成。充実のシーズンを過ごした。
■補強のプラン
そのマドリーは、この夏、アントニオ・リュディガー(前所属チェルシー/フリートランスファー)とオウリエン・チュアメニ(モナコ/移籍金固定額8000万ユーロ/約112億円)を獲得した。そして先日、アンチェロッティ監督が「これ以上の選手獲得はない」と述べた。
アンチェロッティ監督は大型補強を望まなかった。無論、ビッグイヤーを獲得したチームである。基本的に現状維持で問題ないという判断だろう。
また、マドリーのようなビッグクラブでは、選手たちのヒエラルキーが重要になる。余りに多くのスタープレーヤーを抱えるというのは、ある種のリスクになる。長いシーズンでは、試合に出る選手と出ない選手がいる。出場機会の少ない選手には、不満がある。そういった因子を取り除くために、できる限りコンパクトなスカッドをという考えだ。
「アンチェロッティに関しては、結果がすべてを物語っている。人間として、素晴らしい人だ。史上最高の監督の一人で、彼に指導してもらえなかったのは心残りだね。彼の残りのキャリアで最大の幸運を願っている」とはジョルジュ・キエッリーニの言葉だ。
「レアル・マドリーのようなチームでは、多くを教える必要はない。ファンタスティックな選手が揃っているから、そのグループをできる限りベストな状態で維持しなければいけない。例えば、マドリーの試合で、マルセロや(トニ・)クロースが古くからの友人であるかのようにアンチェロッティとベンチで話している姿を見ることができる。それが彼の仕事ぶりだと思う」
アンチェロッティ監督にとって、2年目というのは大きな挑戦になる。2013−14シーズン、マドリーでデシマ(クラブ史上10回目のCL制覇)を成し遂げたが、14−15シーズンに無冠に終わり、クラブを去っている。
ミラン時代(2001−2009)を除き、アンチェロッティ監督は長期政権を築いてきていない。パルマ、ユヴェントス、チェルシー、パリ・サンジェルマン、バイエルン・ミュンヘン、ナポリ、エヴァートン、いずれも3年以内にクラブを後にしている。
■無冠の過去
マドリーは13−14シーズン、「BBC」を中心に圧倒的な攻撃力を誇った。カリム・ベンゼマ、ガレス・ベイル、クリスティアーノ・ロナウドの3トップはスペインと欧州中の脅威になっていた。
だが14−15シーズン前に、アンヘル・ディ・マリア、シャビ・アロンソが退団して難しい状況になった。公式戦22連勝という記録を打ち立てたが、タイトル獲得には及ばなかった。
「順調に進んだら、私は80歳までだって、マドリーで監督を務めるよ。マドリーの監督ではなくなる時が来たら、私は監督業を辞めることを考えるかもしれない。これまで、ものすごく楽しんできた。これ以上のチームを探すのは、世界を見渡しても、非常に難しい」
「私は自分のキャリアで、常に楽しんできた。ナポリでも、エヴァートンでも、同様にね。だがマドリーはマドリーだ。これはハネムーンのようなものだ。以前にも言ったが、とても長いハネムーンだよ」
これは昨季終盤にアンチェロッティ監督が残したコメントである。
63歳の指揮官は、第二の青春を謳歌している。
ただ、常に勝利が求められるのがビッグクラブの常だ。他ならぬアンチェロッティ監督がそれを理解している。ゆえに就任2年目のチャンレンジは大きな意味を持つ。