結局は制度や仕組みじゃない、支援の現場=運用が最大の論点だと思う【補助金論】
ここ2日にわたってお送りしてきました、補助金論ブログ三部作も今日で一旦簡潔ですw
過去2本の記事は、かなり多くの方に読んでいただきました。
老舗料亭の女将がキレた!「公的産業支援」の抱える課題と解決策
この2本を通じて、現状の補助金制度(紹介したもの以外も含めて)を軸に、公的産業支援制度について考えてきました。その中で浮き彫りになったのは、補助金そのものの善悪というよりは、公的産業支援機関の現場が、こうした補助金や助成金を活かせているか。
小規模事業者持続化補助金(通称:持続化補助金)
小規模事業者が(従業員数:卸売・小売・サービス業5人以下 or 製造業等20人以下)、経営計画を立てて、それに基づいて行われる販売拡大にむけた取り組みに、最大50万円(必要経費の2/3)まで補助される、という仕組み。チラシやWEB制作、ポスターや店頭什器、商品パッケージづくりなどにも活用できるので、使い勝手が良い、と評判。
〆切は、3月27日・5月27日の2回の公募予定。
創業・第二創業促進補助金(通称:創業補助金)
新たに新規創業・起業をしたいという方(★公募開始日以降に創業することが条件)や、事業承継を契機に既存事業を廃止し新分野に挑戦する等の第二創業を行う方が対象。通常、最大200万円(必要経費の2/3)まで補助されるという仕組み。人件費や事務所家賃ほか、概ね事業立ち上げに必要な経費が対象となりまーす。公募〆切は3月31日と4月下旬の予定
ま、もっと他にもたくさんあるし、ものづくり補助金(通称:もの補助)とか、省エネ補助金とか総額としてはもっと大きなものもいっぱいありますね。。
詳細:http://www.chusho.meti.go.jp/hojyokin/2015/150114taisakuA4.pdf
さきの二つの記事を通じて、多くの反響をもらいました。たとえば。。。
1
産業振興センターではなく、「補助金無料案内所」とかに名前を変えたほうがいいところが山ほどあるよね。。。
2
岐阜県の◯◯◯◯◯◯◯ですか?
私も同様に上から目線のひどい対応されて立腹していました。
もう二度と行くことはないと思います。
補助金も同じくすすめられましたよ。
補助金のノルマでもあるんでしょうね・・・・残念な機関です
3
公的産業支援機関は名ばかりで結局は補助金のばらまき窓口になっているのでしょう。経営者の多くが孤独というのは事実で、日々の資金繰りから始まり人材育成まで多岐にわたります。更にそれぞれの業種・地域に特化した課題も多く、どう対応していけばいいのか、また後押ししてくれる人もいなければ精神的な安堵感も得られないのでしょう。公的産業支援機関も曖昧な表現はやめて、いっそのことコンサルタントとのお見合いでも企画して、解決策を見いだせる道筋を提示し、実際にコンサルタントに依頼する際にかかる費用負担の解決策として補助金の話をするようにすればもう少しスムーズにいくのではないでしょうか。何から着手していいか分からない人に唐突に補助金の話するのは、まるで押し売りと同じになってしまいます。
4
この場合のお役所の対応はこんなものかなという感覚です。相談をする場ではありませんし、補助金を案内する分、仕事してるんじゃない?と思います。
こうして既存の公的産業支援への不満や諦め、といった声も寄せられています。どうも女将さんのブログは決して例外的な事例ではなく、同様の不満を抱いている人びとも一定いるということが見て取れます。
あるいは、それを通り越して「そもそも、そんなビジネスコンサルティングを期待してもしょうがない。ただの手続きの窓口機関でしょ」ってかんじのあきらめの声も、多く見られました。
一方で、これに対して、実際に公的産業支援の現場で働く人たちからもコメントがよせられています。
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支援側に補助金のノルマなんてないどころか、倍率が高い。
支援側の窓口に来る方は多種多様な業種の多種多様な相談をお持ちいただく。
残念だけども、2時間程度の机上での無料の相談の範囲で、個別企業の市場状況やPR戦略を立てられるはずはありません。
専門家を頼む、入りの現状調査をする、商圏全体での人の集客を考える…
それをやるには補助金を有効に使ってみてはどうですか? ということでしょう?
直ぐに売上に直結する答えを期待する方が多くいらっしゃいます。
直ぐにお金を貸してくれないと銀行を罵ります。
疲れます。
2
公的支援機関は本来、経営者の抱える悩みに真摯に向き合い、課題解決のためにともに知恵を絞るのが使命であるはず。
それが経営者と十分な信頼関係を築けないまま、単なる支援制度紹介にとどまっている現状は、非常に残念なことです。ましてや、相談者の悩みに寄り添うことなく、テキトーに補助金申請を勧めるとなると、事業者を馬鹿にしていると捉えられても仕方がありませんね。
という声も。公的産業支援機関で働く方々の中にも、異なる見方があるようです。
こうした中から透けて見えるのは、公的産業支援機関の位置付けと、現状を見直す必要性。
そもそも公的産業支援機関は「経営相談窓口」を標榜する時点で【公的なビジネスコンサルティング】なのだと筆者は考えます。でなきゃ、「補助金無料案内所」とでも名前を変えた方がいい。単に補助や申請の対応・取次窓口ではなく、中小企業や小規模事業者に売上アップの知恵を提供している知的サービス業と定義すべきだと思います。
だからこそ、高度なコンサルティングスキルが求められると思うのです。
一方でたとえば商工会議所や商工会の現場には熱意あるスタッフもいる一方で、共済や記帳指導はては町のお祭りの運営など多様な役割がのしかかり、個別経営支援に手が回る状態でないのもまた事実。
補助金そのものの是非や制度や仕組みの問題以上に、こうした補助や制度/仕組みを生かせるようなビジネスコンサルティング人材が問題、すなわち運用が最大のボトルネックだと思うのです。
いわゆるの無料コンサルタント業務のはずだが、その成績が民間企業のような”売り上げ”アップとかで計られていなければ担当者も真剣には成らないと思う。彼らの成績はどのような基準でされているのか、内規の確認が必要だろう
そもそもの窓口を担う公的コンサルタントの資質と評価はどうあるべきか、という問いもありました。
他の諸業務に圧迫されず、真に事業者に向き合い売上アップを支援していく存在に、公的産業支援センターがなれるのか。
そのためには、適切な人材確保と、そして彼らが活躍できるようなポジションの確保が必要かもしれません。
こうした背景を受けて、富士市のf-Bizや岡崎市のOKa-Bizに続き、天草市が4月よりAma-Bizを開設しますし、27年度以降複数の市町村で同様に、既存公的産業支援機関とは別に新たな支援拠点の開設を検討しているようです。
資質と熱意ある人材を適切に配置すれば、公的ビジネスコンサルティングも、大きな成果を上げることができる。f-BizやOKa-Bizの事例が実際に出ているわけですし、そうした現場では補助金も目的となることなく、事業加速の支援の打ち手の一つ、補助ロケットとして有効に活用されていくのでは、と思います。
3回にわたって考えてきた補助金や支援制度の問題。結局は仕組みや制度以上に、それを実際に運用する担い手=公的なビジネスコンサルタントの資質と活かされる環境こそが最大の論点ではないかと思います。
ではでは。