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シーズン中よりも珍しい、開幕前の「サイクル・ヒット」

宇根夏樹ベースボール・ライター
ジェネッシュウィ・ファーガス(ニューヨーク・メッツ)Mar 5, 2020(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 3月5日、ジェネッシュウィ・ファーガス(ニューヨーク・メッツ)がサイクル・ヒットを記録した。「9番センター」として出場し、4打数4安打。2回表の三塁打を皮切りに、4回表に二塁打、6回表にシングル、8回表にホームランを打った。

 スプリング・トレーニングのサイクル・ヒットは、レギュラーシーズン以上に珍しい。エキシビション・ゲームでは、1試合4打席未満という選手が少なくない。昨年のスプリング・トレーニングを調べたところ、サイクル・ヒットは見当たらなかった。今春も、ファーガス以外には記録していない。

 ファーガスは、25歳のプエルトリカンだ。2013年のドラフトで、サンフランシスコ・ジャイアンツから11巡目・全体342位指名を受け、これまで7シーズン、マイナーリーグでプレーしてきた。通算585試合に出場し、打率.255、出塁率.331、23本塁打。235盗塁を決めているものの、失敗も91度を数え、成功率は72.1%に過ぎない。AAAに上がったことはなく、昨シーズン、初めてAAでプレーした。

 今オフ、ジャイアンツからFAになったファーガスは、1月にメッツとマイナーリーグ契約を交わし、ノン・ロースター・インバイティー(キャンプ招待選手)としてスプリング・トレーニングに参加している。

 ここまで、エキシビション・ゲームの12試合で、打率.304、出塁率.333、5盗塁(失敗1)を記録しているが、サイクル・ヒットの試合以外に長打はなし。今シーズンの開幕は、AAあるいはAAAで迎えるはずだ。ただ、メッツで2盗塁以上はファーガスだけ。サイクル・ヒットも記録したことで、監督やコーチにその名前を印象づけたに違いない。外野陣に故障者が出て、その時点でファーガスが好成績を残していれば、プロ8年目のメジャーデビューは十分にありそうだ。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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