【Yahoo!ニュース 個人】6月の月間MVAとMVCが決定
■Yahoo!ニュース 個人、6月の「月間MVA(Most Valuable Article)」と「月間MVC(Most Valuable Comment)」が決定しました
社会の課題を伝えている・議論を喚起している・読者の心に響く……などの観点で選出している「月間MVA」。記事のアクセス数ではなく、目指す世界観「発見と言論が社会の課題を解決する」を体現している記事を、編集部を中心とした運営スタッフがアナログで選出しています。あわせて、すぐれたオーサーコメント「月間MVC」も選出しました。厳選5本の記事とオーサーコメント、筆者の受賞コメントをあわせて紹介します。
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6月の月間MVA
■18歳以上なのに投票ができない? ~下宿中で住民票を移動していない学生有権者は選管に確認しよう!~(伊藤伸)
筆者による受賞コメント:住民票を移さずに下宿している学生に不在者投票の存在を伝えようとしましたが、自治体によっては投票権がないという事実に触れたため記事の構成も大きく変えました。記事を投稿した日のうちに複数の新聞社から取材依頼があり、ネットメディアが発信源となって既存メディアに伝わっていることを実感しました。
(伊藤伸)
選出理由:18歳選挙権と絡めたタイムリーな問題提起。筆者自ら学生らにアンケートをとり、各地の選挙管理委員会に問い合わせ、さらに総務省の統一見解を求めています。自らの具体的な解決案を示す、「課題解決」につながる1本です。
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■地べたから見た英EU離脱:昨日とは違うワーキングクラスの街の風景(ブレイディみかこ)
筆者による受賞コメント:EU離脱はプロパガンダに愚衆が騙された結果とか、ポピュリズムの危険性を露呈したとかいう、一つの方向からのみ語られる海外での報道には、地元のコミュニティーに根を張って生きている人間からすれば違和感がありました。
「右」だ「左」だとクリアに割り切れるわかりやすい従来のカテゴライズより、このもやもやとした違和感をこそわたしは書き続けたい。欧州を激震させているもののコアにはアイデンティティの政治があると思い込みたい論調とは裏腹に、地べた社会では静かに、そして確かに階級闘争の時代が再来しているように感じるからです。(ブレイディみかこ)
選出理由:左派と右派、難民問題に対する賛否だけでは表わすことのできない、英EU離脱の背景が描かれています。日本に居ながら、英国の空気を感じられる発信です。
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■シリア内戦 紛争地の人々が撮影した「証拠としての動画素材」の使い方(黒井文太郎)
筆者による受賞コメント:国際紛争の報道が変わりつつあります。どんな危険地域でも、現地の人々がスマホで撮影した生々しい動画が大量にネットにアップされるのです。それらの映像の説得力は圧倒的ですが、報道で利用するのは実は簡単ではありません。シリア内戦を取材した経験から、その「問題点」を紹介しました。(黒井文太郎)
選出理由:誰でもネットで動画を発信できる時代を背景に、戦争の現場から発信される動画を「ジャーナリズム」の観点でメディアがどう扱うべきか、問いかける記事です。筆者自らの経験に基づいて冷静かつ客観的に課題を解説しています。
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■今さら聞けない英国のEU離脱問題 どうなってるの?(木村正人)
筆者による受賞コメント:2013年11月に新潮新書から『EU崩壊』という本を出しており、EUの崩壊は最も有力なシナリオだとずっと考えてきました。しかし、欧州や周辺地域の安定を考えると、英国にはEUに留まってほしかったというのが私の本音です。労働党の女性議員ジョー・コックスさんの殺害事件や、EU離脱派の根拠のない論説に自分自身が感情的になり、最終段階で残留派に肩入れして記事を書いてしまったのが良かったのか、悪かったのか、今でも分かりません。「こうであるべきだ」という方向性を持ってしまうと分析にズレが出ます。かなり正確に情勢を分析できていたと思いますが、第4コーナに差し掛かったところで少し外したところがありました。
結局、移民を規制したところで、グローバリゼーションとデジタイゼーションから逃れることはできません。クローズドの日本に比べ、オープンの英国、特にロンドンは「沸騰都市」と言うのが相応しい活況を呈していました。しかし、その一方で生活費が高騰し、知人の在英邦人の帰国が相次ぎ、友人のスコットランド人も故郷に帰ります。英国が国民投票でEU離脱を選択し、急激な変化にブレーキをかけたのも仕方のないことだと思います。
EUという設計図の根本的な誤りは日本の原発政策と同じような気がします。原発は100%安全だという過信が神話になり、まさかの時の備えが十分ではありませんでした。エリートが考えだしたEUは彼らの言う通りしていれば、上手くいかないわけがないという前提で設計されているので、景気が悪くなった時にどうするかが考えられていません。景気が悪くなった時はみんなで協力して財政出動すべきなのに、単一通貨ユーロを守るために緊縮策が取られました。
これでは庶民の生活がおかしくならない方がおかしいのです。欧州の平和と繁栄という大きな理想を守るためにはEUの設計図を大幅に書き換える必要があります。EUは英国のように「いい加減」になるべきだと思っています。この夏は英国のEU離脱を本にまとめる予定なので、なかなか思うようにエントリーできませんが、終わり次第、またガンガン書いていこうと思っています。
(木村正人)
選出理由: EU離脱に関する国民投票直前の、読者の素朴な疑問に答える解説です。疑問点をQ&A形式でわかりやすく整理し、またグラフや写真も用いて見た目にも伝わりやすい記事になっています。
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■公示日なのに、候補者がわからないというネット選挙時代にサヨナラを(神田敏晶)
筆者による受賞コメント:MVAありがとうございます!いつも、和桁電卓で、兆や億を計算していたおかげです(笑)参議院議員1人選ぶのに4.1億円。平均的サラリーマンがおさめる1年の税金413人分。なんと都知事選挙50億円は5,000人分もの血と汗の税金が…。ネットを駆使すれば1/5になるはずなのに…(神田敏晶)
選出理由:ネット選挙はもっと知恵を絞り、候補者情報を公平に比較検討すべきだという問題提起。
ITジャーナリストの見地から、具体的な数字を用いてあらゆる視点からツッコミを入れています。
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6月の月間MVC
■『YOUたちは何しに日本に? 2軍に“集結”するオリックス助っ人陣』の記事へのオーサーコメント(木村公一)
筆者による受賞コメント:ニュース記事はその性格上、文章量が限られ、書き手(記者)も自覚しつつ端折ることが多くあります。オーサーコメントは、そんな記者の触れきれなかった部分の補足となれば、と思って記しています。それが読者の方たちへの一助となれば幸いです(木村公一)
選出理由:一般読者が「へえ」と感じる、スポーツライターならではのコメントです。