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PTA総会に出られない保護者や教職員の意思も尊重する「議決権行使」という方法

大塚玲子ライター
PTA総会に出席できない人や、あの場で発言できない人も多いでしょう(ペイレスイメージズ/アフロ)

――はじめて公立小のPTA総会に出て、あっという間に終わっていた。文句のはいるスキもない運びである。会員席は黙りこくっていて、役員さんだけがキビキビと、別世界の人のように働いていた。(中略)

 議案書を見ても、わからないところがいっぱいある。“教えてください”と手をあげる勇気がなかった。それを許さぬ雰囲気が、あの会場に、はりつめていた。――(『PTA歳時記』永畑道子著)

 「うちのPTA総会と似ている」と思った方も多いのではないでしょうか。今から40年近く前に書かれた文章ですが(1981年頃に読売新聞連載)、こんなふうに意見や質問が出ない想定で駆け抜けるように終わる形式的な総会は、いまも珍しくありません。

 筆者も毎年この時期はPTA総会に出席して質問や意見をしてきましたが、いまだに胃が縮みます。引用した総会ほどではありませんが、やはり決して発言しやすい場ではないからです。大勢が列席しており(先生たちはほぼ全員)、長引かせることに心苦しさも感じます。

 何か、もうちょっと別の方法はないものでしょうか。スケジュールが合わず、「総会に出席したいけれど無理」という人もいるでしょうし、「ああいう場で発言するのは無理」という気弱な人も少なくないでしょう。

 そこで最近聞くようになってきたのが、あらかじめPTA総会の資料を全会員に配布しておいて、各議案への賛否を書面(委任状等)で確認する“議決権行使”という方法です(*1・2)。

 多くの場合、PTA総会を欠席する人(こちらのほうが断然多いのですが)は、すべての議案への賛否を議長等に一任せざるを得ません。しかしこの方法なら、欠席した人の考えも、もう少し的確に反映されます。

 記述欄があれば、質問や意見も出すことが可能です。

 書面で確認となると集計の手間がかかりますが、Googleフォーム等を併用する手もあります。URLをQRコードにしてお手紙を配布し、可能な人はそこから回答してもらうのです。苦手な方には書面で回答してもらう形にしても、全員分を紙で集計するよりはだいぶ手間が省けるでしょう。

 こちらはご参考まで、中国地方のあるPTAが配布した総会委任状です。

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 この書面を作成した、広島市立翠町小学校PTA会長の小笠浩孝さんは、こう話します。

 「僕の専門職(士業)の総会やマンション管理組合の総会は、この形(欠席者は議決権行使書兼委任状を提出)です。だから逆に、PTAで配られる包括的な委任状には違和感がありました。これでは個々の意見が反映されません。

 そこで前回のPTA臨時総会からこの形(議決権行使)を取り入れ、総会を欠席される方が議決に参加できるようにしました。日程の関係で出席者があまり多く望めず、出席者だけでなく全会員の意見を尊重したいと考えたのもあります。回収率は約7割でした」

 資料や委任状は総会の1~2週間前までに配布しておく必要がありますから、この春はもう間に合わない、というPTAもあるかもしれませんが、もしまだ間に合いそうであれば、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。

 PTA総会に関しては、もっといろんな改善方法があるでしょう。またおいおいご紹介できればと思います。

  • *1 一保護者としてPTA問題を追い続ける石原慎子さんのブログ「草履で歩きながら考える」に、この方法(委任状で各議案の賛否を問う)について詳しい解説があります。是非、ご参考にご覧ください(↓)
  • *2 マンション管理組合の総会はこの方法が主流のようです
ライター

主なテーマは「保護者と学校の関係(PTA等)」と「いろんな形の家族」。著書は『さよなら、理不尽PTA!』『ルポ 定形外家族』『PTAをけっこうラクにたのしくする本』『オトナ婚です、わたしたち』ほか。共著は『子どもの人権をまもるために』など。ひとり親。定形外かぞく(家族のダイバーシティ)代表。ohj@ニフティドットコム

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