京アニ判決 アニメだけでなく「絵本」でも若い才能を失った事実
関東圏の穴場ずらし旅の愛好家、とらべるじゃーな!です。
2019年7月の京都アニメーション放火殺人事件の判決公判が1月25日、京都地裁で開かれ、求刑通りの判決が言い渡されました。
京アニはアニメーションの会社ですが、実は「絵本」の領域でも、貴重な人材を失っています。今回は、最近のアニメには余り親しみがないという方も考え、事件で亡くなった23歳の絵本作家・大村勇貴さんが、伊豆半島に残した痕跡を取り上げます。
大村勇貴さんの生い立ちや仕事を知るには、上の「広報菊川」が分かりやすいです。出身地である静岡県菊川市のほか、伊豆半島での活躍も知られ、似顔絵もよく似ています。
大村勇貴さんが、縁あって出入りしていたのが、伊豆半島の松崎。西伊豆の南の方に位置し、交通が不便なため、訪ねる観光客も少ない、落ち着いた町です。
お年寄りが、のんびりと歩いていたのが印象的でした。このとき、大村勇貴さんはもうこの世にいませんでしたが、筆者は不勉強にしてその存在を知りませんでした。
松崎は、江戸への海運の中継地点として栄え、湿気や火災に強い、なまこ壁が多く作られました。なまこ壁は現在も多く残り、現在は静かな場所ですが、豊かさや重厚な歴史も感じさせます。
訪ねる人は少ないですが、なまこ壁の建物や点在する草花は、地元の人々が大切に手入れしています。
海沿いに町が広がり、山間部には、遠く駿河湾を望む石部の棚田が広がっています。
写真のなまこ壁の建物は、伊豆文邸と呼ばれ、松崎の暮らしを知る展示館のようになっていました。
伊豆文邸(2024年1月現在の情報)
静岡県賀茂郡松崎町松崎250-1(松崎バス停から徒歩10分)
営業時間 9:00~16:00
定休日 不定休
その一角にあり目を引いたのが、写真の絵本。
黄色と赤のしま模様の服を着た少年が、松崎を巡り、大人の目には見えない、さまざまな仲間と出会う物語です。
絵本作家には、自然や科学を洞察する目、人の心を見通す精神性が必要と言われます。その点で、質の高さが印象に残る絵本でした。SNSでインフルエンサーが拡散する近年の絵本とは異なる、伝統的な作風です。
軽食を買うために、古民家のお店(であい村蔵ら)に、立ち寄りました。
奥に見覚えのある黄色と赤のしま模様の服を着た少年の絵が飾られていました。
であい村蔵ら(2024年1月現在の情報)
静岡県賀茂郡松崎町松崎319‐1(松崎バス停から徒歩10分)
電話番号 0558-42-0100
営業時間 10:00~16:00
定休日 木曜
さきほど見かけた絵本と同じ作風です。松崎の山間部にある、石部の棚田がモチーフでしょうか。
普段は怖い大きな熊の大人しい姿に目が向きます。赤と黄色のしま模様のシャツの子どもが手に取るのは、伊豆の大地の力を象徴するような、大きくとんがったおにぎり。自然に海へと目線を導く、異形のカカシ。自然や目に見えないものへの洞察が見られ、構図も的確です。
京アニに就職した矢先に放火事件に遭い、23歳で世を去った大村勇貴さんの作品とのことでした。松崎を訪ねた際に、ここでよく食事を取り、その縁で絵が飾られたようです。
伊豆の赤石など、石の種類が豊富だという西伊豆。
気になったのが、であい村蔵らの窓際にきれいに並べられた黒い石。お店のお母さんに聞いてみると、下の作品を見せてくれました。
黒い石を磨き上げ、大村勇貴さんの描いたキャラクターを絵付けしたものです。
お店のお母さんのご厚意で、石を分けて頂きました。1つは大村勇貴さんの世界を描いたもの。もう1つは、松崎のなまこ壁の風景です。
松崎は、豊かな自然と歴史が調和した静かな町です。大地の力が強く感じられ、大村勇貴さんもこの土地に何かを感じ取って、それを絵にしたのかも知れません。
機会があればぜひ松崎や、西伊豆を訪ねてみてください。
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