新型コロナウイルスの流行で大きな増加…小中学生の長期欠席者数の実情(2023年公開版)
多くの子供にとって学校は楽しい場所であり、日常生活の多くの時間を占める居場所でもある。しかし病気やケガ、家庭内の事情で休まねばならない場合も生じてくる。また中にはさまざまな理由で通学そのものを望まず、長期にわたり欠席してしまう子供もいる。今回は多様な理由で長期にわたって学校(小中学校)を休んでしまう子供の状況、「理由別長期欠席児童生徒数」の推移を、文部科学省の「学校基本調査」報告書などから精査する。
公開データには長期間欠席した児童数が記載されているが、その理由として「病気」「経済的理由」「不登校(以前は「学校ぎらい」の名称だった)」「その他」と大別されている。また、1959年以降の値が収録されているが、「長期欠席」の定義が1991年以降「通算30日以上欠席」に改められているため(それまでは50日以上)、その前後で明確には連続性は無い。そこで1991年以降のものについて時系列的にデータを取得し、グラフ化を行う。
まずは最新のものとして収録されている2022年度分について。なお全児童・生徒比では計算結果の表記上0.00%と表記されている項目もあるが(小数第二位までの表記)、具体的人数のグラフに表記している通り、人数がゼロではないので厳密にはゼロ%ではない。
中学生の長期欠席者、特に不登校率が高いのが気になる。6.05%といえば、30人学級なら2人近く不登校者がいる計算。小学生では比率としては少ないものの、絶対数となると10万人以上の不登校者が確認できる。
前年度と比較すると他要因は増減さまざまだが、不登校は小中学生ともに増加しており、これが全体数をも底上げする形となっている。大いに気になる動きではある。
また、既存の区分では区分に当てはまらない「その他」の理由で長期欠席をしている例もここ数年で急激に増加していた。報告書の説明にはこの「その他」に該当するのは
上記「病気」「経済的理由」「不登校」のいずれにも該当しない理由により長期欠席した者。
・「その他」の具体例
ア 保護者の教育に関する考え方、無理解・無関心、家族の介護、家事手伝いなどの家庭の事情から長期欠席している者
イ 外国での長期滞在、国内・外への旅行のため、長期欠席している者
ウ 連絡先が不明なまま長期欠席している者
エ 欠席理由が二つ以上あり(例えば「病気」と「不登校」)、主たる理由が特定できない者
とある(該当者が小中学生であることに注意)。長期欠席の問題が単純な区分では難しい現状を再確認できる。さらに2020年度以降に限れば「新型コロナウイルスの感染回避」も「その他」に含めているため、後述の通り前年度比で大きな増加を示す形となっていた。直近年度ではこの「新型コロナウイルスの感染回避」が大きく減ったため、結果として「その他」も前年度から減少したのだが。
続いてこれを「長期欠席」の定義変更後の1991年度以降について、その推移を折れ線グラフにしたのが次の図。
小学生は病気による長期欠席者が多かったものの、2000年度前後から少しずつ減少。一方で不登校者数は1998年度ぐらいまでは漸増していたが、それ以降は大きな変わりはなく、結果として両者の順位が入れ替わっている。中学生も1998年度前後から病気による長期欠席者は少しずつ減り、小学生とほぼ同じように不登校者は増加し、その後横ばい。また2013年度以降は不登校者の数は漸増していた。
そして2016年度から2017年度以降は不登校を理由とする長期欠席者の増え方は急となり、さらに中学生では2020年度以降、さらに加速がついたように見える。「その他」は小学生では前世紀末頃から増え、2020年度以降は小中学生ともに急増している(直近の2022年度では失速したが)。
これらの動きのうち、2020年度以降で「その他」の値がイレギュラー的な増加を示しているのは、前述の通り「新型コロナウイルスの感染回避」を合算しているから(直近2022年度では前年比でいくぶん落ちたのも、その値が減ったため)。ちなみに「新型コロナウイルスの感染回避」単独では、2022年度は小学生で16155人、中学生で7505人におよんでいる。
病気や経済的理由はともかく「不登校」について、2000年前後をピークとし増加に歯止めがかかり、さらには少しずつ減っていたのは幸いだった。それゆえに、2013年度以降の有意な上昇は大いに気にかかるところではある。ただし「不登校」の解説には
何らかの心理的、情緒的、身体的、あるいは社会的要因・背景により、児童生徒が登校しないあるいはしたくともできない状況にある者(ただし、「病気」や「経済的理由」による者を除く)をいう。
とあり、「その他」の増加と併せ、子供の事情も以前より複雑な状況が生じているのかもしれない。あるいは社会的に、しかるべき事情が存在する場合には不登校を容認する雰囲気が形成されつつあるのだろうか。
無論、2020年度以降は、明確な区分として「新型コロナウイルスの感染回避」が登場してもそこまでの認識はなく選びはしないが、何となく新型コロナウイルスの感染リスクを考慮して、長期欠席に至ってしまい、「不登校」にカウントされる人もいるのだろう。
■関連記事:
【高校中退でニートになった人たち、「収入」「将来の希望」「生活リズム」に強い意欲】
【高校中退の理由、過半数は「欠席過多で進級困難」・校風や勉強、人間関係も】
(注)本文中のグラフや図表は特記事項のない限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。
(注)本文中の写真は特記事項のない限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。
(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。
(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。
(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。
(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。
(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。