レジ袋有料化と食品衛生上の注意点
7月1日よりプラスチック製のレジ袋の有料化が開始されました。テレビや新聞などでもこの話題がとりあげられており、関心をもっている人も多いことと思います。
コストや環境負荷など様々な角度でこの問題が論じられておりますが、ここでは主に食品衛生の観点からレジ袋の有料化について考えてみたいと思います。
■レジ袋の必要性
今回のプラスチック袋の有料義務化について、経済産業省のページに以下の説明があります。
プラスチックは、非常に便利な素材です。成形しやすく、軽くて丈夫で密閉性も高いため、製品の軽量化や食品ロスの削減など、あらゆる分野で私たちの生活に貢献しています。一方で、廃棄物・資源制約、海洋プラスチックごみ問題、地球温暖化などの課題もあります。私たちは、プラスチックの過剰な使用を抑制し、賢く利用していく必要があります。
このような状況を踏まえ、令和2年7月1日より、全国でプラスチック製買物袋の有料化を行うこととなりました。これは、普段何気なくもらっているレジ袋を有料化することで、それが本当に必要かを考えていただき、私たちのライフスタイルを見直すきっかけとすることを目的としています。
この文章の中で、重要だと感じたのは以下の部分です。
“普段何気なくもらっているレジ袋を有料化することで、それが本当に必要かを考えていただき、私たちのライフスタイルを見直すきっかけとすることを目的としています。”
必要性をさほど感じていない人が、無料であるならと受け取っているケースもあると思いますので、必要な人に値段を提示して購入していただく、という趣旨は理解できます。
現状ではプラスチック袋がマイクロプラスチックによる海洋汚染にどれぐらい寄与があるのかを明確に示した信頼性の高い報告はありませんので、この施策の方向性が妥当性であるかについても、評価は難しいでしょう。商品お持ち帰りの際に必要性があると感じた場合には、レジ袋を利用するのは何も悪いことではないと思います。
■衛生面とお持ち帰り容器の選択
それぞれの容器の特徴と食品衛生を意識した利用法をまとめてみましたので、参考にしてください。
【マイバッグ】
長所:小さく畳める、繰り返し使用可能、レジ袋に比べ丈夫
短所:常に持ち運ぶ必要がある、汚染後の消毒・洗浄が難しい
総評:日用品や調味料、パッケージ商品などの持ち帰りに適しています。生鮮食品や冷たいものは、ちぎれた食材や水気が袋の中に落ちることを防ぐため、ポリ袋に入れてからマイバッグに入れるのも良いですが、ポリ袋は水漏れの危険性もあるため、生鮮食品のみは使い捨ての袋に入れるなど、併用するのも良いでしょう。気をつけて利用していても、袋状のため、消毒や洗濯など定期的なメンテナンスをしないと内部でカビや有毒細菌が繁殖する危険性があります。
【マイバスケット】
長所:繰り返し使用可能、洗いやすく清潔を保ちやすい
短所:持ち運びが不便、露出しているため持ち運び中に汚れなどが付着することがある
総評:主に持ち運びの問題から、車で買い物をする機会の多い人に向いています。公共交通機関を利用して買い物をする人には不向きです。汚れても洗浄しやすく、一般的なポリプロピレン製であればアルコールなどの消毒液の使用も可能です。
【紙袋】
長所:軽量、再利用は可能、生分解性が高い
短所:伸展性がない、水によわく破れやすい、単価が高い
総評:プラスチック袋の代替品として有力ですが、水によわく、伸展性が低いので、生鮮食品や形も素材も異なる商品を多量に詰めるのには適しません。水分を含むものを長時間の持ち運びを考える場合にはプラスチック袋を選ぶほうが良いかもしれません。
【プラスチックレジ袋】
長所:軽量、買い物した量に見合った袋を選べる、使い捨てにより衛生的に利用可能
短所:破れやすい、生分解性が悪く不法投棄による環境負荷
総評:マイバッグに入り切らないときや、結露しやすいものや水分がこぼれやすそうな食品を購入した時には有料袋を必要量購入するような利用方法がおすすめです。コンビニやテイクアウト店舗で購入した食べ物を出先で食べる場合は、食べたものを廃棄する時に食べかすや汁気がとびちらないよう、小さいプラスチックの袋にまとめて共有のゴミ箱に捨てると衛生面を考えるとおすすめです。
■おわりに
マイバッグだけに限りませんが、生鮮食品には有害な微生物が付着しているものも多く、汁漏れや、野菜の破片が容器の中に残したまま時間をおくと、食中毒を起こす量まで繁殖してしまうことも考えられます。代表的な食中毒細菌のサルモネラは乾燥に強く、水分がなくても長期間生存が可能なため、不衛生な袋を繰り返し使うことで清潔な食品を汚染することも考えられます。
環境に対する配慮はもちろん大切ですが、有料化はプラスチックレジ袋の利用を制限するものではありません。各自がそれぞれの容器の特徴を理解し、状況に合わせて上手に使い分けられるようになることが求められるのかもしれません。
参考にしたサイト:http://www.shimizu-chem.co.jp/message.html