防衛増税の次なる一手は子育て増税か?
去る12月16日、突如降ってわいた防衛増税が玉虫色ながら決着しました。具体的には、「復興特別所得税」の延長や、「所得税」「たばこ税」「法人税」などで1兆円の増税とし、2024年度から段階的に実施する方針のようです。
そして、同日(12月16日)、政府の「全世代型社会保障構築会議」(座長・清家篤元慶応義塾長)は、急激に進む少子化について「国の存続に関わる問題」と危機感を強調した報告書を岸田総理に提出しました。子ども予算の倍増が明記され、現金給付の拡充などが盛り込まれました。ただし、防衛費とは異なって、こうした施策に対する財源は明記はされていません。これから議論されるようです。
新型コロナ対策で使った100兆円は、緊急事態であり、国債で賄うこととなりました。そもそも、100兆円の使い方が適切だったのかの検証はこれから必ず行っていただきたいものですが、私たちにとっての目下の懸案は、この100兆円に対する負担増がいつ、どのような形でやって来るかということでしょう。
さらに、コロナ禍での大盤振る舞いの後始末に加えて、現在、政府が推し進めている全世代型社会保障は、高齢者の給付を原則維持したまま、これまで手薄だとされてきた現役世代向けの給付を拡充するもので、そもそも世代間格差対策の意味も持っていました。つまり、全世代型社会保障を支持し、推進するということは、予算拡大が権力の源の官僚の思考ともマッチして、際限のない負担増への道でもあるのです。
上の資料にもありますように、「給付のあるところ負担あり」は財政当局からすれば当たり前で、給付が増えればその分、誰かが負担しなければならないのです。つまり、全世代型社会保障というのは、老若男女問わない全世代型負担増加策でもあります。
もちろん、負担といっても、増税だけが負担ではなく、既存の歳出を削減することも、その歳出から利益を得ていた誰かの負担となるのですから、増税か歳出削減から選択されるべきなのですが、実際には、上の資料にもあります通り、(高齢者向けの)給付の上に(現役世代向けの)給付を重ねる予定であり、バラまきたがる政治家と給付金を要求するクレクレ国民によるポピュリズムが蔓延していますから、歳出削減は選択されません。
では、なぜ増税かと言えば、こうしたクレクレ国民は、自分ではなく他の誰かが税を負担してくれると信じているからです。
国民の3割を占める年金受給者は所得税を負担しませんし、非喫煙者はたばこ税を負担しません。法人税はそのうち賃金に帰着することを知らない国民は法人が負担してくれると信じて疑いません。
結局、コロナでばら撒いた100兆円のツケを払うため、防衛とか子育てとか、拒否しにくい項目に的を絞って増税で攻めてきているのが岸田政権なのです。これまでのように国債で賄おうと税で賄おうと、政府は焼け太りの一途にあります。そうしたなか、歳出削減を主張する政党は見当たらず、大きすぎる政府への道は加速していくのは不可避でしょう。そして軌を一にして少子化は加速するでしょう。
毎年20兆円もの赤字を垂れ流す社会保障のスリム化は急務です。しかし、それを言い出す責任感のある政治家はいません。
まさに現在の日本の政治は、目の前にぶら下げられた10万円を貰うことに気を取られて、将来100万円が自分の財布から抜き盗られることには思いもよらない有権者によって支えられているのです。