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【緊急提言】『コロナショック』から飲食店を守るため、今私たちが出来ること。

山路力也フードジャーナリスト
持久戦の様相を呈してきた飲食業界。このままでは多くの飲食店がなくなってしまう。(写真:アフロ)

都内では週末の外出自粛要請が

 新型コロナウイルス感染症拡大防止に向けての外出自粛ムードが長期間にわたり、飲食業界においてもその影響は日に日に大きくなっている。3月25日には東京都の小池百合子知事が、異例とも言える週末の不要不急の外出自粛を要請。それに伴い、埼玉県や千葉県も週末に都内への外出自粛要請へ調整を始めている。

 外出する人が激減しているということは、外食する人も激減しているということ。政府の外出自粛要請以降、店によっては売上げが通常の6割〜8割減という異常事態が今もなお続いている。飲食店の多くは薄利多売で営業を行っており、特に個人営業による飲食店は事業の存続に影響する状況に陥っている。

 3月9日に、私は飲食業界のダメージを懸念して、消費者側事業者側の2つの側面からの提言をこの場でさせて頂いた。しかしながら、その後ヨーロッパでの爆発的な感染拡大と営業停止命令などがあり、さらに国内では東京オリンピックの延期が決定するなど、経済を取り巻く状況はますます悪化している。おいそれと「気をつけながら外食をして経済を回しましょう」などと言えなくなってきた。

 そこで改めて、現段階で私たちが出来ることを考えて書き記してみる。あくまでも私個人の考えであり、捉え方や取り組み方は人それぞれだと思うが、私はこのようにして消費者として行動をし、事業者側のサポートをしている、という一つの情報として受け取って頂ければと思う。

自分の大好きな店のために行動しよう

 私は今外食をする場合、可能な限り個人が経営する小さな店舗に行くようにしている。複数店舗や複数の事業を抱える企業による店舗は、個人経営店と較べると今回のコロナショックを耐え忍ぶ体力を持っている可能性が高い。

 しかし、個人経営店の多くは日々の売上げで仕入れをするようなギリギリの状況で経営しており、一週間や二週間という長期間の減収が経営を圧迫し廃業になってしまう懸念があるからだ。飲食業が大変なのは個人店も企業経営の店も変わらないのは重々承知だが、私一人が行ける店は限られている。であるならば、私はまず個人経営の店の力になりたい。

 さらにその個人店の中でも、地代家賃のかかっていないような地元で長年続いている個人店よりも、最近出来たばかりのお店に行ってあげたいし、もっと言うならば何度も足を運んでいる馴染みのお店に行ってあげたいと思っている。出来るだけ短時間で済むように、いわゆる飲み会的な使い方はせず、サクッと食事をして帰る。お土産やテイクアウトメニューがあれば、それを買って帰る。そしてSNSなどを活用して大いに「宣伝」する。

 誰しも一軒や二軒は、自分が好きで足を運ぶ店があるだろう。そういうお店を利用してあげて欲しい。移動距離の短い、家から徒歩圏内や地元の飲食店でそういう店があればなおのことだ。「飲食業界のために」という観点ではなく、「自分の大好きな店のために」という観点で一人一人が考えて行動するだけで、助かる飲食店は必ずある。

体力温存と売上増加の併用で耐える

 飲食店側への基本的な提言は、以前この場でもさせて頂いているので参考にして頂きたいが(関連記事:【緊急提言】『コロナショック』による消費冷え込みに対して、飲食店が今出来る3つのこと。)、この提言からさらに状況は悪化しており、体力勝負の持久戦に突入しているのが現状だろう。

 売上げが下がり続けていけば、固定費の負担比率が上がっていく。まずは冷静に自店のPL(損益計算)を見つめて、現在の体力および余力を知ることが重要だ。その上で、変動性の高いPL(材料費、人件費)の見直しに着手する。メニューを絞って仕入れを減らしたり、席数を減らして人件費を減らすなどは早急にするべきだ。また、営業時間や営業日数の短縮も検討すべきだろう。売上げよりも支払いが上回ればキャッシュは目減りしていく。極論を言えば、店を開けない方が支出が少ないということも十分あり得るということだ。

 次にキャッシュフローを確保するために補助金や助成金の活用も検討したい。経済産業省外局である中小企業庁の「セーフティネット保証制度4号、5号」や、日本政策金融公庫の「衛生環境激変特別貸付<特別貸付>」など、自店が対象かどうか確認して積極的に活用すべきだろう。

 さらにテイクアウト商品を早急に開発して売上げを増やしたい。外食が軒並み冷え込んでいる中で、デリバリー業態は右肩上がりで消費が増えている。調理場がある自店での対面販売やUber eatsなどのデリバリー販売の場合は、現状飲食店として営業出来ていれば、あらたな申請や許可は不要だ。

 大好きな店を守るために。客として、店として出来ることはまだまだある。一日も早く楽しく美味しい外食が楽しめることを祈りつつ、皆で力を合わせてこの難局を乗り越えていきたい。

【関連資料:中小企業庁「セーフティネット保証制度」

【関連資料:日本政策金融公庫「衛生環境激変特別貸付<特別貸付>」

【関連記事:『コロナショック』による消費冷え込みに対して、飲食店が今出来る3つのこと。

【関連記事:『コロナショック』を受けている飲食店に対して、客の私たちが出来ること。

フードジャーナリスト

フードジャーナリスト/ラーメン評論家/かき氷評論家 著書『トーキョーノスタルジックラーメン』『ラーメンマップ千葉』他/連載『シティ情報Fukuoka』/テレビ『郷愁の街角ラーメン』(BS-TBS)『マツコ&有吉 かりそめ天国』(テレビ朝日)『ABEMA Prime』(ABEMA TV)他/オンラインサロン『山路力也の飲食店戦略ゼミ』(DMM.com)/音声メディア『美味しいラジオ』(Voicy)/ウェブ『トーキョーラーメン会議』『千葉拉麺通信』『福岡ラーメン通信』他/飲食店プロデュース・コンサルティング/「作り手の顔が見える料理」を愛し「その料理が美味しい理由」を考えながら様々な媒体で活動中。

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