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二階幹事長に健康不安説! 迷走する発言と後継者不在の悩み

安積明子政治ジャーナリスト
2019年の自民党大会で話す二階幹事長(写真:YUTAKA/アフロ)

体調不良で部屋から出られない

 二階俊博幹事長が倒れた―。3月26日午前に行われた役員連絡会に姿を見せないことで、自民党本部はちょっとした騒ぎになった。自民党関係者はこう述べている。

「どうも体調が悪くて自室から出られず、宿舎で安静にしているそうです」

 2月17日に80歳になった二階氏には、“健康不安”の噂がつきまとう。3月4日に小池百合子東京都知事と自民党本部で会い、「東京都知事選に小池知事が出馬すれば、全面的に協力するのは当たり前」と述べた時もそうだった。

小池知事にしてやられた?

 これについて「何を考えているんだ!」という批判が上がった一方で、「小池知事以上の候補を早く探せと自民党都連にはっぱをかけたということだ」との騒ぎを鎮静化する声も聞こえた。だが冷静に見る側からも、「小池知事にやられたのではないか」と疑問も出ていた。

 この日の都議会は荒れていた。午前に東京都議会の経済港湾委員会が開かれ、築地市場跡地の再開発を巡る知事への一問一答方式での質問が行われたが、2017年の東京都議会選挙直前に築地市場跡地の「食のテーマパーク」化を宣言して都民ファーストを躍進させた小池知事が、希望の党が振るわなかった衆院選後の11月には「ひとつの考え方だ」と一気にトーンダウンしたことに、自民党都議が激しく追及していた。

「都議会での紛糾を助けてもらおうと、小池知事が二階幹事長に急遽面会を要請した。旧来の知り合いである小池知事の懇願に、二階幹事長が抗えなかったのだろう」

 自民党東京都連関係者はこう述べている。実際に二階氏は、6日に公明党の斉藤鉄夫幹事長や高木陽介国対委員長と会談した際に、「もう(小池擁護の)発言しない」と宣言した。しかし15日には小池知事と会食して、緊密な関係を見せつけた。「昨年末に奥さんが亡くなったので、二階幹事長も寂しいのではないか」-そんな声も聞こえている。

辞職した田畑前議員も二階氏を無視?

 そのような二階氏の側に常に寄り添うのは、林幹雄幹事長代理だ。「林代理の主な仕事は二階氏の発言をチェックして、訂正することだ」-これは自民党議員から直接聞いた言葉だ。

 実際にSNSで知り合った女性とのトラブルで議員辞職した田畑毅前衆議院議員は、2月15日に離党届を二階幹事長ではなく林代理に提出している。

「離党届というのは幹事長のところに持ってくるものだ。私は受け取っていないし、その様子を聞いたこともない」

「こういう話題になった以上は、本人が釈明に来るというか、お詫びに来るとかがあっても当然だ」

 2月18日の会見で二階氏は、このように田畑氏への不満を述べている。しかも田畑氏は二階派に所属していた。

 もっとも党内の求心力を維持するために、二階氏は勢力拡大に努めている。細野豪志氏や鷲尾英一郎氏など元民進党の衆議院議員を傘下に入れ、山梨県知事選を勝利に導き、いち早く「安倍4選」も提唱した。しかし懸念は地元・和歌山の選挙だ。

有望な後継者不在という悩み

 長男の俊樹氏は2016年5月の御坊市長選に出馬。小泉進次郎氏や稲田朋美氏などが次々と応援に入る華々しい選挙戦を展開したが、7期目を目指した75歳(当時)の柏木征夫市長に9375票対5886票で敗北した。次男・直哉氏は二階氏が経済産業大臣の時に秘書官に就任し、後継者として有望視されていたが、役員を務めていた企業がトラブルを起こしたというハンディがある。三男・伸康氏が航空会社を退職し、2014年から二階氏の秘書を務めているが、まだ選挙区を譲るまでに至っていない。

 そういう事情のためだろうか。二階氏が一貫してぶれないのは、大阪維新の会への批判だ。3月4日には「思い上がっているのではないか」「もっと謙虚にやって下さいと要望したい」と皮肉った。

 というのは、和歌山県と大阪府は同じ近畿圏内にあるため、大阪維新の会の台頭は二階氏の選挙にも影響する。ましてや後継者問題を抱える二階氏にとって、黙ってはいられないものだ。

 このように古いタイプの政治家として、その存在感を発揮してきた二階氏。しかし最近は、それも限界に来ているように見えなくもない。だが二階氏という「一角」がなくなれば、党内の勢力バランスが一気に崩れる危険もあり、自民党はなかなか悩ましい。

 

政治ジャーナリスト

兵庫県出身。姫路西高校、慶應義塾大学経済学部卒。国会議員政策担当秘書資格試験に合格後、政策担当秘書として勤務。テレビやラジオに出演の他、「野党共闘(泣)。」「“小池”にはまって、さあ大変!ー希望の党の凋落と突然の代表辞任」(ワニブックスPLUS新書)を執筆。「記者会見」の現場で見た永田町の懲りない人々」(青林堂)に続き、「『新聞記者』という欺瞞ー『国民の代表』発言の意味をあらためて問う」(ワニブックス)が咢堂ブックオブイヤー大賞(メディア部門)を連続受賞。2021年に「新聞・テレビではわからない永田町のリアル」(青林堂)と「眞子内親王の危険な選択」(ビジネス社)を刊行。姫路ふるさと大使。

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