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経済が苦しい金正恩政権 10月10日の党創建75周年までの目標達成は困難!

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
労働党政治局会議での厳しい表情の金正恩委員長(労働新聞から)

 金正恩委員長は頻繁に党会議を開いている。昨日(5日)も金委員長出席の下、党中央委員会政治局会議が開かれた。10月5日現在ですでに16回目である。

 過去5年間(15年=3回。16年=4回、17年=3回、18年=3回、19年=5回)と比べても、今年は異常なほど多いことがわかる。換言すれば、それだけ国難を抱えていることの表れでもある。上半期と下半期を分けると、以下の通りである。

 上半期は2月29日の党政治局拡大会議(「コロナ」対策)、4月11日の党政治局会議(「コロナ」対策)、5月23日の党軍事委第7期第4次拡大会議(軍事力強化が議題)、6月7日の党第7期第3次政治局会議(平壌市民の生活向上が議題)、6月23日の党軍事委第7期第5次予備会議(本会議招集を討議)の5回のみである。

 しかし、下半期は以下、11回に上る。

 7月2日  党第7期第14次政治局拡大会議(平壌総合病院建設等が議題)

 7月18日 党軍事委第7期第5次拡大会議(人事及び軍内部問題を討議)

 7月25日 党政治局非常拡大会議(「コロナ」対策で開城市を封鎖)

 8月5日  党第7期第4次政務局会議(封鎖した開城市支援について)

 8月13日 党第7期第16次政治局会議(豪雨被害対策と「コロナ」対策)

 8月19日 党第7期第6次全員会議(第8回党大会の来年1月開催を決定)

 8月25日 党第7期第17次政治局拡大会議と政務局会議(台風8号被害対策と「コロナ」対策)

 9月5日  党政務局拡大会議(台風9号被害対策)

 9月8日  党軍事委第7期第6次拡大会議(台風10号被害対策)

 9月29日 党政治局会議(「コロナ」対策)

 10月5日 党第7期第19次政治局会議(来年1月の第8回党大会に向けて年内まで80日戦闘を決定)

 下半期の会議ではほとんど新型コロナウイルス感染拡大阻止と集中豪雨及び台風被害対策に追われていたが、昨日の会議では労働党創建75周年の10月10日をゴールにしていた経済建設計画を新たに80日戦闘を展開し、年内まで延長することを決定した。来年1月に開催予定の労働党第8回大会までに前回大会(2016年5月の第7回大会)で打ち出した「国家経済発展5か年戦略」の完遂を目指すとしている。

 「国家経済発展5か年戦略」は金正恩政権下での初の経済計画ということもあって金委員長は毎年、新年辞で経済発展の重要性を強調し、「人民経済のすべての分野で国家経済発展5か年戦略目標遂行に拍車を掛けなければならない」と力説していた。実際、2017年には目標遂行のため「万里馬速度」なるスローガンが登場し、2018年には「増産突撃運動」なるキャンペーンが展開されていた。今年もこれから80日戦闘が繰り広げられる。

 しかし、今年8月19日に開催された第7期第6次党中央委員会全員会議でこれまでの歩みを分析、総括した結果、「国家経済の成長目標が甚だしく未達成となった」として来年1月に第8回党大会を開催し、新たな国家経済発展5か年戦略を提示することを決定していた。

(参考資料:「コメで党を支えよう」のスローガンが復活! 北朝鮮は自力更生で食糧危機を乗り越えられるか!?

 「国家経済発展5か年戦略」の中身は電力、石炭、金属、化学、農業、水産部門などで増産することや人民生活向上のため軽工業に力を入れること、さらには鉄道や道路など交通網を改善することなどどれもが抽象的で、具体的な指標は何一つ明らかにされていない。具体的な目標として明らかにされているのは▲元山とカルマ海岸観光地区の開発▲三池淵郡建設計画▲漁郎川水力発電所建設▲金委員長肝いりの平壌総合病院の建設等の「労働党創建75周年記念事業」である。

(参考資料:相次ぐ台風で危ぶまれる北朝鮮の4大国家プロジェクト 10月10日の党創建日がゴール!

 これからさらに80日戦闘が追加されたことで「労働党創建75周年記念事業」と称される国家プロジェクトの4日後に迫った党創建75周年までの完成は困難となったようだ。

(参考資料:北朝鮮10月10日に軍事パレード! 金正恩政権下(2012年~)の過去7回の軍事パレードを検証する

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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