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豚足のパワーで豚骨ラーメンはもっとおいしくなる(麺屋はし本)

上村敏行ラーメンライター
福岡市「麺屋 はし本」のラーメン。豚頭と豚足のスープをブレンドして作られる

仕事柄、出張や観光での来福客を豚骨ラーメン店へ案内することが多いが、福岡を何度も訪れ、ひと通りの有名店を巡ったことのある人に対しては特に腕がなる。王道かつベタじゃない、バリうま!の博多ラーメン。そんなちょうど良いバランスと、もちろん味のうまさで、筆者に何度もしたり顔をさせてくれた店の一つに「麺屋はし本」がある。場所は天神駅から地下鉄空港線で約12分の室見駅を出てすぐ。博多や中洲エリアにステイしていてもアクセスがいい。

若き豚骨ラーメン職人・橋本力斗さん
若き豚骨ラーメン職人・橋本力斗さん

「麺屋はし本」は店主の橋本力斗さんが、名店「博多一幸舎」での修業を経て2016年に開業した店だ。橋本さんが弱冠25歳の時。筆者は訪れる度に「今日のスープもちかっぱウマいですね」と橋本さんに声をかけるのだが、彼の返答は決まって「知っています」とニヤリ。若くしていちラーメン店の店主となり、麺場での立ち振る舞いもどっしりとした豚骨職人のオーラをまとう橋本さんとのこういうやり取りがとても心地よい。「失礼しました。うまいに決まってるよね(笑)」。

「ネギラーメン」もちかっぱうまい!
「ネギラーメン」もちかっぱうまい!

「はし本」のラーメンは、ひと口目からハッとなる豚骨濃度の高さとシルキーな舌ざわり。ポタージュのような濃厚さがありながらギトギトしない豚骨ラーメンの好例といえる。「第一に、僕の好きなラーメンは何より濃厚豚骨。だからといって独りよがりにただ“濃い”を追求するのではなく、地域のじいちゃん、ばあちゃんにも毎日食べてもらえるような一杯をイメージしました。飲みやすいよう背脂、ラードは使っていません。言うならば昔ながらの博多ラーメンの進化系ですかね」と橋本さん。開業してからも“より美味”を求め製法をブラッシュアップしてきた。現在はスパッと割った豚頭、そして、豊潤なコラーゲンが染み出す“豚足”が主な材料だ。

豚骨に加え良質な豚足もたっぷりと使用。「それぞれ旨みが出るピークが違う」と頭と足は別鍋で煮込みブレンドする
豚骨に加え良質な豚足もたっぷりと使用。「それぞれ旨みが出るピークが違う」と頭と足は別鍋で煮込みブレンドする

「豚足は、ちょうど良い甘さや重厚感、心地よい余韻を出してくれます。豚頭と豚足は、煮込む際に香りや味が花開く“おいしさの限界値”が違うので、それぞれを別取りして合わせる手法にしているのもこだわりですね。最良の状態で寸胴から上げ、味にブレが出ないように管理しています。完全に呼び戻し製法にすると朝、晩、またピーク時、暇な時などでどうしても味にブレが出てしまいますから、ここを一定にしたいという思いが強いですね」と橋本さんが教えてくれた。“濃厚”の部分は使う骨の量の多さや豚足のコラーゲンに由来し、同時に感じる“軽やかさは”背脂やラードがゼロのため。加えて、細かい網で何度も濾すことで、よりきめが細かくまろやかな口当たりへと仕上がる。麺は、橋本さんが修業時代から親交のある一松竜太さんの「製麺屋 慶史」謹製。細く平打ちの麺が濃厚スープにしっかりと絡んで美味。

白しょうがと辛子高菜。高菜は大きめの刻みでみずみずしい食感を生かす。辛さの入れ方も絶妙
白しょうがと辛子高菜。高菜は大きめの刻みでみずみずしい食感を生かす。辛さの入れ方も絶妙

また、同店は「辛子高菜」がうまいことでも有名だ。味、辛さの入れ方、刻み方も筆者的に完璧。紅ではなく“白しょうが”、クラッシャーで砕く生ニンニクなどと共に卓上に置いてある。「ラーメンに脂が少ない分、辛子高菜はオイリーにしています。辛味やこってり度を追加したい方はラーメンに好きなだけのっけて。もちろん白飯とも合いますよ」と橋本さん。この無料の辛子高菜からも橋本さんの丁寧な手仕事、博多っ子の心意気を感じる。

「麺屋 はし本」は次世代の博多ラーメン文化を引っ張っていく存在だ。福岡を訪れたら絶対に押さえておいたほうがいい。

【麺屋 はし本】
住所:福岡市早良区室見5-1-24
電話:092-822-7855
営業時間:11:00〜23:00
定休日:不定休
座席数:26席(カウンター6、テーブル20)
交通:地下鉄室見駅すぐ

ラーメンライター

1976年鹿児島市生まれ。株式会社J.9代表取締役。2002年、福岡でライター業を開始。同年九州ウォーカーでの連載「バリうまっ!九州ラーメン最強列伝」を機にラーメンライターとして活躍。各媒体で数々のラーメンページを担当し、これまで1万杯以上完食。取材したラーメン店は3000軒を超える。ラーメン界の店主たちとも親交が深く、ラーメンウォーカー九州百麺人、久留米とんこつラーメン発祥80周年祭広報、福岡ラーメンショー広報、ソフトバンクホークスラーメン祭はじめ食イベント監修、NEXCO西日本グルメコンテストなど審査員も務めてきた。その活躍はイギリス・ガーディアン紙、ドイツのテレビZDFでも紹介

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