アルゼンチン代表、メッシはW杯制覇を達成できるか?マラドーナの残像と悲願のタイトル。
ワールドカップで、優勝候補の一角であることは間違いない。
近年のフットボール界で、欠けているものがあるとすれば、それはリオネル・メッシがジュール・リメ杯を掲げるシーンだろう。その実現に向け、アルゼンチン代表が始動する。
リオネル・スカローニ監督はすでにカタールW杯に向けて26名の招集メンバーを発表している。メッシ(パリ・サンジェルマン)を筆頭に、アンヘル・ディ・マリア(ユヴェントス)、フリアン・アルバレス(マンチェスター・シティ)、リサンドロ・マルティネス(マンチェスター ・ユナイテッド)、ラウタロ・マルティネス(インテル)とビッグクラブの選手たちが名を連ねた。
「呼ばれた選手たちはアルゼンチン代表のユニフォームを身に着けられることに誇りを感じている。サポーターの方々にも、同じように感じて欲しい。全員で、一致団結する時だ」とはスカローニ監督の言葉だ。
■前回大会はベスト16という成績
アルゼンチンは2018年のロシアW杯で、ベスト16で敗退した。ホルヘ・サンパオリ監督が率いたチームは、王者となったフランスを前に決勝トーナメント1回戦で散った。その後、アシスタントコーチだったスカローニ氏が暫定的に指揮を執り、2019年11月に正式に監督として就任した。
スカローニ監督はコパ・アメリカ2019を3位でフィニッシュした。その間、世代交代を着々と進め、2年後のコパ・アメリカ2021では見事にアルゼンチンを優勝に導いた。
コパ・アメリカ制覇は大きかった。メッシにアルゼンチン代表での初めての主要タイトルがもたらされたからだ。また、決勝でブラジル代表に勝利したのも見逃せないポイントだ。それまで、トップレベルでの指導経験がなかったスカローニ監督への批判があったものの、南米王者に輝いたことで風向きが変わった。
そのアルゼンチンの中心は、やはりメッシだ。
35歳のメッシは、カタールで自身5回目のW杯を迎える。ローター・マテウス(ドイツ代表/W杯出場5回)、アントニオ・カルバハル(メキシコ代表/5回)、ジャンルイジ・ブッフォン(イタリア代表/5回)、ラファ・マルケス(メキシコ代表/5回)といったレジェンドに並ぶ。
アルゼンチン人のメッシだが、彼はスペインのバルセロナで育成期を過ごしている。14歳でバルセロナのカンテラに入団。2021年夏に退団するまで、35個のタイトルを獲得した。2021年夏にパリSGに移籍すると、ネイマール(ブラジル代表)、キリアン・エムバペ(フランス代表)と攻撃陣を形成して、フランスと欧州で脅威となっている。
■マラドーナの残像
メッシはこれまでに7度のバロンドール受賞を果たしている。しかし、アルゼンチンでは完全に認められているわけではない。ディエゴ・マラドーナの残像が、アルゼンチン国民の脳裏に常に残っているからだ。
1986年のメキシコW杯で、マラドーナはまさに「英雄」となった。伝説の5人抜き、「神の手」によるゴールという記憶を残して、母国を優勝に導いた。左利き、プレーメーカー、ドリブラー、フィニッシャー、背番号10…。マラドーナとメッシは、あまりにも似ていた。当然、比較は避けられなかった。
「コパ・アメリカを終えてから、良いチームになってきている。勝利という事実が、物事をよりシンプルにしてくれる。自然な流れを作ってくれる。現在、サポーターは僕たちを勝利あるいは敗北で評価していないと思う。メンタリティーが変わったんだ。それは大事だった」とはメッシの弁だ。
「すべての代表チームが手強い。ネームバリューは関係ない。いま、勝つのは本当に難しくなっている。僕たちは、それほどヨーロッパのチームと対戦してきていない。僕たちは良い形で大会に臨めると思う。でも、優勝候補だという声に浮かれることはできない。現実を見据えて、一歩一歩、進むべきだ」
アルゼンチンはサウジアラビア、メキシコ、ポーランドと同組のグループCに入った。
アルゼンチンは2019年以降、35試合で無敗を貫いている。「これが最後のワールドカップになると思う」と語るメッシとともに、トロフィーを掲げられるかーー。戦いの火蓋が、切って落とされようとしている。