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小虎ファン必見!この秋、もと阪神の選手たちが京セラドームに集結

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
阪神時代の写真で、左から野原将志選手、藤井宏政選手、阪口哲也選手、穴田真規選手。

きのう15日、台風の影響で延びていた東海地区の最終予選が終わり、ことしの『第41回 社会人野球日本選手権大会』の出場31チームが決まりました。残すは今月20日から最終予選が行われる北海道地区の1チームのみ。本大会は10月26日(予定)から京セラドームで開催されます。

先日ご紹介したように、もと阪神タイガース・穴田真規選手が所属する和歌山箕島球友会は『第40回 全日本クラブ野球選手権大会』で優勝して出場決定。同じ社会人でも、日本選手権は都市対抗と違い会社や学校など企業チームの大会で、クラブ選手権を制したチームが唯一、その枠で出られます。ことしは和歌山箕島球友会がクラブチームの代表として出場するわけです。

2013年11月、草薙での合同トライアウト。左から野原選手、藤井選手、穴田選手。
2013年11月、草薙での合同トライアウト。左から野原選手、藤井選手、穴田選手。

そのクラブ選手権と同じ頃、長崎では日本選手権の九州地区最終予選が行われました。やはり、もと阪神タイガースの野原将志選手が所属する三菱重工長崎も順調に勝ち進み、第1代表に決定。4大会ぶり10回目の本大会出場です。少し前の9月2日には近畿地区最終予選で藤井宏政選手のカナフレックスが第4代表で初出場を決め、阪口哲也選手がいるパナソニックは対象大会(JABA岡山大会)で4月にもう出場権を獲得しています。

今回は九州の野原選手と近畿の藤井選手の話をご紹介しましょう。

日本選手権 近畿地区最終予選

まず、藤井宏政選手が所属するカナフレックス(滋賀県東近江市)の戦いぶりから。昨年は新規参入ということもあり対象大会には出られなかったのですが、ことしは『第68回 JABAベーブルース杯』に出場。そこでの出場権獲得はならず、9月1日から行われた近畿地区最終予選に参加しました。

ことしの近畿地区最終予選は、出場10チーム中6チームが代表になれるという確率の高さです。もともと代表数が少なくない近畿地区で、ことしは日本生命が2つの対象大会で優勝したため1枠増。さらに都市対抗野球の本大会でも日本生命が優勝して、もう1枠増。これで6枠になりました。しかも日本生命や、4月に決めたパナソニックなどが出場しないので、また確率が上がったんですね。

そんなわけで、第4代表までは全チームが1つか2つ勝てば決定という条件だったものの、創部2年目のカナフレックスは敗者復活戦に回ることなく本大会初出場を決めています。1回戦は滋賀県皇子山球場での履正社学園戦です。

9月1日 《1回戦》

カナフレックス-履正社学園

カナ 000 150 110 = 8

履正 012 000 200 = 5 

昨秋のオープン戦では勝った相手に3点を先取されます。4回2死から相手エラーが2つ続いて、1点を返したカナフレックス。5回は無死満塁で4番・北條が左前に2点タイムリー。なおも無死一、二塁で5番・藤井のバントがピッチャーフライになり1死。しかし6番・稲森の左中間を破るタイムリー三塁打で2点追加!さらに代打・福井が右前タイムリー。計5点を取って大逆転しました!

7回にも3番・深瀬の二塁打、4番・北條の二ゴロで1死三塁として、5番・藤井が中犠飛。8回は四球の走者を暴投などで三塁まで進め、9番・今釜の犠飛。終わってみれば8点を奪った打線ですが、梁川マネージャーは「苦しかったですね。2回に1点先制され、3回に相手の4番が2ラン。5回の5点がなかったらどうなっていたか」と振り返る試合展開。確かに7回も2点返されていますし、この5点は大きかったですね

ついで早くも2試合目で第4代表決定戦(わかさスタジアム)となりました。相手はことし2度対戦して2敗…しかも春季大会ではコールド負けを喫したニチダイです。

9月2日 《第4代表決定戦》

カナフレックス-ニチダイ

カナ 000 001 001 02 = 4

ニチ 001 010 000 00 = 2 

※延長11回

3回と5回に1点ずつ取られ、リードを許していたカナフレックス。6回に5番・藤井が左前打、6番・稲森の犠打、そして9番の代打・井上良が左前タイムリーを放って1点返します。9回はまた井上良が中越えの二塁打、1番・飯田が送って2番・山内の犠飛!土壇場で追いつきました。ところが9回裏にヒット、四球、犠打、敬遠で1死満塁として2番打者が左飛。三塁ランナーがタッチアップしてホームイン…サヨナラ負け。

と思ったら!タッチアップに際して走者の離塁が早かったとカナフレックス側がアピール。これが認められてアウト、生還は取り消されました。いったんはセーフとコールされたもんですから、ニチダイのベンチから全員出てきてサヨナラ勝ち!と大騒ぎになったそうですよ。そりゃそうでしょう。でもカナフレックス・河埜監督が、離塁のタイミングをしっかり見ていたとのことです。

実は昨年、都市対抗の予選でカナフレックスがこれで負けています。OBC高島戦で、9回に犠牲フライを打って同点に追いついたものの、タッチアップが早いという相手のアピールが認められて得点取り消し。ボールが三塁に投げられて走者はアウトに、それで試合終了となり、予選敗退した“因縁のアピールプレー”でした。

今回はその逆、サヨナラ負けを免れたわけです。延長10回は両チームとも無得点、11回表のカナフレックスは7番・福井の四球と8番・田中の犠打で1死二塁、9番の井上良が中前タイムリーを放ちました!さらに飯田がセーフティーバントを決めるなど1死一、二塁で2番の山内が右越えのタイムリー二塁打!飯田は本塁で憤死したものの、この回キッチリ2点勝ち越し。先発の大西が11回裏をキッチリ抑えて150球の完投勝利!

「日本生命さんのおかげ」

試合経過を詳しく教えてくださったカナフレックスの梁川浩樹マネージャーは「社長が、ことし初めて観戦に来ていたんです。去年は3試合見て3試合とも負けだったこともあって、もう大喜びでした!」と、延長で代表の座をつかんだ決勝戦を振り返ります。「とにかく初めてのことなので何が何やら…。でも本当に、日本生命さんのおかげ」と出場枠増に感謝。

5月のベーブルース杯での藤井選手。
5月のベーブルース杯での藤井選手。

そして対戦したことのある相手に当たった“くじ運”も。引いたのは梁川マネージャーです。日本選手権の組み合わせ抽選会は10月9日で「僕が引きます!どこも勝ち上がってきたチームなので厳しい戦いになると思うけど、初戦で負けるのは寂しいから頑張ります」と気合十分でした。

カナフレックスの副キャプテン・藤井宏政選手は、この最終予選2試合で5打数1安打1打点と4打数0安打。「調子悪かったです。その時は。悪いながら打ってはいたけど。一からやり直します」。でもまあ犠牲フライもありましたしね。藤井選手も、社長さんがすごく喜んでいたと言っていました。京セラドームで勝ったら、どーんとボーナスをくださるかも。

出場枠増や、対戦経験のあるチームとの試合で気持ちは楽だったかと尋ねたら「確かにクジ運もよかったけど、しんどかった!負けてたら大変ですよ。延長戦にいってもピッチャーおらんし。勝ってよかったです」と安堵の様子。梁川マネージャーも「計算できるピッチャーが大西と宮城の2人だけ。敗者復活戦に回って、あと2試合もやっていたら危なかった」と話していましたね。

そうそう、アピールして得点が取り消しになった場面を藤井選手に説明してもらうと「7-6-2で僕が中継して、タイミングはアウトやと思ったらセーフになったんですよ。そこで監督が出てきて、タッチアップの離塁が早かったと。僕はボールを受け取って“ベース踏め!”と言われて踏んだら…ほんまにアウトになった(笑)」のだそうです。塁審はちゃんと見ていたんですねえ。藤井選手がどんな顔でベースを踏んだのか、ちょっと見たかったなあ。

OP戦も増えてきました!

都市対抗野球はまだ予選をクリアできていませんが、創部2シーズン目で日本選手権本大会に初出場。藤井選手は「嬉しかったです!試合内容とかが濃かったですね。粘って粘って、勝てて嬉しかった!」と、さすがに声も弾みます。目標は?「チームとしては、まず勝たないと。まず1勝。個人としては…やっぱり1つ勝ちたいですね。1つじゃ物足りないけど、1勝は結構大きいでしょうね」

2014年3月、初対戦した藤井選手(右)と穴田選手。
2014年3月、初対戦した藤井選手(右)と穴田選手。
2013年8月14日、大阪学院大学戦で2ランを放った藤井選手。125が懐かしい。
2013年8月14日、大阪学院大学戦で2ランを放った藤井選手。125が懐かしい。
同じ日、先に穴田選手もソロを打っていました。阪口選手が嬉しそう!
同じ日、先に穴田選手もソロを打っていました。阪口選手が嬉しそう!

それは大きいですよ。「きっと応援団も来てくれるでしょうし、恥ずかしい試合はできませんね」と話す藤井選手。本番までにオープン戦が組まれており、11日には三菱重工神戸・高砂と対戦(三菱はもと阪神の若竹投手も登板しましたよ。結果は7対2で三菱の勝ち)。21日には阪口選手のいるパナソニック、10月6日は大阪ガス。同7日は新日鐵住金広畑と戦います。

専用グラウンドを持たないカナフレックスですが、日本選手権本大会出場で新グラウンドの計画とか…と言いかけたら「それはまだないでしょう(笑)」と一蹴されました。でも「でも平日にオープン戦が入るようになった」と藤井選手。梁川マネージャーも「おかげさまで、練習試合の話をいただけるようになりました」と心底嬉しそうです。阪神ファームとの交流試合もそのうち、ですね!

日本選手権 九州地区最終予選

8日に4大会ぶり10回目の日本選手権本大会出場を決めた三菱重工長崎。10分の6という割合だった近畿地区に比べ、九州地区最終予選での代表は15チーム中2チームという狭き門。でもさすが都市対抗にも6年ぶりに出ただけあって、今回も力を発揮しています。結果はこちら。

9月5日 《1回戦》

三菱重工長崎-日本ウエルネススポーツ専門学校北九州

三菱 001 100 012 = 5

日本 000 000 000 = 0 

9月6日 《2回戦》

三菱重工長崎-沖縄電力

三菱 000 000 500 = 5

沖電 000 001 001 = 2  

9月7日 《準決勝》

JR九州-三菱重工長崎

JR九 031 000 000 = 4

三菱 021 300 00X = 6 

9月8日《第1代表決定戦》

三菱重工長崎-西部ガス

三菱 000 020 003 = 5

西部 000 200 010 = 3

「キャプテン冥利に尽きる」2大会出場

野原将志選手は、戦いを振り返って「4試合中、1回戦を除く3試合が逆転勝ちですからね。特に決勝は8回裏に1点勝ち越されて、9回表2死から3点取った。去年だったら決勝までいってないですよ。沖縄電力(2回戦)のとこで負けてたかも。先制されていたし」と言います。決して無難に勝ち進んだわけではなかったということでしょう。

ことし5月、JABA九州大会で初対決。野原選手(左)と阪口選手。
ことし5月、JABA九州大会で初対決。野原選手(左)と阪口選手。

ところで野原選手は?「12打数2安打!打点なし」。あらまあ。都市対抗2次予選とはえらい違いで(笑)。「今回はピッチャーが頑張ってくれましたから。バッターはそんなに打ってないんですよ。ピッチャーはみんな調子よかったですね」。都市対抗の本大会に出た自信もあるのでは?「それと、チームとして何もできずに1回戦で負けて帰ってきたので、みんな何かしら感じることがあったみたいです」

それは自分自身も?「ましてや今年はキャプテンでしょう?日本選手権は4大会ぶりで、都市対抗と両方出るのは12年ぶりだとか。2大会出られるってのはキャプテン冥利に尽きます。やっててよかったと、初めて思いました」。よかったというのは、キャプテンを?「はい」。昨年夏、都市対抗の予選が終わったあとに副キャプテンを任されたばかりで、そこへ去年12月にはキャプテンを打診された野原選手。

2012年、九州共立大戦で長崎日大の後輩と。左から2人目は大瀬良投手です。
2012年、九州共立大戦で長崎日大の後輩と。左から2人目は大瀬良投手です。

「僕でいいんですか?みたいな引き受け方でした。正直、負担だった。やりたくない気持ちもあった。だって自分のことを差し置いても、チームや周りに気を配らなくちゃいけないから」。自分がやりたいこと、やるべきことに集中できないんじゃないかとの不安も少なくなかったでしょうね。だけど引き受けた野原選手。そこには、不退転の決意があったと思われます。

「6年ぶりに都市対抗本大会を決めた時は、正直ホッとしたってのが大きかった。でも今回はやっぱり嬉しかったですね!チームの成長も感じられたし」。どういう部分で?「逆転勝ちにしても、チームとして“勝ち方”がわかってきたというか、勝負どころに対する集中力がついてきたと思います」。そういう手応えを戦っていく中で実感できるのは頼もしいですね。

常に、最後という覚悟で悔いなく戦う

ちょっと懐かしい写真。2011年のインターコンチ―杯での日本代表ユニホームです。
ちょっと懐かしい写真。2011年のインターコンチ―杯での日本代表ユニホームです。

本大会の目標は?「チームとしては日本一!自分の目標は、とにかく予選で迷惑をかけてしまったので、核となって頑張っていきます。とりあえず1つ勝たないと次がない。都市対抗は勝てなくて、初戦の大事さを痛感しました。1つ勝てば絶対に伸びる、勢いに乗ってしまうと怖いチームなんですよ、うちは。だから初戦を大事にしていきたい。都市対抗と違って補強選手がいませんし、自チームの実力を試せる大会なので」

気合い入っていますよ~キャプテンは。ことしの九州地区最終予選は地元・長崎での開催だったこともあり「思ったより多くの皆さんが応援に来てくださいました。こんなに入るとか思わなかったですよ!」と感激しています。本大会もきっと来てくださるでしょう。

「社会人に来て2シーズンが過ぎようとしています。プロの時は1年でも長くやろう、やりたいと思っていたけど、社会人の場合は“ダメなら終わり”って覚悟でやってる。それくらい潔くいかないと。都市対抗も、今回も、最後の大会というつもりで悔いなくやろうということだけは心掛けています。それで京セラドームのあと、来年も野球をやりたいと思えるように頑張ります!」。最後の言葉に我々の思いも込めて応援します。

阪口選手も「メッチャ楽しみ!」な全員集合

2011年4月、右から穴田選手、藤井選手、阪口選手が仲良くウエートルームへ。
2011年4月、右から穴田選手、藤井選手、阪口選手が仲良くウエートルームへ。
2011年、フェニックスリーグの宿舎でゲームをする阪口選手(右)と穴田選手。
2011年、フェニックスリーグの宿舎でゲームをする阪口選手(右)と穴田選手。
これは2012年の鳴尾浜自主トレ。右から穴田選手、中谷選手、阪口選手。
これは2012年の鳴尾浜自主トレ。右から穴田選手、中谷選手、阪口選手。
2012年2月の安芸キャンプ休日。手のマメを見せる藤井選手(左)と阪口選手。
2012年2月の安芸キャンプ休日。手のマメを見せる藤井選手(左)と阪口選手。
ことし4月に初対決した穴田選手(左)と阪口選手。
ことし4月に初対決した穴田選手(左)と阪口選手。

4月22日にJABA岡山大会を制して、早々に出場を決めたパナソニック。ことしは都市対抗に出られなかったことでチームとしては気合いの入り方が違うでしょうね。阪口哲也選手も同じですが、また別の楽しみもあるようで。藤井選手が本大会を決めた時は「すごいですね!楽しみです」と言い、野原選手の出場決定に「みんな揃って、メッチャ嬉しいです!」と、笑顔が浮かんできそうなコメント。「穴田の試合?見てないっす」でした。

チームとしては優勝だと思うけど、個人的な目標は?と聞いたら、やはり「都市対抗に出られなかった分、日本選手権で暴れたいです」。調子はあまりよくないとのことですが、穴田選手から阪口選手への「首を洗って待っとけよ」という“エール”には「いつでもかかってこい!」と返しています。やりますねえ、哲ちゃんも(笑)

2013年まで阪神タイガースに在籍していた野原将志選手、藤井宏政選手、穴田真規選手、そして1年遅れでタテジマを脱いだ阪口哲也選手の4人。みんな内野手だから一緒に練習をしていたし、それぞれが3人ずつや2人ずつでいるところもよく見たメンバーです。同じ社会人チームで野球を続けている限り、いつかは揃って大きな舞台に立つ日が…と思っていました。まさかこんなに早く実現するとは。

この4人の他に三菱重工神戸・高砂が出場を決めているので、阪神と日本ハムに在籍した若竹竜士投手も昨年に続いての本大会です。4人とも初めてなので、わからないことは若竹さんに聞いてください。私に聞かないでね。都市対抗のように開会式がないので、もしかすると擦れ違いになる可能性もあるとか。一番は勝ち残って会うことですけど、近畿同士は1回戦での対決を避けられたとしても九州と近畿はありそうだなあ。どっちを応援?それは困りますよ。

なんてことを言える幸せを感じつつ、10月9日の組み合わせ抽選会を待ちましょう!

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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