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三セク移管検討のJR西日本、「城端線・氷見線」 富山県は資金面で主導の方針

鉄道乗蔵鉄道ライター

 2023年7月30日、JR城端線と氷見線の再構築に向けて、富山県と沿線4市、JR西日本が新たに設置した検討会において、沿線4市長は運行主体について、あいの風とやま鉄道が担うべきとの考え方を示したことは、2023年8月5付記事(LRT化目指したJR城端線と氷見線 あいの風とやま鉄道への移管を検討)で触れたとおりだが、その後、県が8月2日に開催した地域交通戦略会議の「鉄軌道サービス部会」おいて、「県は鉄道の維持に向けて資金面での主導的な役割が求められる」と立場を明確にした。

 「鉄道の沿線市町村についても応分の負担をする必要がある」ことも確認されたが、福島県など他県の事例を踏まえると、富山県は、沿線自治体の負担額についてはそれぞれの財政規模に応じて出せる金額に配慮をすると見るのが自然な流れだ。

各地の鉄道に関する自治体負担額の実情は

 福島県では、2022年10月1日、豪雨被害を受けたJR只見線が11年ぶりに災害復旧し、営業運転を再開した。最も被害の大きかった会津川口―只見間は被災前の輸送密度は49人であったが、福島県が鉄道施設を保有しJR東日本が列車の運行を行う上下分離方式により存続された。年間3億円に上る只見線の維持管理については、沿線自治体も相応の費用負担をしているが、越後川口駅のある金山町は年間約1300万円、只見町は約1900万円と、福島県の配慮により沿線自治体が負担できる金額しか課されていない。

 その一方で北海道では、2022年3月、北海道新幹線の札幌延伸開業時にJR北海道から経営分離される並行在来線について、輸送密度が2000人を超え本来は廃止対象とはならない余市―小樽間を含めた長万部―小樽間の廃止の方針を決定した。この際に、道が主導する密室協議の場により、並行在来線の存続に向けては財政力が脆弱な沿線自治体のみでその全額を負担することを前提に協議が進められ首長はしぶしぶ廃線に合意させられた。例えば、年間の一般会計予算額が50億円程度のニセコ町では、鉄道存続のためには土木費6億円の中から初期投資額だけで10億円が必要になると暗に迫られて廃線に合意させられたという。

 富山県の城端線と氷見線については輸送密度が2000人強と、北海道の余市―小樽間と同程度の輸送密度であるが、県は鉄道の維持に向けて資金面での主導的な役割が求められる」と立場を明確にしていることから、沿線4市の応分の負担については、福島県の只見線のケースのように各市の財政力に配慮した金額となることが予想される。

城端線・氷見線の今後については

 2023年3月、県による「城端線・氷見線LRT化検討会」では、蓄電池方式の低床電車導入によるLRT(次世代路面電車システム)化、新型鉄道車両の導入、BRT(バス高速輸送システム)化についての事業費を試算。結果、事業費の面から「新型鉄道車両の導入による利便性の向上を目指す」ことが決定された。

 具体的には、国の新たな支援制度を活用し、「運行本数の増加」「交通系ICカード導入」「両線の直通化」に取り組むこととされた。新たに設置された協議会では、沿線4市長から城端線と氷見線の運行主体についてはJR西日本ではなく、既存の第三セクター会社であるあいの風とやま鉄道が担うべきとの考えを示されたことから、今後は富山県が主体となった両線の「鉄道輸送の高度化」の取り組みが加速されることが期待される。

(了)

鉄道ライター

鉄道に乗りすぎて頭の中が時刻表になりました。日本の鉄道全路線の乗りつぶしに挑戦中です。学生時代はお金がなかったので青春18きっぷで日本列島縦断修行をしてましたが、社会人になってからは新幹線で日本列島縦断修行ができるようになりました。

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