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LRT化目指したJR西日本、「城端線・氷見線」 あいの風とやま鉄道への移管を検討

鉄道乗蔵鉄道ライター

 2023年7月30日、JR城端線と氷見線の再構築に向けて、富山県と沿線4市、JR西日本が新たに設置した検討会において、沿線4市長は両線の運行主体について、あいの風とやま鉄道が担うべきとの考え方を示し、検討会に加えるように求めた。

国の方針はローカル鉄道の利便性向上に転換

 この検討会は、2023年4月に地域公共交通活性化再生法が改正されたことに基づき、国の社会資本整備総合交付金を受け取るための鉄道事業再構築実施計画を策定するために設けられたものだ。

 国土交通省はこの法改正が成立する前年の2022年7月「地域の将来と利用者の視点に立ったローカル鉄道の在り方に関する提言」を発表した。この提言の内容については「輸送密度が1000人未満の路線は見直し」という点ばかりが大きく報道されたが、地方交通の再構築の方向性として、他にも重要な点が盛り込まれていることはあまり知られていない。それは、どのようなモードであっても「利便性の向上を図る」ことを前提とする点である。

 鉄道として再生する場合には、地域戦略を利用者の視点に立った鉄道の徹底的な活用と競争力の回復に向け「鉄道輸送の高度化」に取り組んでいくこと。BRT(バス高速輸送システム)やバスに転換する場合も「鉄道と同等またはそれ以上の利便性を実現」していくことが提言では示された。

 城端線・氷見線の輸送密度は2000人強ではあるが、新たな検討会設置は、まさにこの「鉄道輸送の高度化」に取り組むために設置されたものだといえる。

城端線・氷見線はLRT(次世代路面電車システム)化も検討

 城端線・氷見線ついては、2023年3月まで県による「城端線・氷見線LRT化検討会」が設置され、蓄電池方式の低床電車導入によるLRT化が検討されていた。

 検討会では、城端線・氷見線をLRT化するにあたって必要な事業費を約421億円と試算。一方で、新型鉄道車両を導入した場合の事業費約131億円とBRT(バス高速輸送システム)化するにあたっての事業費は約223億円と試算された。年間の維持管理費や赤字額についても新型鉄道車両の導入のほうが少ないとされ、城端線・氷見線の今後については「新型鉄道車両の導入による利便性向上を目指す」と結論付けられた。

 3月にLRT化検討会が発表した検討結果では、城端線・氷見線の今後「国の新たな支援制度の活用」「運行本数の増加」「交通系ICカード導入」「両線の直通化」について取り組むことが明記され、そのためにLRT化検討会を発展的に解消し、県、沿線4市、JR西日本を中心に、国の支援制度に沿った新たな検討組織を設置することとされていた。

今後は城端線・氷見線のあいの風とやま鉄道への移管を視野に

 あいの風とやま鉄道への移管については、「城端線・氷見線の両線はJRにとっては枝線だが、県にとっては県西部の骨格路線であることから、地元で責任を持って支え、便利な路線にするべきだ。新しく第三セクター会社を作る選択肢もあるが、人材養成や設備投資などの準備期間を考えると、既存の会社が担ったほうがスムーズではないか」との見解を示す関係者もいるという。

 また、JR西日本は、コロナ禍による業績低迷を受けて輸送密度2000人未満の赤字ローカル線30線区の収支状況を発表しているが、国鉄改革時に第三セクター鉄道に移管した路線のほうが、同程度の輸送密度のJR路線と比較して赤字額が少なく乗客の減り幅も少ないという指摘も存在する。

 ローカル線の「鉄道輸送の高度化」を実現するためには、地域の実情に精通しかつ高いモチベーションで主体的に事業変革に取り組める鉄道事業者が、地域の鉄道輸送を担うことが適切なのかもしれない。

(了)

鉄道ライター

鉄道に乗りすぎて頭の中が時刻表になりました。日本の鉄道全路線の乗りつぶしに挑戦中です。学生時代はお金がなかったので青春18きっぷで日本列島縦断修行をしてましたが、社会人になってからは新幹線で日本列島縦断修行ができるようになりました。ステッカーやTシャツなど鉄道乗蔵グッズを作りました。

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