不倫による離婚の真実!必要な証拠や慰謝料の相場は?離婚弁護士がリアルを解説
1 はじめに
最近、夫婦間で不倫疑惑などのトラブルが報道されていた芸能人カップルの離婚が成立しました。
元夫側が不倫相手を提訴したとの報道もあり、不倫行為を裏付けるような証拠があったとされています。
このように、芸能人の不倫は大きく報道されることもあって、渦中のカップルが注目の的となることも珍しくありません。
では、もしも配偶者やパートナーに不倫疑惑があったり、実際に不倫をしていることがわかった場合はどうすればいいのでしょうか?
今回は、不貞行為の立証に必要な証拠や慰謝料の相場など、まず押さえておくべきポイントを解説します。
2 どこからが不貞行為?
不倫・浮気・不貞行為―。どれも同じ意味だと思っている方もいらっしゃるかもしれません。
実は、「不倫・浮気」に明確な定義はなく、法的に問題となるのは「不貞行為」だけです。
相手に対する慰謝料請求が認められたり、離婚原因となるのは、この「不貞行為」あったかどうかにかかっています。
「不貞行為」とは、「既婚者が、自由な意思に基づいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶこと」だとされています(最判昭和48年11月15日)
「性的関係」とは、性交または性交類似行為をいい、具体的には「肉体関係」があることを言います。
例えば、メールのやりとりがあったり、二人だけで食事に行ったとしても、それだけでは「不貞行為」にはあたりません。
路上でキスしていたカップルが週刊誌で話題になったことがありましたが、やはりそれだけでは、「不倫」にはなっても、慰謝料等が発生する「不貞行為」にはならないのです。
このことを念頭において、配偶者の不貞行為を証明する証拠を集める必要があります。
3 不貞行為の証拠となるものとは?
では、次に不貞行為を立証するための主な証拠例とポイントについて、実例をもとに解説します。
①メールやLINEの画像
メールやLINEなどで浮気相手に送った文章などは、裁判所にも不貞行為の証拠として提出されるケースが増えていますが、二人の間に肉体関係があることが推認される内容であることが必要です。
また画像の加工ができないように、データよりも画面を撮影したものの方が有効とされています。
ただし、メールやLINEの入手方法については不正アクセス行為の禁止等に関する法律違反に該当するおそれもあるため、十分な注意が必要です。
②SNSやブログ
FacebookやInstagram、TwitterなどSNSへの投稿や、ブログに浮気相手に関する写真や文章が掲載されている場合は証拠となる可能性があります。
最近、当事務所では、SNSへの投稿をきっかけとして、不貞相手が発覚したケースが立て続けに2件ありました。投稿に付された「タグ」から、不貞行為を裏付ける事実を掴むことができたのです。
また、SNSではダイレクトメッセージでのやり取りをすることが多いですが、それを撮影したものも有効です。
その場合、アカウントが本人のものであり、やり取りをしている日時が明確にわかることが必要です。
③写真、動画
不貞行為の証拠となり得るのは、主として以下の写真や動画です。
・ラブホテルや不貞相手の自宅に入る時と出る時(二人の顔が鮮明に映っていること、出る時と入る時の両時点のものが必要)
・自動車内での性行為(探偵が撮影したり、ドライブレコーダーに記録されていた場合等)
・不貞相手と二人で旅行している写真(旅行中に撮影したプリクラ等)
私の担当した事件では、不貞相手との性行為や裸体を撮影した写真や動画のデータが、家族共有のパソコンやデジカメ内に保存されていたというケースが何件かありました。
いずれもお子さんがいる前で発見したそうで、相手の杜撰すぎる管理に驚きましたが、不貞相手との付き合いが長くなってくると緊張感が薄れるのかもしれません。
なお、性行為の写真や動画を証拠として裁判所に提出する場合は、局部をマスキングするなど最低限の配慮が必要です。
④音声データ
証拠としては強いものではありませんが、配偶者と相手が会話をしている音声で、不貞行為が行われていることがわかる内容や、性行為やそれに類することがわかる音声は可能性があります。
また、配偶者が不貞行為の事実を認めた際の音声を録音しておくと、それも証拠となり得ます。
ただ、手法自体が違法とされないように細心の注意を払うことが必要です。
⑤SuicaやPASMO、ETCの利用履歴
こちらも証拠としては強いものではありませんが、普段行かないような場所への電車の移動履歴やETCの利用履歴も証拠として認められる場合があります。
これに合わせて使用した、ホテルやレストランなどのクレジットカードの履歴などがあると証拠が補強されます。
⑥スケジュールアプリや手帳、日記など
配偶者が相手に会ったことがわかる記述のある日記や手帳、スケジュールアプリの継続的な記録は証拠になり得ます。
二人が会った日にハートマークなどがあれば、更に効果的でしょう。
また、配偶者が相手に会ったと思われる日を自ら記録しておくことで、⑤に記載のデータと突き合わせて証拠とすることも可能です。
⑦探偵事務所・興信所の利用
①~⑥をご覧になって、なかなかハードルが高いと感じ、探偵事務所や興信所に浮気調査を依頼することを検討する方もいらっしゃるでしょう。
プロに頼むことで決定的な証拠を得て、そのまま裁判に提出することは、実際にはかなり多いです。
ただ、一つ注意すべきはコストの問題です。
場合によっては数百万の費用がかかることもあるため、依頼の仕方を考慮する必要があります。
おすすめなのは、不貞相手と会っている日時をあらかじめ把握しておき、その日時に限定して依頼をすることです。探偵事務所や興信所に支払った費用は、損害として相手に請求することは基本的にできませんので、この点にも注意が必要です。
4 慰謝料の相場とは?
私は兵庫県西宮市で家事事件を中心に扱う法律事務所を経営していますが、事務所に相談に来られる方の中には、慰謝料のリアルな相場を知りたいとおっしゃる方が沢山おられます。
私が過去に担当した事件での慰謝料の最高額は約600万円でした。
ただ、このケースは例外中の例外で、不貞相手の社会的地位がかなり高かったことと、当事者が不貞の事実を素直に認め、真摯に謝罪をしたいとの思いから高額の慰謝料となりました。
最近は、コロナ禍の社会情勢を反映してか、どちらかと言えば低額になる傾向にあるように思います。
慰謝料額はさまざまな要素が重なりあって最終的に決まるので一概にはなかなか断言できないのですが、個人的に目安・目標としている金額は下記の通りです。
夫婦が、離婚や別居をせずに夫婦関係を継続する場合:30万円~100万円
不貞行為が原因で別居に至った場合:100万円~150万円
不貞行為が原因で離婚に至った場合:150万円~250万円
探偵社や興信所、弁護士に依頼するようなケースだと、高額な調査費用や弁護士費用がかかってしまい、せっかくの慰謝料が手元に残らないといったことも現実問題としてあります。
探偵や弁護士に依頼するときには、あらかじめ費用を確認することをおすすめします。
5 最後に
不貞行為をした側は、今の配偶者と離婚して、不貞相手と結婚したい、すぐに離婚してほしいなどと身勝手極まりないことを言い出す場合があります。
是非、知っておいていただきたいのは、たとえ相手から「離婚してほしい」と言われても、素直にそれに応じる必要などないということです。
不貞行為をした側は、法律上、「有責配偶者」に該当します。
「有責配偶者」とは、簡単に言えば、離婚原因を作ったことに責任のある配偶者のことです。
そして、有責配偶者からの離婚請求は、原則として認められないという有名な判例があり、不貞行為をした側の勝手な言い分は基本的に通らないようになっています。
この点について、ご心配な方や心当たりがある方は、早めに弁護士などの専門家に相談してください。
不貞行為をした相手の言いなりになる必要はないのです。