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まだ見えないW杯の答え。それでも長友佑都はアジアカップで、チームのために走り続ける。

河治良幸スポーツジャーナリスト

UAE戦の前日会見にアギーレ監督と同席した長友佑都はブラジルW杯の課題と、それをどう今後のステップにつなげていくかという質問にしばらく言葉を詰まらせてしまった。

そしてアギーレ監督が先に、長友について「戦うことのできる力強い選手。他の選手に愛され敬意を払われている。それを他の選手に伝染する。明るい性格がチームにいい影響を与えている」と語った後、長友が慎重に発した言葉が「W杯の心境と次のW杯に向けての心境を語るのは難しい」ということだった。

「(ブラジル)W杯の心境と次のW杯に向けての心境を語るのは難しくて、そのことについて考えていて、そのためのエネルギーが必要なので、それは今ここで語るのは勘弁してほしい。そこにエネルギーを使うぐらいなら、明日のダッシュ一本に使いたい」

長友にとっては最も重いテーマであることは間違いなく、言い換えれば取材側が最も彼から聞き出したいテーマでもある。ただ、その答えが見つかっていない中で、一時は代表引退も考えたという長友が現時点で出した回答が「ともかくチームのために犠牲になることを追求する」ということだった。

「自分がどれだけチームのために犠牲になれるか。その犠牲の精神が本気であるならば、本当に大事な時に最高のパスが来たり、今までミスしていたものがミスでなくなったりすると思う」

そう語る長友はヨルダン戦で、香川真司がアギーレ体制になって初ゴールをあげた瞬間は「点を取って嬉しそうな顔を見て僕も本当に嬉しかった」という。「日本のエースで10番の真司が大きなプレッシャーを背負っていて、彼自身なかなか点を取れなくて、難しい時期をすごしたと思います」と長友は語る。

周りの大きな期待とは裏腹に、結果が出ない中で悩み苦しんだ香川を間近で見て、ある意味で自分に重ね合わせていた部分もあるだろう。だからこそ、そうした仲間のために、そしてチームのために何ができるかを考え、そのために自分の役割を果たして行く。

自分は日本代表のために必要なのか。ここからレベルアップして次のW杯に再チャレンジできるのか。その答えがなかなか見つからない中で、長友ができる精一杯のことで、代表チームに居続ける命綱の様なものでもあるのだろう。

「明日もチームのために走ります」と最後には力強く前を向いて語った長友。UAE戦で勝利に貢献し、アジアカップで優勝を果たしても、長友の探している答えが見つかることはないかもしれない。やはり忘れ物はW杯にしか置かれていないのかもしれない。それでも今、彼の走りがチームに推進力を与え、勝利の力になることは間違いないだろう。

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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