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日本代表にケガ人を呼ばないハリルホジッチ。酒井宏樹のブンデス復帰が示すその恩恵

河治良幸スポーツジャーナリスト

ブンデスリーガ15−16の第9節でケルンと対戦したハノーファーは前半38分に清武弘嗣のCKからアンドレアセンが押し込んでリード。実際は腕に当たってゴールに入っており、ハノーファーとしてはラッキーな得点だったが、そこからケルンの攻撃を無失点におさえて勝利したことは評価に値する。

特に効果的だったのが酒井宏樹の後半スタートからの出場だ。もともと右SBの主力として開幕から出場機会を得ていた酒井だが、9月23日のシュトゥットガルト戦で右太ももを負傷し、その後リーグ戦2試合を欠場。10月の日本代表からも選外になっていた。

「筋肉のケガで結構深くて、治りもすごく悪かったので、慎重にやっていました」と語る酒井はチームに合流してからも他の選手より軽めのメニューにしており、次のポカール(ドイツ杯)から復帰できればと考えていた様だが、想定外の45分間プレーでもしっかりと役割をこなし、前半に同サイドで突破力が目立っていた元同僚のビッテンコートを厳しい対応で押さえ込んだ。

攻撃も入った直後に二度のオーバーラップでチャンスに絡んだが、「最初2回上がって、尋常じゃないくらい疲れたので、もう迷惑かけるなと思った」と上がりを自重し、ディフェンスの安定をもたらすことに専念した。ライン際に加えて中央でのクリアも「上がらなかった分、そういうところは集中してできた」と振り返る。

日本代表のハリルホジッチ監督は酒井の招集を同じく怪我だった遠藤航(湘南ベルマーレ)と共に、発表の直前まで悩んだと語っていたが、酒井としても呼ばれなかったことで、クラブで治療と回復トレーニングに専念できたことは大きい。「3日前くらいからずっと電話していて。それだけ気にかけてくれるのは嬉しいこと」と語る酒井は代表指揮官に「ちょっと無理そうです」と伝えていたという。

「ケガに対してすごく慎重な監督というのは選手にとって有難いことです。選手もケガしていてもやりたいっていうのはありますけど、初めての場所ですごい長くかかったので、いい経験にもなりましたし。止めるのも勇気だなと思いました」

ケルン戦ではフィジカルコーチのシリル・モアンヌがイラン戦の後に現地まで訪れ、同僚の清武、ケルンの大迫勇也と共に状態をチェックし、激励していた。6月の合宿では他の欧州組と共に早めに合流してトレーニングしていた清武の右足底部に亀裂が見つかり、復帰までしばらくかかる事態が発生したが、全体的に怪我や体調を気にする監督であり、その点はチームのパフォーマンスを低下させないだけでなく、選手の長期離脱のリスクを減らすことにもつながる。

そうしたことからも酒井が前回の代表メンバーに入らず、クラブでじっくり復帰にこぎ着けたことは大きな意味合いがあるのだ。

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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