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【W杯現地報告】日本代表が変えた「必勝の方程式」赤い悪魔4強に進出 日本はベルギーの監督選びを学べ

木村正人在英国際ジャーナリスト
W杯を終えて会見する日本代表の西野監督(写真:森田直樹/アフロスポーツ)

円熟期迎えたG世代

[ニジニ・ノヴゴロド発]サッカーのワールドカップ(W杯)ロシア大会準々決勝でフランス対ウルグアイ戦(2-0)をニジニ・ノヴゴロド・スタジアムで見たあと、空港ロビーの大型テレビでベルギー対ブラジル戦(2-1)をみました。

空港でFWグリーズマンやMFボグバら、フランス代表を見られるというビッグなおまけ付きでした。

ウルグアイのエースであるスアレスと最強のコンビを組んできたFWカバニが負傷で欠場し、スアレスのフラストレーションだけが伝わってくるフランス対ウルグアイ戦と違って、ベルギー対ブラジル戦はベルギー対日本(3-2)に続くエキサイティングなゲームになりました。

人種や民族の多様性とあふれる才能で「グローバル世代」「ゴールデン世代」と呼ばれるベルギー代表は円熟期を迎えています。2016年9月にスペインに敗北したのを最後に実に24戦、負けなしという強さです。しかも、0-2と瀬戸際まで追い込まれた日本戦でさらに進化しました。

身長194センチのMFフェライニ、チャドリを途中投入して日本に対して終了間際の劇的な逆転劇を演じた「必勝の方程式」でブラジル戦に臨みました。ロベルト・マルティネス監督はポゼションで優位に立てないとみたら、高さと強さで補強する作戦です。

急上昇するマルティネス株

ボール保有率で43%対57%、シュート数で8本対26本と圧倒されながらもブラジルを切り崩し、そして突き放したベルギー。W杯の4強進出は1986年メキシコ大会(4位)以来、2度目。マルティネス監督の評価もうなぎのぼりです。

マルティネス監督は2015-16年シーズンの途中、英イングランド・プレミアリーグのエバートンの監督を解任され、16年8月からベルギー代表の監督を務めています。プレミア時代の勝率は38%。ホームゲームでの負けが込み、最後はサポーターから「やめろ」と横断幕を突きつけられました。

今大会、驚いたのは、フランス歴代最多の51得点を記録した元代表FWティエリ・アンリがベルギーのアシスタントコーチを務めていることです。アンリは代表選手とフランス語でコミュニケーションをとれます。

高い得点力を誇るFWルカクやアザール、デブライネがW杯という檜舞台でさらに優れた能力と強いメンタリティーを発揮できるようにするのがアンリをアシスタントコーチに招いた狙いです。

アンリは準決勝の対戦相手フランスの長所と短所、そしてW杯で普段の力を発揮する難しさ、優勝と1次リーグ敗退という光と影、監督と選手の不和についても知り尽くしています。

プレミアのアーセナルの黄金時代を築いたアンリは英TVの人気サッカー解説者。監督やコーチとして現役復帰か、と注目を集めています。マルティネス監督は準決勝のフランス戦に向け「我々にはさらなるエネルギーが必要だ」と表情を引き締めました。

気になる日本の次期監督

2大会ぶり3度目の16強進出を果たした日本代表ですが、西野朗監督の退任が決まり、次期監督候補として、早くもA代表コーチでU-21日本代表の森保一監督や、ドイツ代表や米国代表の監督を務めたユルゲン・クリンスマン氏、アーセン・ベンゲル前アーセナル監督らの名前が上がっています。

良い監督には来てほしいものの、日本サッカー協会の監督予算には限りがあります。代表チームの監督報酬はいったい、どれぐらいなのでしょう。南アフリカのニュースサイト「ザ・サウス・アフリカン」などによると――。

【ベスト8】

ブラジル302万ポンド(4億4333万円)

フランス350万ユーロ(4億5451万円)

ウルグアイ147万ポンド(2億1579万円)

イングランド169万ポンド(2億4809万円)

スウェーデン39万2500ポンド(5761万円)

ロシア221万ポンド(3億2442万円)

ベルギー(マルティネス監督)81万ポンド(1億1890万円)

クロアチア55万ユーロ(7142万円)

【その他】

日本(西野監督)81万ポンド(1億1890万円)

韓国39万2500ポンド(5762万円)

アルゼンチン155万ポンド(2億2754万円)

ドイツ331万ポンド(4億8590万円)

スペイン258万ポンド(3億7874万円)

ポルトガル191万ポンド(2億8038万円)

ドイツやブラジル、スペインのような強豪国は監督に日本の3倍以上の報酬を支払っていますが、ベルギーのマルティネス監督は日本の西野監督と同じというのには驚きました。

マルティネス監督はプレミアのエバートン時代は勝運に見放され、シーズン途中に解任という屈辱を味わいました。ベルギーサッカー協会は、どん底のマルティネス監督を底値で買いました。

マルティネス監督はプレミア経験者なので最先端の戦術やW杯に出場する有力選手を熟知しているという強みもありました。

世界一高報酬の監督とは

ちなみに別のニュースサイト「ビジネス・インサイダー」によると、有力クラブを含めた監督報酬ベスト3は次の通りです。

(1)マルチェロ・リッピ(中国代表)1800万ポンド(26億4240万円)

(2)ペップ・グアルディオラ(マンチェスター・シティ)1530万ポンド(22億4604万円)

(3)ジョゼ・モウリーニョ(マンチェスター・ユナイテッド)1500万ポンド(22億200万円)

子供の頃からサッカーの熱狂的なファンで、自分もプレーしていた中国の習近平国家主席は副主席だった11年当時、韓国首脳と会談した際、サッカーに賭ける3つの願いを披露したことがあります。

(1)ワールドカップに再び出場する

(2)W杯を主催する

(3)W杯で優勝する

日本サッカー協会には中国のように代表監督に26億円を支払える財力はありません。西野監督のような日本人監督を選ぶのでしょうか。プレミアリーグのような激戦リーグを経験した監督をリーゾナブルな報酬で招聘(しょうへい)するのでしょうか。

日本サッカー協会の決定が楽しみです。

(おわり)

在英国際ジャーナリスト

在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。masakimu50@gmail.com

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