東京や大阪の気温は上昇中…100年以上の推移をさぐる(2024年版)
東京は150年近くで約3度の上昇
地球温暖化のような大きな規模の話でなくとも、都市近郊部に住む人の多くは、夏の気温が上昇しつつあるとの印象を持つに違いない。ではその感覚は事実に基づいたものなのだろうか。気象庁の公開データを基に確認する。
次に示すのは東京における夏場の7月と8月、冬場の12月とその翌年の1月における、月次平均気温の推移。
「100年も生きているわけではないので子供の頃の気温は覚えていないが、少しは上昇してるかもしれない」と思う人はいるだろうが、実際に気温の上昇ぶりを確認すると、あらためて驚くに違いない。もちろんこれは単純に気温そのものの全体的な上昇によるものだけでなく、東京周辺の開発進行に伴い、ヒートアイランド現象が影響力を強めたものでもあるのだろう。どれか一つの要因のみでなく、複数の要因が積み重なった結果に違いないが、ともあれ東京ではこの150年近くの間に夏は平均で3度ほど、冬は4度ほど平均気温が上昇していることになる。
大阪では東京よりやや穏やかだが上昇中
大阪の状況も東京とほぼ変わらず。夏は3度ほど、冬も3度ほどと、東京よりも冬が抑え気味ではあるが、平均気温が上昇している。上昇分の違いは、都市開発の度合いがそのまま反映されているのかもしれない。
いずれにせよ、ある程度の起伏を経ながら平均気温が上昇していることは確かである。
札幌も平均気温は上昇中
次に北の地域の代表として、札幌の実情を確認する。
東京・大阪と比べて穏やかではあるが、明らかに上昇していることに違いはない。また2023年における8月の暑さが異様なほどのものだったことが再確認できる。
気温上昇は都市部での話かもしれない
これら東京・大阪・札幌の状況からは、都市開発の実情で差は生じるが、おおよそ気温の上昇が確認できる。しかしその気温上昇が、日本、さらには地球の全体的な気温の上昇に伴うものなのか、それともヒートアイランド現象や、人口の密集化・人工建造物の増加に伴うエネルギー放出の増加など他の要因によるものなのかまでは特定できない。
なお気象庁の特設解説ページ【ヒートアイランド現象】によると、都市部において長期的な気温の上昇傾向がみられ、特に都市化が進んでいる地点ほど気温の上昇率が大きいとの言及が確認できる。他に、冬日の減少や熱帯夜・猛暑日・真夏日の増加、日中最低気温の上昇、乾燥化の進行が進んでいるとのこと。また、東京では1950年代後半から1970年頃にかけて、気温が大きく上昇したと説明している。
ちなみに「都市圏以外」の例として、北海道・網走の夏の動向をグラフ化したのが次の図。観測データの都合で1890年以降のものしか値が無いが、おおよその状況は把握できる。変移が分かりやすいように、近似曲線も併記した。
大きな上昇は確認できない。また計測データが戦後のもののみであることから単純比較はできないため掲載は略するが、南鳥島の場合は60年余りにおける明らかな平均気温の変化は無かった。
気象庁の報告書の内容も併せ考えると、少なくとも日本における気温の変化は人口増加・都市化に伴うもので、人口密集地帯ではヒートアイランド現象によるところが大きいと見た方が、道理は通りそうだ。
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