Apple Watchの意匠登録とサードパーティの時計バンドについて
米国におけるApple Watchの最初の意匠登録(design patent)について既に紹介しましたが、時計ベルトの意匠登録(D724,469)も行なわれていました。これからしばらくの間数多くの意匠登録が行なわれていくでしょう(意匠は登録後でないと公開されないので、今どのような意匠登録出願がペンディングになっているかはわかりません)。
本体の部分意匠、そして、バンドの部分意匠が登録されていることから、今後、本体の全体意匠(および、「デジタルクラウン」などの他の部分意匠)とバンドの部分意匠が登録されることは確実です。
ここでは、これらの意匠権がサード-パーティの時計バンドのビジネスに与える影響について考えてみましょう。アップル純正のバンドはちょっとお高い(ステンレス製のものだと5万円を越えてしまいます)ので、替えのバンドは他社製でもいいと思っている人も多いでしょう。また、金の問題だけでなく、他人とちょっと違うスタイルにしたいという場合にも、バンドの選択肢は多いにこしたことはありません。
アップル純正のバンドのデッドコピー品(いわゆるパチモノ)の製造・販売等が意匠権により禁止されるのは当然ですが、問題になるのはバンドのデザインとしては独自でありながら、Apple Watch本体に取り付けられるようになっている互換品のケースです。ここで、特に問題となるのはバンドの本体との接続部分メカの部分意匠が登録されるかどうかです。もし、登録されてしまうと、Apple Watchに取り付け可能な機構を持つ時計バンドはどんなデザインであってもアップルの意匠権を侵害してしまう(少なくとも侵害だぞとアップルに警告される)可能性が生じます(あくまで可能性)。
サードパーティによる互換パーツの製造・販売をコントロールするために接続部の部分意匠を登録するケースは今までもあります。たとえば、アップルはLightningコネクタの接続部の部分意匠を登録(D684,539)しています。また、任天堂もゲームカートリッジ接続部分の部分意匠を登録していることが知られています。ゆえに、アップルがバンドの本体接続部の形状を部分意匠として出願している可能性は高いでしょう。
意匠権は本来、視覚を通じて美感を起こさせる工業デザインに対して付与されるものなので、ファンクショナルな接続部の形状に対して意匠権を行使できるかは議論の余地があります(おそらく裁判でこのようなケースで意匠権の行使が認められたことは今でないと思うのですが、ご存じの方、教えてください)。また、多くの場合、機能を犠牲にせずにデザイン的にちょっと変えて意匠権の侵害を回避することは可能です(たとえば、ダイソーで売っているLightning互換充電ケーブルは上記意匠権を回避しているように見えます)。
ということで、アップルのライセンスがないサードパーティのApple Watch用時計バンドのビジネスが完全にシャットアウトされることはないとは思うのですが、ちょっと気になるところです。