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ロビー・ディーンズ、パナソニック対ハイランダーズ戦&日本代表に思うことは。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
写真左がディーンズ監督。(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

2019年のラグビーワールドカップ日本大会の開催地にもなっている埼玉県熊谷市で、この夏、ファン注目の試合がおこなわれる。

8月8~11日に開催される新イベント「グローバルラグビーフェスタ2017埼玉・熊谷」の目玉企画として、11日、熊谷スポーツ文化公園陸上競技場で日本のパナソニックとニュージーランドのハイランダーズが激突する。かつてオーストラリア代表などを率いたパナソニックのロビー・ディーンズ監督は、5月22日の埼玉県庁での記者会見に出席。意気込みを語った。

群馬県太田市で活動するパナソニックは、一昨季まで国内最高峰のトップリーグで3連覇。昨季までキャプテンだった堀江翔太ら多くの日本代表選手を擁し、堅守速攻のスタイルを掲げる。

ニュージーランド南島のダニーデンを本拠地とするハイランダーズは、国際リーグのスーパーラグビーの2015年シーズンを制覇した。パナソニックとの人的交流も深く、前身である三洋電機でプレーしたトニー・ブラウンは現ヘッドコーチ(日本代表のアタックコーチにも就任)。日本代表スクラムハーフの田中史朗も、日本人初のスーパーラグビープレーヤーとして昨季まで4シーズン、ハイランダーズに在籍していた。

今回の「グローバルラグビーフェスタ2017埼玉・熊谷」に向けては、チーム、埼玉県ラグビー協会、埼玉県、熊谷市の4者が寄り集まって実行委員を結成。ワールドカップへの機運醸成に力を注いでいる。

スピーチしたディーンズ監督は、会見後も日本代表へのサポートする意思を語っている。

以下、会見中の一問一答の一部(編集箇所あり)。

「まずは埼玉県、熊谷市、埼玉県ラグビー協会の皆様、こうした素晴らしいイベントの開催を発表できたことに、敬意を表したいと思います。この素晴らしいイベントは、これから将来に向けて皆でラグビーを盛り上げるためのひとつランドマークになる。これからこの地域でラグビーを発展させるうえでの、ひとつのマイルストーンになる。

我々のチームで部長をしている飯島均が現役選手だった頃。これは昔の話ですが、当時の熊谷ラグビー場で、いまのスーパーラグビーのレッズにあたるクイーンズランド代表と埼玉選抜が試合をした。今回それと同じような国際交流大会をする。これは、地域発展に大きな一歩となる。

ハイランダーズは、我々との関係を培ってきて、歴史を共有してきたチームです。ブラウンはかつて我々のチームの選手でした。また我々のチームの選手、田中は、4年プレーしてきました。スーパーラグビーでは2015年シーズンを制覇し、初優勝を飾っています。今季もプレーオフに進めそうです。そのチームと試合をするのは素晴らしい機会です。この試合は、ワイルドナイツ(チーム愛称)にとっても大事になると思っています。今季のトップリーグ開幕前最後の練習試合になります。

ファンの皆様、スポーツファンの皆様にとっては、世界的チームのプレーを生で観ていただけるチャンスです。選手が次世代の青少年と触れ合う機会も持てます。コーチングクリニックや文化交流を通して、色々な選手と触れ合って欲しいと思っています」

――ハイランダーズの魅力、特色について。

「ハイランダーズは南島のダニーデンを本拠地に置いていて、インバーカーギルのスタジアムでも試合をおこなっています。ダニーデンはもともとオタゴ大学があるなど、学生の街として有名。チームも若い、タフなチームという印象があります。伝統を持っていながら、若い人を楽しませるようなラグビーをします。彼らの試合を見ていただくとわかりますが、常に相手に情け容赦なく100パーセントの力を出し切り、戦い続ける。同時にラグビーを楽しんで、お互いを支え合って、笑顔を絶やさない側面もあります。ここ数年の田中の笑顔は、その文化に貢献しているんじゃないかと思います(インターネット上で配信されたチームの動画などでひょうきんな姿を披露)。ハイランダーズは彼にとっても居心地のいいチームになっていたと思います」

――猛暑で有名な熊谷市での試合に向けて。

「我々はいつも、その暑いなかで練習をしていて、通常は練習の方が試合よりもきついことをしている。問題ありません。気候については、向こうの方が敏感なのではないかと思います。(笑みを浮かべ)会場が、ハイランダーズにとって居心地の悪い場所であることを強く願っています。

2月、ブリスベンで10人制のグローバルテンズに参加しました。あの時の暑さに比べたら、熊谷の暑さはかわいいものです。あの時は暑さのなかで、ワイルドナイツの選手が頑張ってくれました。日本の体感温度がマイナス数度という時期に気温約40度の場所に行って、スーパーラグビーのワラターズ、レベルズを倒こともできました。加えて今回は、地元のチームとして戦える強みがある」

――熊谷市のラグビー熱について。

「我々も熊谷でプレーする時は気合いも入りますし。聖地でプレーできるのは嬉しい。熊谷で試合をするのは楽しみですし、ホームという思いで戦っていくつもりです。今年は6試合もトップリーグの試合があるので、ホームという思いもある。多くの方々に試合を観に来ていただいて、一体となって試合に参加して欲しいです。乗り込んでくる対戦チームに、敵地に行かなくてはいけないという心地の悪さを感じさせる会場にしていただけたらと思います」

――トップリーグ開幕前最後の試合。ベストメンバーで臨むのでしょうか。昨年度は開幕節を落とすなど、序盤に苦しんでいましたが。

「(笑って)まずは昨季のことを思い出させていただいてありがとうございます。昨季もそうでしたが、どうしてもシーズン序盤は苦しんでしまうのがワイルドナイツの現実です。それはサンウルブズ(スーパーラグビーの日本チーム)や日本代表に多くの選手を送っているため、最初の試合に向けては非常に短い時間で準備をしなくてはならない。最初の4試合で2つ落とすなど非常に苦しんだのですが、そのなかで14名の選手にトップリーグデビューをしてもらうことができ、勝ちも重ねられた。その意味では充実したシーズンでした(3位で終了)。その意味では、去年に感じた痛みは成長痛として捉えていきたいと思っています。我々としては、去年デビューした選手たちがチームの層に厚みを持たせてくれていると思います。また(シーズンを締めくくる日本選手権の)決勝で負けた悔しさも持ちながら戦ってくれると思います。今季、戦うにあたっては、いいベースができたと思っています。

それを踏まえて質問にお答えしますが、ハイランダーズ戦には我々のベストメンバーで臨みます。スロースターターという点は今後、必要ない。最初から100パーセントで戦います」

――様々なチームでプレーする選手の疲労が心配ですが、休ませ方や起用方法などについてはどう考えますか。

「私の境遇を考えていただき、ありがとうございます。心配しても何も始まらない。我々としては、代表から帰ってきた選手たちに競争をさせるという状況を整えています」

ディーンズ監督は、2011年のワールドカップニュージーランド大会でオーストラリア代表を3位に導くなど国際コーチとして豊富なキャリアを誇る。来日後、日本代表の指揮官候補とされた時期もあった。

現在は、パナソニックの戦力を充実させることでこの国のラグビー界に貢献する構えだ。会見後の単独取材では、自軍の若手選手について語りながら現ジャパンとの関わりについても言及した。

――パナソニックには有力な若手選手が続々と加入しています。なかでも松田力也選手(大学選手権8連覇中の帝京大学で1年目から司令塔を務めた。2016年に初の日本代表入り)、小山大輝選手(大東文化大学でブレイクしたスクラムハーフ。今年5月にはプロ野球公式戦の始球式で120キロ超の直球を投げ話題に)は、入部年度が始まる前のブリスベン・グローバルテンズに出場。ハイランダーズ戦での起用も期待されます。

「いまはシーズンが始まったばかり。これから彼らがどんなパフォーマンスをしてくれるのかを、まずは練習のグラウンドで見極めていこうと思っています。この業界で選手としてやっていくうえでの宿命ですが、確かなことは、何もない。ただ、そのなかで確かなことがあるとすれば、全員がチャンスをもらえるだろうということ。チャンスを得た時にいかにいいプレーをするか。我々コーチ陣の目からすれば、それがすべてだと思います」

――昨年大学生トップリーガーとして活躍した山沢拓也選手は4月、アジアラグビーチャンピオンシップで日本代表デビューを飾りました。どうご覧になっていますか。

「答えは、わかっているでしょう。彼はこれからたくさんのチャレンジを乗り越えなくてはいけないでしょうが、楽しいことがたくさん待っているような選手でもあります。初年度は素晴らしい1年間を過ごしてくれましたが、彼の成長に伴い、彼の所属チームも成長するといった選手だと感じます」

――事前合宿のナショナル・デベロップメントスコッドに、故障歴のある山沢選手をいつ合流させるか。それについては、ディーンズ監督と日本代表のジェイミー・ジョセフヘッドコーチとの間で綿密なコミュニケーションがあったと伺っています。

「いま、日本ラグビーが新しい段階に突入している。日本代表、スーパーラグビー、トップリーグとたくさんの階層があるなか、選手をどうマネジメントしていくか。それが今後の大きな課題になると思います。国内だけでなく国外からの要求、すなわち国際レベルの試合が増えている。そんななか、選手の身体への要求が膨らんできている。だからこそ、今後はコミュニケーションがより重要になります。ジェイミーとも密に連携を取りながらやっていければと思っています。ジェイミー自身も、いま自分に直面している問題(選手のマネジメント)について私(ディーンズ監督)がわかっている、と、いうことをわかっていると思います。私としては、できる限りジェイミーを助けていきたい気持ちがあります。一番大事なのは、選手がいかにいいパフォーマンスができるかです」

――ワールドカップ日本大会の予選プール組み合わせについても伺います。日本代表の入ったプールAにはアイルランド代表、スコットランド代表などが入っています。

「完璧。恐れることは何もない。自分たちのホームで、自分たちのワールドカップで、あのような素晴らしい相手と戦う。新しい歴史を作るための、最高の布石を作ったと思います」

――組み合わせ抽選会のルール上、いずれにせよ2つの強豪国と対戦せねばならない状況下でした。そのため対戦国に優勝経験がないことを「いい組み合わせ」と捉える意見もあります。ただ、そもそもワールドカップの出場国に「簡単な相手」などはいません。

「いままでの日本代表がなぜ準々決勝に進めなかったか。そこにも理由があるわけです。参加しているすべてのチームが同じことを考えて戦いに臨んでいるのですから、決して簡単な話ではないと思います。ただ、十分にやれる力があると思います」

日本ラグビー界にとってベストな相談役の1人が、北関東にいる。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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