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愛子さま、進学せずにお勤めへ 胸に抱く「国民と苦楽を共にする」ご決断

つげのり子放送作家、ノンフィクション作家(テーマ:皇室)
愛子さま(写真:毎日新聞社/アフロ)

1月22日の夕方、愛子さまが大学卒業後に、日本赤十字社の嘱託職員として勤務されるとのニュースが報じられ、正直、驚きを禁じ得なかった。筆者は、大学院にそのまま進学されるものと心から信じていたので、第一報を受けて何かの間違いかと思ってしまった。

しかし、冷静になって考えれば、前例はすでにある。

両陛下の長女という愛子さまと同じ立場であった黒田清子さんも、愛子さまと同じ日本語日本文学科(当時は文学部国文学科)で学び、卒業後は進学せず、山階鳥類研究所の非常勤研究助手として勤められている。

そうした清子さんの背中を追いかけての進路選択というわけではないだろうが、ともすれば大学院への進学は、一般社会でもある種モラトリアムの延長として、ネガティブにみられることもある。

そうした危惧に配慮したというよりも、やはり両陛下をお支えしたいという愛子さまの気持ちが決定打となったのではないだろうか。

◆愛子さまの大学院進学よりも大切なこと

2年前の成年の記者会見で、愛子さまはこう述べられている。

「少しでも両陛下や他の皇族方のお力になれますよう、私のできる限り、精一杯務めさせていただきたいと考えております」

大学院に進学されて、日本の古典文学を今以上に研究されたいと思う気持ちはあったとは思うが、それよりも両陛下を傍で支えることが自らの使命であると、20歳のころから考えていらっしゃったように思う。

古典文学に造詣が深く、文才についても高い評価を得てきた愛子さまは、おそらく最後の最後まで、進学か就職かと悩まれたはずだ。

時系列を考えれば、その決断はすでに前年の末頃には決められていらっしゃったものと拝察するが、年が明けた1月1日に、能登半島を未曾有の大地震が襲ったことから、被災者の人たちに献身に寄り添おうとされる両陛下に接し、愛子さまの決意はゆるぎないものとなったのだろう。

いや、もしかしたら……あの能登の大地震の災害に心を痛めたことがきっかけとなり、ごく最近、お勤めになることを決められたのかもしれない。

なぜなら、前述の記者会見で、こんなことも話されていた。

「私の親しい友人にも、東日本大震災で被災した福島県の復興支援にボランティアとして携わっている友人がおりまして、私自身,災害ボランティアなどのボランティアにも関心を持っております」

愛子さまにとって、大学院への進学よりも、人々の役に立ちたいと思う気持ちを優先されたのだろう。

◆2年前に語られていた愛子さまの進む道

筆者が懇意にしている皇室ジャーナリストやマスコミ関係者らは、おしなべて愛子さまが大学院に進学するものと当然のように思っていたが、今、成年の記者会見を読み直すと、すでにこのときから、心の中に皇室の一員としての責任感が芽生えていることを、実に具体的に明言されていた。

「私は幼い頃から、天皇皇后両陛下や上皇上皇后両陛下を始め、皇室の皆様が,国民に寄り添われる姿や、真摯に御公務に取り組まれるお姿を拝見しながら育ちました。そのような中で、上皇陛下が折に触れておっしゃっていて、天皇陛下にも受け継がれている、皇室は,国民の幸福を常に願い、国民と苦楽を共にしながら務めを果たす、ということが基本であり、最も大切にすべき精神であると、私は認識しております」

「皇室は、国民の幸福を常に願い、国民と苦楽をともにしながら務めを果たす」と、力強く話されていた。ここまで、愛子さまは心の内をはっきりと述べていらっしゃった。

以来、引っ込み思案で人見知りがちな女の子であった愛子さまは、実は、強い意志と責任感を抱く、立派な皇室の一員となろうと努力されて来られたのだ。

そして「国民と苦楽を共にする」こととは何か。愛子さまの答えは、明快だった。

「『国民と苦楽を共にする』ということの一つには、皇室の皆様の御活動を拝見しておりますと、『被災地に心を寄せ続ける』ということであるように思われます」

今、能登の復興には、途方もない時間がかかる。天皇皇后両陛下は避難を余儀なくされている人々が多いことに心を痛め、できることなら今すぐにでもお見舞いに被災地に赴きたいと願っていらっしゃることだろう。

そんな両陛下を、愛子さまは常にお支えしようと、日本赤十字社への就職を決断されたのだ。そして、苦難の渦中にある被災地の人々に心を寄せ、精一杯、活動していかれることだろう。

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放送作家、ノンフィクション作家(テーマ:皇室)

2001年の愛子内親王ご誕生以来、皇室番組に携わり、現在テレビ東京・BSテレ東で放送中の「皇室の窓」で構成を担当。皇室研究をライフワークとしている。日本放送作家協会、日本脚本家連盟、日本メディア学会会員。著書に『天皇家250年の血脈』(KADOKAWA)、『素顔の美智子さま』『素顔の雅子さま』『佳子さまの素顔』(河出書房新社)、『女帝のいた時代』(自由国民社)、構成に『天皇陛下のプロポーズ』(小学館、著者・織田和雄)がある。

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