[訃報]邦楽とジャズの異種格闘技に先鞭をつけた山本邦山さん逝去
尺八奏者で人間国宝の山本邦山さんが亡くなられました。享年76歳。
尺八の歴史を受け継ぎながら、ジャズにかぎらずさまざまな分野とのコラボレーションによって、日本ならではの美学を織り込んだサウンドを全世界に発信した、戦後音楽界のイノヴェイター=革新者のひとりです。
山本邦山の名前は、1960年代から80年代にかけての多くのジャズ・アルバムに記されています。
その代表的なものを1つ挙げれば、1967年に開催されたニューポート・ジャズ・フェスティヴァルに原信夫とシャープス・アンド・フラッツが日本人グループとして初めて出場した際にソリストとして出演し、当時の「ニューヨーク・タイムス」紙にもその独自性を賞賛されました。
♪Take Five- Yamamoto Hozan with Blue Coats Orchestra[Live]
ポール・デスモンドのサックスもクールな雰囲気ですが、そこへさらに“幽玄”という言葉をあてはめたくなる奥行きの出た表現になっています。
♪大吟醸- Summertime
山本邦山とブルース・ギタリストの高谷秀司を中心に結成されたユニットのライヴ映像です。
後続の若手尺八奏者に取材をした際、邦楽の楽器はそもそも西洋音階に対応していないので、クロマチックな表現のためにはかなりの技術がなければ対応できないという苦労話を聞いたことがあります。
しかし、山本邦山の演奏はそれがいとも簡単にできるかのようにしか感じさせず、さらに尺八特有の音程変化やヴィブラートによって西洋楽器には出せない独自の世界観へと誘ってくれます。
ご冥福をお祈りします。