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各国の違いが見える「男性就労・女性家事」への若者の賛否両論感

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 夫婦関係は動物達の方がシンプル。人間は色々と……

意外か当然か・米における「男性就労すべし」の多さ

生物学的な観点では、進化過程でメスが子供を育てオスがそれらを外敵から守り生活の糧(かて)を得る、それぞれの性別上の特性に沿った生活様式が、「男は外で就労」「女は家庭を守り家事に務める」という、社会様式の流れを形成したとされている。一方文明が育まれ社会秩序が成されるのに伴い、その慣習にも変化が生じつつある。それでは諸外国の若者たちは、この価値観について、どのような感想を抱いているのだろうか。2014年6月に内閣府が発表した、日本や諸外国の若年層を対象にした意識調査「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」から、その実情を確認していく。

日本も含めた諸国の若者に、社会の通念意識の一つ「男は外働き」「女は家庭を守る」という考え方に、賛成するか否か、それとも判断留保で「わからない」とするか、3択で選んでもらった結果が次のグラフ。

↑ 男は外で働き、女は家庭を守るべき
↑ 男は外で働き、女は家庭を守るべき

女性の社会進出著しい米英で、「賛成」意見が今回対象となった国の中ではもっとも多い。1/4強が賛意を示している。もっともそれらの国でも6割前後は反対し、若年層全体としては「反対」の意見が大意に近い。またドイツやフランス、スウェーデンなどでは8割前後、特にスウェーデンでは9割近くが反対の意見を表明しており、反発心が強い。

一方日本はといえば賛意は22.3%と米英に次いで多く、他方で反対意見はわずか38.7%。そして何よりも「分からない」とする意見が4割近くに達しており、他の国とは大いに異なる結果が出ている。他の社会通念に関する判断の項目でもいえることだが、日本の若年層はどちらか片方の立場を支持して意見することには消極的な姿勢を見せる傾向がある。

「幼い子供の世話は母親」米英以外に独も賛意者多し

「男は外働き」「女は家庭を守る」とはやや意味が異なるが、似たような話として「子供が小さい時には子供の世話をするのは母親でなければならない」との意見がある。これに関する賛否を同じように尋ねた結果が次のグラフ。

↑ 子供が小さい時は、子供の世話をするのは母親でなければならない
↑ 子供が小さい時は、子供の世話をするのは母親でなければならない

先の問題同様、米英では賛意が多い。さらにドイツもそれに同調しており、むしろ米英よりもわずかだが高値なのが興味深い。ドイツでは日本同様出生率の低さが問題視され、その理由として社会的なシステムの上で「女性は就業か子育てかの二者択一を迫られる状況」「子供は昼前に下校するため、母親のフルタイム就業は事実上困難」「保育サービスが不足」などの事情がある。このような環境が母親に育児へ専念してほしいとの考えにつながり、この回答値を導き出す原因となったのかもしれない。

一方でドイツと似たような状況にある日本だが、賛意は低い部類に入る。そして明確な回答を示さずに態度留保的な「分からない」を選ぶ人が、「外働きと家事」問題と同じように諸外国中最大値を示している。明確な主張意識を持たないのか、持つまでの判断材料が不足しているのか。共働き世帯が漸増する中で実際問題としては否定せざるを得ないものの、理想としては母親の育児が望ましいとの考えに挟まれ、ジレンマ状態に陥っているのか。今件回答だけでは判断がつきにくい。

諸外国と比較した日本の特性

日本の若者の意見の特徴として、保守的ともいえる男女間の家庭観・育児感「外働きは男、家庭の守護は女」「幼子の子育ては母親が望ましい」それぞれに対し、賛否を判断しかねる意見が他国と比べて多い点が目に留まる。複雑化する社会問題にはあまり関与したくない、ぬるま湯的な状況を望む性質が現れたのだろうか。

仮に各国とも「分からない」を除いて賛否のみで再算出すると、日本は「外働きは男、家庭の守護は女」ではトップ、「幼子の子育ては母親が望ましい」は上から5番目、アメリカ・イギリス・ドイツ・韓国に次ぐ順位となる。こちらの順位もまた、ある面で日本の実情を表しているともいえよう。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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