神戸製鋼優勝会見。本当に驚かされたのは会見後。【ラグビー旬な一問一答】
日本最高峰ラグビートップリーグの順位決定トーナメント決勝が12月15日、東京・秩父宮ラグビー場であり、神戸製鋼が2連覇中のサントリーを55-5で下し、15季ぶりに優勝した。
1989年から日本選手権7連覇を達成した神戸製鋼は、今季、ニュージーランド代表112キャップ(テストマッチ=代表戦出場数)を誇るダン・カーター、同代表のアシスタントコーチだったウェイン・スミス総監督を招聘。グラウンド内外において改革を断行していた。
試合後はデイブ・ディロンヘッドコーチと10年目の橋本大輝ゲームキャプテンが会見。喜びの声とチームの成長を語った。
以下、共同会見時の一問一答の一部(編集箇所あり)。
ディロン
「皆さんこんにちは。本当に嬉しいです、全員を誇りに思う。試合に向けた準備も素晴らしかったですし、1個1個の小さいことができた結果。平尾誠二さん、福本正幸ディレクターを代表して勝つことができた。素晴らしかったです」
橋本
「決勝の舞台は人生で2回目だった。どう表現したらいいかわからないですが、感無量です。気持ちで相手を圧倒できたと思いますし、15人だけじゃなく、メンバー外の選手であったり、会社の皆さん、ファンの皆さんの力があってあのようなゲーム内容になったと思います」
――これまでなかなか優勝できなかったなか、チームのどこが変わったか。ウェイン・スミス総監督、ダン・カーター選手の存在も大きかったのか。
橋本
「チームに所属しているという歴史の重みと言いますか、チームに所属しているというプライドが高くなって。それでラグビーにも私生活にもいい面が出て、一体感、自信が出たのかなと思います。歴史を振り返ったことなどが大きかったのかなと思います」
――防御について。
橋本
「サントリーさんどうこうではなく、自分たちのラグビーを完全に遂行できたことがあの点差に表れたと思います。いつも通りやっただけですが、先ほど言った通り、気持ちの部分が前に出ていて。…あの試合ができるなら毎回やれよという話なんですけど、ファイナルという特別な舞台で気迫が出たと思います」
――優勝するために何を変えたか。
ディロン
「橋本さんが言ったことに繋がりますが、自分たちが何を代表して勝つかに立ち返りました。神戸製鋼ラグビー部には約90年の歴史がありますが、会社を含めたチームの歴史を学び、プレーする意味づけを作りました。過去のスチールワーカーと自分たちを繋げ、ひとつとしてきました」
――スミス総監督、カーター選手の貢献について改めて。
ディロン
「スミスは内容をシンプルに伝えてくれる総監督です。その総監督のもとヘッドコーチとして働けるのは誇りに思える。彼は謙虚で、思いやりを持ってチームに接してくれます。コーチ陣を含めチームが大きく成長できた。
カーターは世界でもトップレベルの選手。成し遂げてきたことがたくさんある選手が、さらに成長したいという気持ちを持ってくれていました。それは他の経験豊富な選手も然りでした。その結果、きょうのチームができあがりました」
――いまのスペースをえぐるラグビースタイル。やっていてどう感じるか。
橋本
「先ほどの質問の続きではないですが、いままで『能力はある』と言われてきたチームに、スミス、カーター、ディロンがどうすれば勝てるかの方向性を示してくれたので、このような結果になったと思います。やっていて、楽しいですよね。むっちゃ、しんどいですけど。相手を動かしてラグビーをした。ラグビーって、こんなに面白いのかと思いました。本当にシンプルなラグビーです。スペースにボールを運ぶ。昔の神戸製鋼と同じようなラグビーだと思います」
――表彰式では、2016年にがんで亡くなった平尾さんの遺影を持って壇上へあがりました。
橋本
「平尾さんが亡くなる前に優勝しようと約束していましたので、本当に、えー、もう、これ以上のことはないくらい嬉しかったですし、もうやり切ったのかなという気持ちも出てきました。歴史を作ると言って戦ってきました。歴史を作れて、あとはそれを後輩たちに繋げていければいいなと思いました」
会見終了後、珍しいシーンがあった。質疑が終わるとディロンは立ち上がり、出席していた大勢の記者と次々に握手をして帰ったのだ。その様子を写真に収める者もいて、和やかな雰囲気に包まれていた。