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日本代表ジェイミー・ジョセフヘッドコーチ、「私が知る限り問題起きていない」。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
写真は東京でのRWCTSキャンプの第3クール中。(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

 今秋開幕のワールドカップ日本大会に向け、ラグビー日本代表候補はラグビーワールドカップトレーニングスコッド(RWCTS)キャンプの第6クールを沖縄で実施中だ。遡って3月7日、ジェイミー・ジョセフヘッドコーチが共同取材でチーム作りなどについて語っている。

 この日は、千葉・NTTコミュニケーションズ アークス浦安パークでのRWCTSキャンプの第5クールを打ち上げていた。同クールからは暴力事件を起こしたアマナキ・レレイ・マフィを招き(現在はスーパーラグビーのサンウルブズへ帯同)、昨秋から代表を離れていた元キャプテンの立川理道を練習生として呼んでいた。

 RWCTSキャンプは自身合流前の2月上旬に始まっていて、ジョセフが隊列に加わってから練習の強度が高まっていた。共同取材では話題の選手への評価、グラウンド内外での日本代表のあり方などについて言及している。

 以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

――練習、いかがでしょうか。

「すごくいいですね。ハードなトレーニングで負担が大きくなりけが人が出てしまった点はネガティブですが、それ以外はいい。ここ(沖縄)からラグビーの練習が入ります。これまではハードワークをして、スキル練習もおこないましたが、それらが実戦形式のなかでどう出るか、です。

 最初の3週間はコンディショニングとスキルにフォーカス。ここ最近はセットプレー、アンストラクチャー(セットプレーを介さない状態)からのアタック、ディフェンスを導入。沖縄からはセットプレーからの攻防、そしてゲームです。これで何週間か、ハードトレーニングを重ねてきた。これは私の就任以来初の試みです。各チームでプレーする際はいいパフォーマンスを発揮してくれると思います」

――ジョセフさんがいらしてから、練習の強度は一気に上がった印象です。

「(笑いながら)最初、私が不在だったことも、ある意味、大事だったと思っています。徐々にシーズンへ入っていける環境を作れた。当初からその予定でした。(不在の間)違うリーダーシップを発揮してもらったり、チームを引っ張ってもらったりする意図でした。ここから強度を上げて、ラグビーを導入して、これからはサンウルブズから戻る選手(一部の候補選手は1月からサンウルブズで活動)やここに残る選手、堀川隆延コーチ、長谷川慎コーチらとチームを作っていきます。60名くらいの選手を吟味できます。いいゲームをして層を厚くして、ポジション争いを健全に作り上げていけたらと思います」

――今後、ウルフパック組(3月下旬からニュージーランド遠征。RWCTSキャンプ参加者が中心と見られる)、サンウルブズ組の振り分け。

「自分の中では明確にあります。ただ、サンウルブズはシーズン中とあって、公式にはアナウンスしていません。チーム、選手の各試合のパフォーマンスを検証しています。サンウルブズ、調子いいですよね(折しもニュージーランドのチーフスに勝利)。サンウルブズはスーパーラグビーで勝つこと、同時に、ハイレベルのラグビーを通して(選手を)育成することを目的としています。タイミングを見てサンウルブズを強化する(RWCTS内の有力選手を加える)ということもしますが、誰が行くかは確定していません。サンウルブズはチームの形が固まっていていい流れで来ているので、大幅な入れ替えはないと思います」

――練習生の立川理道選手について。

「怪我人が出たので、立川が入りました。成長し、このチームでプレーするにふさわしいと証明する機会になりました。それは全員に言えます。(機会が与えられて)当たり前ということはないと思うので、そこはしっかりと努力してもらう」

――マフィ選手の復帰へのプロセスは。

「プロセスは単純。自分は選んだだけ。ベストプレーヤーですから。問題はありますが、それは別の人たちの話です。彼はプロの選手であり、セレクションで選べることとなったので選びました(日本ラグビー協会は、同選手の日本代表復帰に向けては司法判断の推移を見守るとしてきたが、3月4日、「再三に渡り裁判期日が延期されたこと、更には今後の手続の日程が確定しておらず、短期間のうちに終結する見込みが立たないこともあり、本人と面談をおこない、十分な反省が伺えることから、3月4日からのワールドカップトレーニングスコッド合宿に招集することを決めました」と声明を出した。殴った相手であるロペティ・ティマニ(フランスのラ・ロシェルに在籍)は和解に応じていない)」

――選手の自主性について。

「自主性を持って取り組めています。ヘッドコーチ不在のなか、選手たちもやりやすく感じていたと思います。コーチ陣としては、そういうなかで誰がどんなリーダーシップを取れるのかを見極めるいい機会でした」

――ふたつのチーム間での競争について。

「サンウルブズの山下(裕史)、坂手(淳史)、松橋(周平・第6クールからRWCTSキャンプへ帯同)はスーパーラグビーでいいパフォーマンスをしていました。昨年と比べると、『いま、こんなに成長した』ということが顕著。評価されるべきは、パフォーマンス。山下は、具と比べると成熟した選手です。30代であるにもかかわらず、あのようなパフォーマンスができるのは驚き(スクラム、タックルで光った)。パフォーマンスが上がると競争力が高まる。このプログラムがうまくいっているかどうかは、そこ(各選手の働き)で測れると思います」

――今後、トレーニングでは具体的にどんなことをしていくか。

「大幅な変更はしていないが細かいところで採り入れています。魔法のレシピ、特効薬はない。ティア1(強豪国)と対戦するうえではあと40パーセントの改善ポイントがある。それはスペシャルプレーで挽回するのではなく、色々な細かいことを揃えて、40パーセントの部分を埋める。やることに一貫性をもたないといけない。世界の強豪に対しては、いいプレーが一貫してできていても5分くらい落ちると、そこで、勝敗が分かれる」

――グラウンド外での規律強化、チーム文化の形成について考えていることはありますか。

「(いまのままで)スバラシイデス。私が知る限りこのチームで問題は起きていない。選手、コーチとも意思統一できています。代表選手としてどう振舞うべきか、どう見られているかも自覚している。ホームでのワールドカップがある点も。我々はいい選手、いいコーチいい人である必要がある。誰とでも気取らずに接しやすいうえ、謙虚でなくてはいけない。そこを阻害する人間がいれば、チームには入れません。ここまで2年半、その面ではスバラシイデス」

 現在進行中の計画について前向きに総括するジョセフ。最後の問いにも、「このチームでは問題は起きていない」を強調した。今後、セレクションが進むチームをどう見つめるか。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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