200億円投手の穴を埋めているマエケン
ロサンゼルス・ドジャースのマエケンこと前田健太(28歳)が、9月5日(日本時間6日)にロサンゼルスのドジャー・スタジアムで行われたアリゾナ・ダイヤモンドバックス戦に先発して、今季14勝目(8敗)を挙げた。
この試合で前田と投げ合ったのは、メジャー最高給となる年俸3400万ドル(約34億円)のザック・グレインキー(32歳)。昨年まではドジャースに所属していたが、フリーエージェント権を手にした昨オフに6年総額2億650万ドル(約207億円)の超大型契約を提示されて、ドジャースと同地区のダイヤモンドバックスへ移籍した。
昨季はドジャースで19勝3敗、防御率(1.66)、勝率(.864)、WHIP(1イニング当たりに許した安打と四球の合計数、0.844)の三部門ではリーグ1位と堂々たる成績を残したグレインキーの後釜を託されたのがマエケンだった。
とは言え、ドジャースが前田に提示した契約は8年総額2500万ドル(約25億円)。契約期間はグレインキーより2年も長いのに、金額は1/8以下でしかない。最大1億620万ドルの出来高が付随していたが、満額を手にしてもグレインキーの半分程度だ。
誰もがマエケンにグレインキーの代わりは務まらないと思っていたが、予想に反してここまでグレインキーを超える働きをみせている。
抜群のコスト・パフォーマンス
5日の試合を終えた時点での2人の今季成績を比べてみると、グレインキーが23先発で12勝5敗、防御率4.54、WHIP1.265なのに対し、前田は27先発で14勝8敗、防御率3.29、WHIP1.078と全ての部門で大きく上回っている。
巨額の大金に釣られてドジャースを去ったグレインキーがドジャー・スタジアムのマウンドに立つと、ドジャー・スタジアムを埋め尽くしたドジャース・ファンは大ブーイングで迎え入れたが、スタンドのファンの表情からは余裕が感じられた。その理由はドジャースが貯金17で地区首位を走る一方で、ダイヤモンドバックスは借金21の地区4位と低迷しており、グレインキーが今ひとつパッとしないのに、前田はチームトップの勝ち星を記録しているからに他ならない。
昨季までのドジャースは、サイ・ヤング賞に3度も輝いている現役最強左腕のクレイトン・カーショウ(28歳、年俸3200万ドル、約32億円)とグレインキーと言うメジャーを代表する左右の二枚看板を誇っていた。今季からドジャースの指揮を執るデーブ・ロバーツ監督は「カーショウに並び、チーム屈指の安定した投手」と前田を評しており、グレインキーに匹敵する存在だと認めていることが伺える。
年俸3200万ドルのカーショウ、3400万ドルのグレインキーを超える働きをしているマエケンの基本給は僅か313万ドル、ここまで獲得した出来高を加えても853万ドルと抜群のコスト・パフォーマンスを誇る。
実は8月下旬にはドジャースとダイヤモンドバックスの首脳陣がグレインキーのトレードを話し合っていたが、その話はすぐに流れた。マエケンがグレインキーを上回る活躍を見せているので、高年俸を引き受けてまでもグレインキーを補強する必要性がないとドジャースは判断した形だ。
悲願のワールドシリーズ出場へのキーマン
ペナントレースは残り1ヶ月を切っており、ドジャースがプレーオフ出場する可能性は高い。
ドジャースはカーショウ、グレインキーの二枚看板を揃えた3年間で地区3連覇を飾ったが、プレーオフでは2013年のリーグ優勝決定シリーズ進出が最高で、過去2年間はディビジョン・シリーズで敗退している。
前田が1988年以来となるワールドシリーズへドジャースを連れて行けられれば、グレインキーの穴を埋めるどころか、「200億円投手を超えた」と評価されるはずだ。