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藤本博史監督の“腹の中”を探る――2022年型ホークスの「打順構想」とは

田尻耕太郎スポーツライター
球場横に鎮座する藤本バルーン(筆者撮影)

 2年ぶりに有観客で行われているプロ野球春季キャンプ。12球団屈指の動員数を誇る福岡ソフトバンクホークスの宮崎キャンプには初の週末となった5日(土)が7,100人、6日(日)は7,900人が来場した。

2年ぶりの有観客キャンプ

 コロナ以前に比べれば、やや寂しい数字ではあるものの、やはり昨年と比べれば活気が段違いだ。王貞治会長兼特別チームアドバイザーは「ファンの人の声も聞こえました。期待も伝わる。選手たちもしんどいところでその声を聞けば、もうひと踏ん張りできる」と喜んでいた。

王会長も張り切っている。写真は2日の練習中、野手陣に檄を飛ばしているところ(筆者撮影)
王会長も張り切っている。写真は2日の練習中、野手陣に檄を飛ばしているところ(筆者撮影)

 これだけファンが集まるのも、ホークスのキャンプ地は「野球を見る」以外の楽しみが充実しているからだ。

 今春キャンプでは“新名物”が登場した。藤本バルーンだ。その名のとおり藤本監督をモデルにした遊具で、自身も「可愛いじゃないですか。ちょっと可愛すぎるかな。でも、怖かったら子供が中に入ってくれないでしょ。PayPayドームにも持って帰ってもらいたいですね」と語って記者たちを笑わせた。

 ドーム状に膨らませた“藤本監督の内部”に入って楽しく遊べる代物。つまり、藤本監督の腹の中を探っていくというわけだ。

 筆者は子どもじゃないのでバルーンの中には入れないが、“質問”という手段でそれを叶えることはできる。

情報が少ない打順構想

 キャンプ開始前から「テーマは競争です」と繰り返し、A組には多くの若鷹を抜てきするなど、新監督としての藤本カラーが随所に見えているが、現時点であまりはっきりしていないのが打順構想だ。

 まだ数少ない情報の中で、一部で報じられていたのが「1番・中村晃」だった。

 藤本監督は「1番はとにかく出塁率の高い選手が理想」と明言している。中村晃は2016年には出塁率.416を記録。昨季も打率は.245と振るわなかったが、出塁率は.344をマークしており、「打率プラス1割」程度の数字を見込める打者だ。

 しかし、近年の中村晃は膝の状態が思わしくなく、今年33歳を迎えることを考えても機動力に大きな期待をかけることは出来ない。筆者は正直「1番・中村晃」構想にはクエスチョンを感じていた。

理想の1番は中村晃ではなく・・・

フリー打撃を行う三森内野手。藤本監督は6日の練習後「今日の練習のMVPやったね」と評価(筆者撮影)
フリー打撃を行う三森内野手。藤本監督は6日の練習後「今日の練習のMVPやったね」と評価(筆者撮影)

 そんな中、藤本監督へ打順について質問する機会に恵まれた。6日の練習後の囲み取材。藤本監督が1番打者待望で名前を挙げたのは、昨年ブレイクした今季5年目の内野手だった。

「1番を三森が打ってくれれば打順が組みやすくなるんです。本当は(中村)晃が6番を打つのがありがたい。一番チャンスで回ってくる打順なので。3番柳田、4番外国人、5番栗原、6番中村晃、これが僕の理想です」

 クリーンナップトリオの構想にまで話は及んだ。「ただ、三森は去年の数字では無理。1番打者は出塁率が3割中盤から後半はないと」。三森は昨季、86試合に出場して打率.249、出塁率.272の成績だった。

「1番打者の出塁率が悪ければ、考えないといけない。ただ、晃が1番に入ると6番打者がパッと出てこない。たとえばリチャードが三塁(のレギュラー)を獲っても最初は7、8番でしょう。マッチ(松田)ならば6番でもいい。誰がレギュラーを獲るかでパターンが違ってくる。まだレギュラーは決まっていないので」

 工藤公康前監督はチームの得点源として7番打者をカギに挙げることが多かったが、藤本監督の目指す野球においては1番打者と6番打者が重視されそうだ。

 7日からはシート打撃が練習メニューに加わる。レギュラーや開幕一軍の「枠」を争うサバイバルレースが本格化していく中で、中村晃と三森の2人には特に注目をした方がよさそうだ。

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。「Number web」でのコラム連載のほかデイリースポーツ新聞社特約記者も務める。2024年、46歳でホークス取材歴23年に。 また、毎年1月には数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。

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