名字を変えたくないし、各種手続きは面倒臭い。だから事実婚~40歳からの婚活入門(26)~
40代、独身。孤独を感じることもあるが、周囲を見渡してみると自分と同世代の独身者もいるし、子育てを終えて次の生活を模索し始めた人もいる。肩を寄せ合えるパートナーを探すことが広義の婚活だとしたら、何歳からだって遅くはない。本シリーズでは、現代に生きる独身の40代の実生活と心情を聞き取り、筆者の考えを添える。同じ40代として、残りの人生を充実したものにするために。
***会社員、浜崎順子さん(仮名、42歳)の話***
父の遺言は「お母さんを頼む」。ずっと母の面倒をみてきた
1年前の今日、母親が他界しました。命日に取材を受けるのは何かの縁だと思っています。今日はこれからお墓参りに行くところです。
母はもともと体が弱くて、一人娘の私がずっと面倒をみていました。父は中学校のときに病気で亡くなっています。遺言は「お母さんを頼むで」でした。
内弁慶な母は他人の世話になることを嫌がったので、ヘルパーさんにお願いできるようになったのは自力で歩けなくなってからです。私に面倒をみてもらいたいのが本音のようでした。私が結婚することには反対しませんでしたが、子どもを産むことは止められました。両親ともに病弱なので体の弱い子が生まれるという理由です。「血は怖いで~」と言われて、私も子どもを産む気持ちはなくなりました。
こんな状況だったので、恋愛はしても結婚には至らないことばかりでした。特に長男や一人っ子の男性とはうまくいきません。お互いに家を離れられないのが理由で別れたこともあります。
母が亡くなってからは、実家での初めての一人暮らしを満喫しています。私は片付けができないので、今の家に引っ越して来たときのダンボールがそのままになったりしていますが……。
婚活アプリで知り合った4歳上の男性。最初のデートで交際開始
一人暮らしは楽しいけれど、夜になるとしゃべり相手がいないのが寂しいです。片付けが終わったら、いま付き合っている彼と一緒に住む予定です。「引っ越し予定日までに片付いていなかったら別れる!」なんて脅されているので、毎週のように収納グッズを買いに行っています。
彼との出会いは婚活アプリです。1年半前に知り合いました。私のプロフィールに「いいね」を最初に押してくれたのが彼です。「いつ会う?」と聞かれて2週間後に会うことになり、初対面で「どうすんねん」と交際の意志を聞かれました。急だったので焦りましたが、悪い人じゃないと思ったので「じゃあ、付き合ってみる?」と返事して、いまに至っています。
私が働きながら母を看病していることを親身になって聞いてくれたり、母が亡くなったときには支えになってくれたり。彼がいなかったら、もっとガックリ来ていたはずです。感謝しています。
彼は自営業で仕事が不規則なので、会うのは月に2回ほどです。LINEでは毎日やりとりをしています。「おはよう」から1日を始めるのが習慣になりました。
一緒に住み始めても法律上の結婚はしません。お互いに名字を変えたくないし、役所の手続きがあまりに面倒臭いからです。私は両親が亡くなったときに年金やら水道光熱費やらの名義変更をしたり、貯金の解約のために戸籍謄本を取り寄せたりしました。とにかく面倒臭かったです。親のためにならやりましたが、自分のためにはやれません。こんな私には事実婚がちょうどいいと思っています。
***筆者より浜崎さんへ***
「いい人」は出会うものではなく作るもの。婚活アプリの正しい使い方
僕は離別や死別を含めた独身者への取材をたくさんしています。そのせいなのか、最近は「結婚している状態が当たり前ではない時代がすぐそこまで来ている」と感じることが多いのです。法律婚がなくなるのではなく、人生の選択肢の一つに過ぎなくなるという意味です。
でも、人間らしく生きるには「人とのつながり」は不可欠ですよね。浜崎さんが「一人暮らしは気楽だけど夜になると話し相手が欲しくなる」と言ったのは自然な感覚だと思います。片づけは彼にも手伝ってもらいましょう。共同生活をしやすい清潔な環境を作れば、浜崎さん自身もより健康的に暮らせるはずです。法律婚にするか事実婚にするかはどちらでもいいと思います。
個人的には、浜崎さんの婚活アプリの使い方は正しいと感じました。「もっといい人がいるのではないか」などとダラダラと使い続けると、結局のところ「いい人」と結ばれなくなるからです。「いいね」を押してくれた人にご縁と感謝を感じ、そこから関係性を作っていく――。とても正しい婚活ですね。
世の中には自分と同じ程度の「いい人」はたくさんいます。3人に1人ぐらいとは一緒に住める、ぐらいの感覚でいたほうがいいのです。そして、折り合いをつけながら助け合っていけば信頼が生まれ、関係性はどんどん良くなっていきます。「いい人」は、出会うものではなく作るものなのでしょう。