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「空気を読まないもの勝ち」という風潮はどうにかならないものか

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 空気を読まない行為自身は良くある話、だが…

空気を読むこと、読まないこと

空気を読まないもの勝ちという風潮はどうにかならないのだろうか。先日の「アフタヌーンの印刷部数が3か月で半分以下に」と伝えられていた件について」を書き記している最中、そして終えた後にいただいた色々な意見を見聞きしているうちに考えるようになった。

「空気を読む/読まない」における「空気」とは、その場の状況、社会的な雰囲気、ルール、しきたり、暗黙の了解的なものを指し、一概に特定の物質や要件として断定しにくい、概念的なもの。そしてその「空気」は、地球上に存在する、主に窒素と酸素で構成される、本物の「空気」同様、目に見えないもので、どこにでもある存在。皆が共通所有、認識している不文律のようなもの。

それを無視すること、つまり「空気を読まない」(抜け駆けをする、という表現もできるだろう)で益を得るものが出れば、大抵においては多くの「空気を読んでいる人」が不利益を被ることになる。そしてそれがたしなめられず是認されれば、その人によって繰り返され、真似をする人が増えていく。空気を読まない人の益は増えるが、その分不利益を受ける人の数は相乗的に増加する。

状況の不安定度が大きくなると、大抵はその不安定な状態を是正するため、新たな成文律がなされる。要は「文章に書き記してキッチリと規制しないと分からないのだね、よろしいならば法的拘束力のある形で規制しよう」ということ(現実には社会全体では無く、ごく一部の人しか「分からない」(さらには「分からないふりをしている」のだが))。結果として皆が窮屈さを覚え、閉塞感は高まり、不利益を受ける。下手をすればこれの繰り返しで、世の中はますます窮屈になり、「空気を読まない」ごく一部の人のみが便益を受けることになってしまう。

「空気を読む」行為は社会を安定化させる知恵

「空気を読む」という行為は、ジェレミ・ベンサムの功利主義ではないが「最大多数個人の最大幸福」を得るため、自然発生化した仕組み、皆の暗黙の了解に他ならない。「空気を読まない」行為は、中長期的に見れば皆の損失につながり、社会全体としてもマイナスになるということを、皆が経験則として知っている(それこそが「空気を読む」なのだが。あるいは「行間を読む」の方が近いかもしれない)。だからこそ、空気を読むことが求められ、実践される。

安易な例えになるが、子供が集まるイベントで、複数種類のお菓子がバイキングスタイルで用意される場があったとする。量的には一人1個、良くても2個ぐらいしか量が無いのは誰の目にも明らかだが、一人二人が自分の皿に10個も20個も盛ってしまうと、皆が皆同じようなことを行い、お菓子をもらえない子供が出てきてしまう。会場は我先にとお皿にお菓子をのせる子供で混乱し、もらえなかった子供は泣き出してしまうだろう。

このようなことが起きると、主催者側はバイキングスタイルを止め、係が一人に一つずつ配るスタイルに代えてしまう。子供達はお菓子を食いはぐれることは無くなるが、自分の好きな種類のお菓子を手に取る機会は逸してしまう。あるいはお菓子の配布自体が無くなるかもしれない。「無理な例えだ」と批評する人もいるかもしれないが、当方はあるイベントでこれに近い実体験をしており、決して笑いごと、冗談話で済まされるようなものではない。

閉塞感打破のカギとなることもあるが…

「空気を読まない」行為。中には社会的停滞感・閉塞感を打破するための確信的な手法となることもある。しかしそれを免罪符にして、「空気を読まないことは素晴らしい」という風潮、「空気」そのものを否定する雰囲気の形成、「空気を読まない」人達の益が継続するような状態は、やはりおかしい。「空気読め」という諌めの言葉がストッパーに成り得ないのなら、「常識を知れよ」「非常識だな」「倫理観無いの?」「道徳の教科書貸そうか」「魂を汚して生きていくのですね」などのような、もっと分かりやすい表現で指摘して差し上げるべきなのだろうか。

端的に表現すれば、正直者が馬鹿を見る社会風潮は、皆を正直成らざるものにしかねない。それは結局のところ、皆を不幸にしてしまうだけだ。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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