「世界人類発祥の天理教」聖地と「日本国発祥の地」橿原神宮が同居! 奈良盆地の巡礼は近鉄橿原線が便利
奈良県の奈良盆地の南北を縦断する近鉄橿原線という路線がある。この路線は、奈良市の大和西大寺駅と橿原市の橿原神宮前を結ぶ23.8kmの路線で、途中の平端駅からは天理駅までの4.5kmを結ぶ近鉄天理線が分岐している。大和西大寺駅からは、橿原神宮行の急行・普通列車が終日運行されているほか、天理線に直通する天理行の急行・普通列車も朝夕に運行されている。
筆者が、大和西大寺駅から天理線に直通する普通列車に乗車し天理を訪問したことは2024年8月10日付記事(「ようこそおかえり!」の異色の宗教都市 世界人類発祥の地という「奈良県天理市」に行ってみた!)で触れたとおりだが、先日、天理市からの帰りに平端駅で橿原神宮駅から大和西大寺駅に向かう電車に乗り換えた際に、この路線は「世界人類発祥の地」である天理市の「ぢば」と、初代神武天皇が即位した橿原市の「橿原神宮」の双方に訪問可能な壮大な路線であることに気が付いた。
「世界人類発祥の地」とされる奈良県天理市の聖地「ぢば」
奈良県天理市は、天理教の教会本部や神殿が置かれている宗教都市で、市の名称も天理教にちなんでいる。天理教は江戸時代後期の1838年に中山みきを開祖とした日本の新宗教で、「泥の海で混沌とした世界を退屈だと思った創造主である親神様(おやがみさま)が、人間を作って、その陽気暮らしをする様子を見てともに楽しもうと思いついた」ことがきっかけで「親神様が人類を創造した」と教えられている。そして、その世界人類の創造の地が奈良県天理市の「ぢば」と呼ばれる場所で、その場所には天理教の神殿が建てられており、この神殿に参拝することを「人類の故郷に帰る」という意味も含めて「おぢばがえり」と呼ばれている。
この世界人類創造の地とされる「ぢば」を取り囲むように建設された神殿は24時間開放されており、非信者でも参拝することが可能となっている。近鉄橿原線の大和西大寺駅から天理駅までは直通の普通列車がある時間帯であれば20分程度。JR大阪環状線と近鉄奈良線の接続駅である大阪市内の鶴橋駅からも1時間程度でアクセスすることができる。
「日本国の始まりの地」初代神武天皇が即位した「橿原神宮」
一方で、近鉄橿原線の終点のある奈良県橿原市は、初代天皇である神武天皇が即位したと「日本書記」に記された地だ。神武天皇が即位したのは紀元前660年の2月11日(新暦)とされており、この神武天皇の即位をもって日本国が建国されたことから、2月11日は建国記念日として国民の祝日にも設定されている。橿原神宮は、その初代神武天皇の皇居があったと推定される場所に建立されたのが橿原神宮で近鉄橿原線の終点は橿原神宮前駅となっている。橿原神宮前駅までは、大和西大寺駅からは急行で、30分程度でアクセスが可能だ。天理駅から橿原神宮駅に向かう場合は、途中の平端駅で乗り換えが必要で所要時間は40分程度となる。
筆者は、天理市からの帰路にも近鉄天理線を利用し、平端駅では橿原神宮発の大和西大寺行に乗り換えた。その際に、近鉄電車の車内には、日本国の建国の地である「橿原神宮」の紙袋をもった観光客と、世界人類発祥の地である「ぢば」の参拝帰りの乗客が混乗することとなり、直線距離で20km以内の範囲に「日本国建国の地」と「世界人類発祥の地」の双方を抱える奈良盆地の懐の深さに感銘を受けたのであった。
(了)