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中性子星内部にしかない「究極の物質」が本当にヤバイ

どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。

今回は「中性子星の内部にしかない物質がヤバすぎる」というテーマで動画をお送りしていきます。

中性子星とは?

では中性子星とはどんな天体で、どのようにして成り立っているのかについておさらいします。

太陽のような恒星という天体は、内側に落ち込んでいく自身の重力と、核融合によって外側に膨張していこうとする力が釣り合う事で、その球状の形状を維持しています。

太陽の8-30倍程度重い大質量の恒星が一生を終える際、核融合が急激に弱まり、自身の重力に反発する力が失われることによって、星の核が急激に圧縮されます。

その結果、中性子星という超高密度の天体ができます。

中性子星は直径20km程度と天体としては非常に小さいにも関わらず、その質量は地球の50万倍にもなります!

仮に中性子星の一部を切り取ることができたら、1立方センチメートルあたり実に数億トン、数百m級の山と同等の質量を持ちます!

そして、太陽の30倍以上の質量を持っている超大質量の恒星だと、一生の最期に自身の核が圧縮されて残る中性子星すらも押しつぶし、遂には重力への対抗手段を失い、永遠に1点に向けて圧縮が続くブラックホールになります。

ブラックホールの内部は現代の物理学では理解できない、いわば「あの世」の世界です。

中性子星こそがこの世の限界スレスレの極限環境を持った天体であり、一般的にブラックホールに最も近い天体であると言えます。

そんな極限の天体である中性子星の中でも最も高密度な中性子星の内部こそ、本当にブラックホールに最も近い、真の極限状態となります。

そんな中性子星の内部には、通常の世界には存在しない物質が存在する可能性があるそうです!

通常の物質を作る素粒子

では中性子星の内部以外の宇宙を占める、通常の物質というのはどんなものなのでしょうか?

物質を拡大し続けると、原子という構造が見えてきます。

さらに拡大すると、その中心に陽子と中性子という2つの粒子から成る原子核という構造が見えてきます。

それ以上に分解できない最小単位の粒子は「素粒子」と呼びますが、原子の中にある陽子と中性子は素粒子ではありません。

実は陽子も中性子も、クォークという素粒子が3つ集まって出来ていることが知られています!

素粒子は大きく分けて「物質を構成する素粒子」「力を伝える素粒子」「質量を与える素粒子」の3つに分類されますが、クォークはそのうち物質を構成する素粒子に分類されます。

そんなクォークには全部で6種類のクォークがあります。

その中でも電荷が(+2/3)のアップ型クォークと、電荷が(-1/3)のダウン型クォークの2タイプに分類され、それぞれのタイプに1~3までの世代があります。

同じタイプのクォーク内では、世代が大きいほど質量が大きく不安定で、短い期間で崩壊し、自身より世代が小さく安定したクォークに変化してしまいます。

世代の大きいクォークは存在自体が不安定なので、この宇宙に存在するほぼ全ての物質は第一世代のアップクォークとダウンクォークのみから形成されています!

例えば陽子は電荷が(+2/3)のアップクォークが2つ、(-1/3)のダウンクォークが1つの計3つのクォークで構成され、合計で(+3/3)=(+1)の電荷を持っています。

そして中性子は電荷が(+2/3)のアップクォークが1つ、(-1/3)のダウンクォークが2つの計3つのクォークで構成され、合計で電荷は0となっています。

このようにアップクォークとダウンクォーク以外が出てくることはありません。

そして先述のアップクォークとダウンクォークのみでできた通常の物質とは異なり、それ等の次に軽いダウン型クォーク第2世代の「ストレンジクォーク」を含む物質が、現在の宇宙の中では中性子星の内部に存在する可能性があるそうです!

※内部構造はあくまで一説です
※内部構造はあくまで一説です

中性子星はその名の通り中性子が主な構成要素ですが、その内部のような超高圧で超高温の環境では、物質がどのように振る舞うのかを知るのが非常に難しく、正確な内部構造はまだわかっていません。

そんな前提のもと、この世の極限状態ともいえる中性子星の中心部付近にだけ存在する可能性があるとされる、ストレンジクォークを含む究極の物質を紹介します。

ハイペロン

クォークが3個結びついてできる陽子や中性子などの粒子は、「バリオン」と呼びます。

陽子や中性子といった通常の物質を構成するバリオンは、先述の通りアップクォークとダウンクォークのみが3つ組み合わさってできています。

一方、内部にある3つのクォークのうち1つでもストレンジクォークを含み、それ以外のクォークはアップクォークまたはダウンクォークで構成されているバリオンは、様々なパターンがありますが、まとめて「ハイペロン」と呼ばれます。

本来ストレンジクォークは不安定ですぐ崩壊してしまうため、ハイペロンは自然で安定して存在することはできません。

ですが中性子星の内部のような極限環境では、なんと陽子や中性子のようなアップとダウンのみの状態より、ストレンジを含むハイペロンの状態の方がむしろ安定する可能性があるそうです!

これは量子力学の不確定性原理が関係しています。

不確定性原理では量子の位置と運動量がどちらも同時に固定されることはありません。

中性子星の内部のように極限の高圧環境では、量子の位置が高い精度で固定される代わりに、運動エネルギーが極めて高くなり、そのエネルギーによって一部の中性子がハイペロンに変化した方が安定するようです。

そして陽子や中性子だけでなく、ハイペロンも含んだ原子核は、「ハイパー核」なんていうかっこいい名前で呼ばれていたりします。

現在でも粒子加速器による実験でハイパー核を作り、その性質が研究されています。

ストレンジレット

中性子星内のハイペロンがある場所よりさらに深い、中性子星の中心部付近には、ハイペロンよりもずっとヤバイ「ストレンジレット」という物質が存在する可能性があるそうです。

ストレンジレットは、陽子や中性子、そしてハイペロンのような、クォークが3つ合わさってできたバリオンの構造すらも超高圧によって維持できなくなり、クォークが自由に動き回る状態にある物質です。

アップクォーク、ダウンクォーク、ストレンジクォークがほぼ同数集まって構成されるストレンジレットは、なんと通常の陽子や中性子よりも安定している可能性があるそうです!

そのため一度中性子星の中心部領域の極限環境により、高いエネルギー障壁を超え、ハイペロンの状態も抜けてストレンジレットになった物質は、中性子星内部以外の場所でも安定して存在できる可能性があります。

もしこの仮説が正しければ、中性子星内部にあるストレンジレットが中性子星同士の衝突やブラックホールによる破壊によって外部に漏れ、宇宙空間にも存在している可能性があるのです。

さらにストレンジレットは、より大きいほど安定しているという可能性もあるようです。

その場合、触れた通常の物質をどんどんストレンジレットに変化させ、より大きいストレンジレットになろうとすると考えられます。

そんな性質を持ったストレンジレットが宇宙を旅し、偶然にも地球にたどり着いた瞬間、地球上の全物質がストレンジ物質の塊に変化してしまうことになります!

さらにこのストレンジ物質は、人間が存在を知覚できる全ての通常の物質の、5-6倍もの質量分もこの宇宙に存在すると考えられている未知の物質「ダークマター」の正体の候補の一つでもあります。

仮にダークマターの正体がストレンジ物質であれば、この宇宙にまさに大量のストレンジ物質が漂っているということになります。

当然私たちはその存在に気付くことはできません。

そしてその一部でも地球にやってくれば、気付く間もなく人類が消滅してしまうかもしれません。

地球や太陽が46億年間も無事に存在し続けていることや、これまでの観測で宇宙のどこでもストレンジ物質への変化のような現象を観測できてないことから可能性は低いですが、仮に本当に起こるとしたら恐ろしすぎる現象です。

繰り返しにはなりますが、中性子星の内部構造については現在でもわかっていないことが多く、今回紹介した物質も存在する可能性があるという段階に過ぎません。

中性子星同士が衝突したり、中性子星がブラックホールに破壊されたりすることで、中性子星の内部構造が外部に漏れ出る可能性があります。

その瞬間を電磁波や重力波で観測することができれば、人類は中性子星の内部をさらに知ることができそうです。

この世の極限環境でどんな物質が存在しているのか、今後の新発見が楽しみです!

https://www.jps.or.jp/books/gakkaishi/2015/12/70-12researches1.pdf

http://kakudan.rcnp.osaka-u.ac.jp/jp/overview/world/NeutronStar.html

http://kakudan.rcnp.osaka-u.ac.jp/jp/overview/world/QGP.html

サムネイルクレジット:Maciej Rebisz

「宇宙ヤバイch」というYouTubeチャンネルで、宇宙分野の最新ニュースや雑学などを発信しているYouTuberです。好きな天体は海王星です。

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