最低賃金1000円でも低すぎ!労組、野党各党議員らが引き上げ求める
この夏の参院選の争点として、重要テーマの一つであるのは、ますます広がる経済格差・貧困問題への対応だ。今週17日、労働組合や弁護士などらが「最低賃金をいますぐどこでも時給1000円に!時給1500円をめざす院内集会」と題し、最低賃金の大幅引き上げをめざす院内集会を行った。集会には野党各党の議員らも参加。経済政策でも「野党共闘」が進む可能性を垣間見せた。
〇日本の最低賃金は先進諸外国に比べて低い!
集会では、メインの講演として、日弁連貧困問題対策本部のメンバーの猪股正弁護士が熱弁をふるった。猪股弁護士は、先進諸外国での最低賃金は軒並み1000円を超えており、これらに比して日本の最低賃金「798円」(全国加重平均)が低い現状を報告。また「日本の最低賃金の水準の低さについて国連の社会規約委員会が『最低生活費を下回っている』として改善を勧告している」とも指摘した。
「最低賃金1000円になったとしても、フルタイムでの年収で、なおもワーキングプアとされる年収200万円程度であり、人々が安心して生活できる水準ではない」と語り、イギリスや米国が最低賃金を1500円水準としたことをあげ、「ILO(国際労働機関)は、少なくとも親ひとり子ひとりが食べていける水準をめざすべきとしている」と、最低賃金を1000円にとどまらず、1500円まで引き上げることが望ましいと語った。
最低賃金をめぐっては、引き上げると失業者が増えるのではとの懸念が少なくないが、猪股弁護士は米国連邦労働省のQ&Aページ「最低賃金伝説バスターズ」を紹介。それによると「64の研究調査で雇用への影響はないとされている」「7人のノーベル経済学賞受賞者を含む600人以上のエコノミストが2016年までに10.10ドルへの最低賃金の引き上げを支持する書面に署名した」という。
〇安倍政権の「最低賃金引き上げ」にダメ出し
最低賃金をめぐっては、安倍政権は昨年11月、「毎年3%上昇させ、2020年代半ばに1000円を目標とする」との方針を示している。しかし、集会では、「不十分」「そんなに待てない」との意見が相次いだ。山本太郎参議院議員は、「安倍首相は2020年代に1000円にあげるってドヤ顔してますけど、ふざけないで下さいよ。1000円ってワーキングプアじゃないですか。何を言ってるんだと。これが1500円になってやっと人間らしい生活がギリギリ始められるかどうかのスタートだと思うんですよ」と批判。労働組合「首都圏青年ユニオン」の神部紅委員長も「2020年代なんて、そんな先まで待てない。今すぐ最低賃金を大幅に引き上げるべきです」と訴えた。
〇経済政策でも野党共闘!?
集会では、野党各党の国会議員からの支持表明も相次いだ。民進党の初鹿明博衆議院議員は、「自分も事業をやっているので、1500円というと、ちょっと大変かな、という気はするのですが、頑張って引き上げるべきですね」「今、最低賃金は各都道府県でバラバラですが、地域の商店街が消え、全国チェーン店となる中で物価は同じになっている。それならば最低賃金も全国で一律にすべきです」と語った。また、共産党の小池晃参議院議員は、「最低賃金1500円だとしても、年収にすれば280万円程度。過大な要求ではありません」「最低賃金の引き上げは個人消費の増加につながり、経済の好循環となります」とアピール。社民党からは、吉田忠智参議院議員と福島みずほ参議院議員が参加。それぞれ、「中小企業支援も併せて、最低賃金引き上げを目指したい」(吉田議員)、「(米国大統領選で民主党としての候補を目指す)サンダース氏に見習い、『生きさせろ』という政治をしていきたい」(福島議員)と訴えた。その後、集まった議員らでがっちり握手。経済政策でも野党共闘が進みうることを印象付けた。また、会場には、増山れな氏(社民・東京選挙区予定候補者)も一参加者として来ており、「猪股弁護士や皆さんのお話はとても勉強になりました。自分の政策に反映したい」と語った。
〇問われるアベノミクス、急がれる対策
集会では、厳しい待遇に苦しむ当事者たちも声をあげた。介護職の女性は「命を預かるという責任の重さに比べ、月の手取り15万円と給料が低すぎる。正直、いつも自分の生活の心配ばかりしている」と訴えた。また、長野県でコンビニ大手「ファミリーマート」の店員をしている男性は「給料はほぼ最低賃金な上、ワンオペ(店舗を一人で運営すること)のシフトも頻繁にあり、トイレにも行けない。フランチャイズの個人店主だけの責任にせず、ファミリーマートが企業全体として、店員の待遇改善に取り組むべきです」と呼びかけた。また日本郵政の職員だという男性も「40万人の労働者の約半分は非正規で、給料は3分の1。これでは結婚もできない」と、同一労働同一賃金を求めた。
「アベノミクス」に象徴される安倍政権の経済政策にもかかわらず、多くの人々が景気回復を実感できず、ブラックな労働環境の中で、低賃金を強いられている―こうした格差貧困・労働問題への対策は急務であり、参院選の重大テーマの一つとして、政治家は勿論、有権者も考えていくべきことなのだろう。
(了)