Yahoo!ニュース

森保ジャパンを激賞!! 久保建英を「タケ」と呼ぶ“韓国のメッシ”とパク、何を語ったのか

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
ドイツに勝利した日本代表(写真:ロイター/アフロ)

韓国のカタール・ワールドカップ熱を取材すべく11月22日からソウルに来ている。11月23日の日本代表対ドイツ代表戦の勝利は韓国でも大きく取り上げられている。

「ドイツも崩れた…日本が“死の組”初戦で大逆転勝利」(通信社『聯合ニュース』)

「日本もドイツを沈没させた。2-1逆転勝利…大異変続出」(総合メディア『Mydaily』)

「“韓国と同じく”ドイツ撃破の日本、“ドーハの惨事”を“ドーハの奇跡”に」(スポーツ&芸能メディア『OSEN』)などで、スポーツ紙『スポーツソウル』でも「日本の果敢な選択と集中が“戦車軍団”ドイツを破った」と書き出した記事で森保ジャパンの采配を大絶賛していた。

(参考記事:「偶然ではない」ドイツを下した日本を韓国が絶賛「自分たちのサッカーをやめた」)

日本対ドイツの試合は韓国でも中継された。それも全国ネットの地上波すべてで生中継。

もっとも、それは日本戦に限ったことではなく、ワールドカップすべての試合が中継されており、3局同時中継は珍しいことではない。というのも、韓国では全国ネット3局がワールドカップ期間中、各試合をKBS、SBS、MBCの地上波3局が同時に中継するのが恒例となっているのだ。(2010年はSBSの単独中継だった)

KBSは日本でいうところのNHKに近い局で、SBSとMBCは日テレやテレ朝などの民放局に近いイメージだと考えていただければと思う。韓国ではこの3局が同じ試合を同じタイミングで中継する。

映像もHBS(ホストブロードキャストサービス)から配信される国際映像。つまり、3局が同じ試合を同じ映像で同じ時間帯に中継するため、差別化できるのは実況と解説になってくる。

特に解説者が誰かということが視聴率争いの決め手となるだけに、3局はいずれもメイン解説者に大物を起用するのが特徴だ。

今回のカタール大会でも、3局いずれもワールドカップ出場経験のある人気見者たちを抜擢している。

日本でもっとも知名度が高いのは、SBSで解説を務めるパク・チソンだろう。現在はKリーグの強豪・全北現代(チョンプク・ヒョンデ)のテクニカル・ディレクターを務めているが、現役時代には韓国代表として3度のワールドカップ出場を誇り、Jリーグの京都サンガやイングランドのマンチェスター・ユナイテッドでも活躍した。

パク・チソンは前回のロシア・ワールドカップでもSBSの中継席に座ってマイクを握っており、今回のカタール・ワールドカップでもSBSのメイン解説者を務めているが、SBSではもうひとり、注目の人物が解説者を務める。

かつて“韓国のメッシ”と言われ期待されていたイ・スンウだ。

2018年ロシア・ワールドカップに出場し、同年のジャカルタ・アジア大会では決勝戦で日本相手にゴールを奪い、「日本キラー」とも言われて人気絶頂だったイ・スンウだが、その後はシント=トロイデンやポルティモンセで苦しい日々を過ごし、2022年に韓国へ帰国。今季からKリーグの水原(スウォン)FCでプレーしている。

ただ、韓国代表への復帰はならず、カタールW杯の最終メンバーからも落選。現役選手ながらゲスト解説者としてカタールに入国した。

「普段から尊敬するパク・チソンさんと呼吸を合わせることができて光栄。今回は韓国代表としてプレーできず残念ですが、応援団長のつもりでマイクを握って選手たちの善戦に応えたい」とはイ・スンウの言葉。

パク・チソンも「イ・スンウは韓国サッカーの大きな財産。中継席で一緒に座ることができて嬉しい。しっかりリードしながら楽しく解説したい」と語っていたが、日本対ドイツ戦で驚いたのはイ・スンウの饒舌な解説ぶりだった。

パク・チソン(左)とイ・スンウ(右)。(写真提供=OSEN)
パク・チソン(左)とイ・スンウ(右)。(写真提供=OSEN)

試合中は日本の伊東純也のスピードや権田修一のスーパーセーブを激賞。バルセロナのカンテラ時代から知る久保建英についてはこんなエールを送っていた。

「一般的にはクボと呼ばれていますが、僕はタケという呼び名がしっくり来ますね。タケは昔から技術が高い選手。とてもセンスがある。こうやってワールドカップでプレーできる姿を見ることが僕も嬉しいです」

そんなイ・スンウも興奮気味に感嘆していたのが堂安律や浅野琢磨のゴールで、ふたりを途中投入した森保一監督を「素晴らしい用兵術です!!」と大絶賛していた。

それに相槌を打つようにパク・チソンも「森保監督の適切な選手交代、適切な戦術変更が核心的なキー要素になってゴールという実を結んだ。サッカーは試合の流れを争うが、流れを適切なタイミングで変えて掴んだ森保監督の采配がゴールを作った」と大絶賛だった。

もっとも、テレビ視聴率で1位になったのはMBC。パク・チソンと同じく2002年W杯で活躍し、日本のJリーグでもプレーしたアン・ジョンファンがメイン解説者を務める民放テレビ局だ。

日本対ドイツ戦の視聴率はアン・ジョンファンが解説を務めるMBCが10.1%(視聴率調査会社ニールセン・コリア調べ)でトップに輝き、SBS(7.5%)はその後塵を拝した。

ちなみに最下位のKBS(2.9%)のメイン解説者は、2014年と2018年の2度のW杯に出場し、ドイツ・ブンデスリーガだけではなく、2019年から昨季までカタール・リーグでプレーしたク・ジャチョル。

今季からふたたびKリーグに戻った33歳のイケメン現役選手というフレッシュさと、W杯やカタールでの経験も買われて抜擢されたようだが、実績でもネームバリューでも2002年4強戦士には及ばないだけに、それが視聴率にも反映された格好か。

いずれにしても、韓国ではワールドカップの“解説者戦争”もひとつの関心事になる。64試合全試合無料配信のAbema TVやNHK、フジテレビ、テレビ朝日の3社でも中継する日本でも、解説者に注目してワールドカップを楽しむのも一興かもしれない。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

慎武宏の最近の記事