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【最新研究】新型コロナワクチンの副反応と長期的な抗体反応の関係とは?皮膚症状にも注目!

大塚篤司近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授
(写真:イメージマート)

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対するワクチン接種は、感染予防や重症化リスクの低減に大きく貢献してきました。しかし、ワクチン接種後の副反応を懸念する声も少なくありません。そんな中、米国の研究チームが行った最新の研究で、ワクチン接種後の副反応と長期的な抗体反応の関係性が明らかになりました。

【研究の概要】

この研究は、米国のカリフォルニア大学サンフランシスコ校の研究チームが行ったもので、2021年に実施されました。新型コロナワクチンとしてmRNAワクチン(ファイザー社のBNT162b2とモデルナ社のmRNA-1273)を2回接種した成人363人を対象に、接種後の症状と1ヶ月後・6ヶ月後の中和抗体価(ウイルスを中和する抗体の量)の関係を調査しました。

参加者の平均年齢は52.4歳、65.6%が女性でした。また、一部の参加者(147人)に対しては、ウェアラブルデバイスを用いて皮膚温と心拍数のデータも収集しました。

【ワクチン接種後の全身性症状と高い抗体価の関連性】

研究の結果、2回目の接種後に悪寒、倦怠感、体調不良、頭痛などの全身性の症状があった人は、症状がなかった人と比べて、1ヶ月後と6ヶ月後の中和抗体価が1.4~1.6倍も高いことが分かりました。

また、症状の数と抗体価の関係も明らかになりました。2回目の接種後に報告された症状が1つ増えるごとに、その後の中和抗体価が1.1倍に上昇したのです。つまり、7つの症状があった人は、症状がなかった人の約2倍の中和抗体価を示したことになります。

注目すべきは、これらの関連性が1ヶ月後だけでなく、6ヶ月後という長期的な抗体反応でも見られたことです。ワクチンの効果が時間とともに低下する中で、接種直後の副反応が長期的な免疫獲得の指標になり得ることを示唆しています。

【客観的指標でも副反応と抗体価の関連性を確認】

自己申告による症状だけでなく、アップルウォッチのようなウェアラブルデバイスで測定した客観的なデータからも、同様の関連性が確認されました。2回目の接種後に皮膚温が1度上昇するごとに、1ヶ月後は1.8倍、6ヶ月後は3.1倍の中和抗体価の上昇が見られたのです。

心拍数も同様の傾向が見られ、2回目の接種後に10拍/分の上昇があった場合、その後の中和抗体価が平均1.54倍に上昇していました。

これらの結果から、ワクチン接種後の全身性の症状や生体反応は、その後の抗体獲得と強く関連していることが分かります。副反応は免疫システムが適切に反応している証拠と捉えられ、むしろプラスに働いている可能性があるのではないでしょうか。

【皮膚疾患とワクチン接種後の副反応】

ワクチン接種後には、発疹や蕁麻疹などの皮膚症状が現れることもあります。もちろん重度のアレルギー反応など、注意すべき症状もありますが、多くは一時的で自然に回復します。

今回の研究では、皮膚症状と抗体獲得の関連性について直接の言及はありませんでした。しかし、全身性の症状と同様に、皮膚の症状も免疫反応を反映している可能性があります。

ただし、もともとアトピー性皮膚炎など皮膚疾患のある方は、ワクチン接種後の皮膚症状が出やすい傾向にあります。症状が重い場合や長引く場合は、皮膚科医に相談することをおすすめします。

また、ワクチン接種後の皮膚症状の発現には個人差が大きく、症状の有無だけで抗体獲得の程度を判断することは難しいでしょう。皮膚症状と免疫反応の関係性については、さらなる研究が必要です。

【注意点と今後の展望】

今回の研究結果は、第一にワクチンを受けた人々のデータに基づいています。事前にSARS-CoV-2に感染していた人や、他のワクチンを接種した人での関連性は不明です。

また、中和抗体価の測定に用いられたのは、オリジナルの武漢株に由来するウイルスでした。変異株に対する中和活性への副反応の影響については、さらなる研究が必要でしょう。

ワクチンの効果は抗体だけでなく、細胞性免疫も重要な役割を果たしています。副反応と細胞性免疫の関係性の解明も、今後の課題と言えます。

とはいえ、本研究の結果は、副反応を恐れるあまりワクチン接種を避ける風潮に一石を投じるものです。むしろ抗体獲得の良いサインと捉え、前向きに受け止められればと思います。皮膚の症状を含め、気になる点があれば医療機関に相談しつつ、ワクチン接種を検討していただければと思います。

参考文献:

Dutcher, E. G., Epel, E. S., Mason, A. E., Hecht, F. M., Robinson, J. E., Drury, S. S., & Prather, A. A. (2024). COVID-19 Vaccine Side Effects and Long-Term Neutralizing Antibody Response: A Prospective Cohort Study. Annals of Internal Medicine. https://doi.org/10.7326/M23-2956

近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授

千葉県出身、1976年生まれ。2003年、信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医、アレルギー専門医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て2021年4月より現職。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとして日本経済新聞などに寄稿。著書に『心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版社)、『最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)、『本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。』(大和出版)がある。熱狂的なB'zファン。

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