IZAが表参道でフェムテック商品を販売、紗栄子のカフェや吸水ショーツ、セルフプレジャーアイテムも
大阪と青山でセレクトショップを営むIZA(イザ)の期間限定店「IZA with FRIENDS」が1月4日まで表参道ヒルズ1階で営業中だ。グループ会社で輸入代理店も務める「N21」(ヌメロ ヴェントゥーノ)や「NINA RICCI」(ニナリッチ)、「PATOU」(パトゥ)、「SELF-PORTRAIT」(セルフ-ポートレート)などのファッションアイテムに加え、モデル・タレント・女優で実業家でもある紗栄子が栃木県で運営する「NASU FARM VILLAGE」(那須ファームヴィレッジ)初のポップアップカフェを併設。さらに、フェムテックディレクターに元「WWDジャパン」編集者の大杉真心(まみ)さんを抜擢。吸水ショーツやセルフプレジャーアイテムなどのフェムテック商品や、ヘアケアやボディケアアイテムも取り扱う意欲的な店舗に仕上げている。IZAの田中タキ社長と大杉さんに、「IZA with FRIENDS」を立ち上げた想いと今後のビジョンを聞く。
――この店を立ち上げた背景は?
田中:ここ表参道ヒルズに、代理店として取り扱っているブランドを来年2月末にオープンすることになったのですが、それまでの間、インポート菓子ブランドストアの跡地を活用して何か面白いことをやらないかとお誘いを受けたのがきっかけです。ただ、こういった時節ですし、たくさん買い付けて在庫が豊富にあるわけでもないし、すでにIZAでの取り扱いブランドが単独で出店していたりもする。ならば、閉塞している時代に、みんなが笑顔になれる新しいことに挑戦してみようと思いました。通常であれば、海外出張で年間120日、約1/3を欧米で過ごしているのですが、コロナ禍で日本にいる時間が長くなったおかげで、好きだった人と存分に会う時間が取れたり、日本のコミュニティと深く付き合えるようになりました。彼女たち、彼らの力を借りて、何か新しいことをやろうと思ったのがきっかです。いろいろな分野で頑張っているお友達に声をかけ、企画からオープンまで1カ月でやりきったので、みんなに奇跡といわれています。
――那須で牧場を経営している紗栄子さんのテイクアウトカフェや、そこで売っているドレッシングやヘルス&ビューティグッズ、馬をモチーフにしたアクセサリー、そして簡易防災キットなども販売している。
田中:日頃からすごく仲良くしていて、最初に声を掛けさせてもらったのが紗栄ちゃんでした。彼女は長く被災地援活動などを行い、般社団法Think The DAYを設立して代表理事を務めたり、保護馬のセカンドライフを提供する場を目指して那須の牧場の経営を引き継ぎ、「ウィークエンドカフェ」やファームのオリジナルのグッズなどを扱っていました。なので、この店にもともとあったカフェスペース跡を生かして、那須まで行けない紗栄ちゃんのファンや、オーガニックなものを好む人々に、那須の雰囲気を感じてもらえるようなことを一緒にやらないかと話しました。すぐにやりたいと言ってくれて。そこで「IZA with FRIENDS」という名前も決まりました。SHIMAの奈良裕也さんもヘアケアラインを販売してくれるなど、お友達や、新たに紹介してもらってつながった方々に協力していただいているところです。ちなみにカフェのメニューは那須の「ウィークエンドカフェ」のものを提供しています。
――フレンズの方々は、「タキさんの『みんなを応援したい』という気持ちが強くて、むしろこの場を提供してもらっている」と話していましたが。
田中:ありがたいですね。頑張っている人たちのプラットフォームになりたいなと思っています。デリケートな商品を含めて、いろいろなものをここから発信したいですね。毎週インスタライブをしているのですが、微力ながら応援しつつ、表参道ヒルズでポップアップをやったというキャリアや、実際にお客様と接することで吸収できるものがあればいいなと。自分がゼロからスタートして苦労をして、いろいろな方々のおかげでここまでこれたので、みんながくるくる楽しく転がって広がっていけばいいなと思っています。
――フェムテック、フェムケア、セルフプレジャー商品などを扱おうと思ったきっかけは?
田中:これまで華やかでラグジュアリーなお洋服を海外からセレクトして扱ってきましたが、お金があっても着ていくところがなかったり、ロゴのスウェットなどリラックスしたものが売れるようになっていたり。時代は変わり、人の気持ちも含めて、もう完全には元には戻らないと思います。服も大切ですが、このまま売り続けていくことはサステナブルではないという矛盾も抱えています。ファッションにとらわれ過ぎず、ライフスタイル全体を応援し、みんながアガるようなものを提供するいいタイミングですし、生き残っていかなければという切実な面もあります。もう一つ、これまでライフワークとして、乳がんの正しい知識を啓蒙するピンクリボン運動などさまざまなチャリティ活動を行い、2007年からは性の幸せを応援するファッションチャリティイベント「IZA PINK CHRISTMAS」も主催してきました。素敵な服や、着ていく場を提供してきたので、身体や内面がハッピーになることで、ファッションをますます楽しんでもらいたいという思いも強まっていました。
――フェムテックディレクターに起用した大杉さんは、「WWDジャパン」時代の元後輩で、2年ほど前からフェミニスト特集を担当したり、フェムテック関連の売り場や商品、キーパーソンなどにも多く取材し、広く精力的にウェルネス情報を発信してきたのを見てきました。独立後、初の大きな仕事が表参道ヒルズでの「IZA with FRIENDS」というのも嬉しいですね。
田中:パリやミラノなどでコレクション期間中によく会ったり、うちのショーのバックステージに入って取材してもらったりもしていました。フェムテックはもともと関心が高かったのですが、今回、サステナブルなことやLGBTQなども踏まえてコンセプチュアルなことをやりたいと思って相談した方もフェムテックについて熱く語られ、大杉さんを推薦いただいて。ちょうど独立されるタイミングだったということもあり、運命だなと思って。たくさんブレストして、うちらしい華やかでアガるもの、IZAと相性のよいブランドなどを探して紹介してもらいました。大杉さんと一緒に、女性の新しい時代の扉を開ける、バズを起こす一番手になりたいと思っています。
――では、大杉さん、フェムテック系の品ぞろえや、特徴的な商品やブランドを教えてください。
大杉:まずは、エイベックス所属のシンガーソングライターで、行列ができる飲食店のブランドディレクターでもある信近エリさんが手がける「Rinē」(リネ)です。吸水ショーツを初めて履いて感動してたくさん買い集めたけれども、「もっとしっくりと自分に合うものを作りたい」「性特有の悩みによってパフォーマンスを左右されることなく、ともに健やかに過ごすサポートをしたい」との思いから昨年12月にNeith社を設立。アーティスト活動を休止して本気で開発を重ね、今年6月にデビューさせたものです。生理や尿漏れなどを吸水するテクノロジーを駆使したもので、その他の生地は生分解性のあるテンセルを使用して肌触りも良いものに仕上がっています。セットアップのブラレットもあります。これまでオンラインだけで扱ってきたので、リアル店舗での販売は初めての販売となります。
田中:機能性だけならショーツだけでもいいですが、着ている本人の満足度を考えたらブラとのセットアップが良いよね、というところも共感しましたし、せっかくご一緒するならと、うちのメインブランドの「ヌメロ ヴェントゥーノ」の最新コレクションとコーディネートしてファッションとして提案しています。
大杉:二つ目は、30代前半の2人の女性が手がけているXY社の「Albâge Lingerie」(アルバージェ ランジェリー)です。2016年にデビューしたランジェリーブランドで、女性をエンパワーメントする商品やサービス、養護施設や女性向けシェルターへフェムテック製品を寄贈する「Lingerie For Education」プロジェクトなども行っています。デザイナーは本場フランスで修行していて、レースなどの素材はヨーロッパから輸入し、国内で生産するなどジャパンクオリティとインポート感覚のデザインを兼ね備えています。タキさんの活動とも連携し、「乳がん」の早期発見・治療を啓発する10月のピンクリボン月間には、IZAと一緒に乳がんサバイバーの女性に向けたブラジャーを開発するプロジェクトを立ち上げます。
田中:ピンクリボン運動を10年以上サポートしてきた関係で、患者会などとも仲良くさせてもらっていて、患者さんの知り合いもたくさんいます。再建するまでの間のことを気になさる方や、シリコンを入れて再建して時間が経つと、ずっと片方は若いころのままだけれども、もう一方は実年齢とともにエイジングしてアンバランスになってしまって困っているなど、十人十色の問題を抱えて闘っていられます。ささやかですが下着などでハッピーにして差し上げたくて。また再建をしないと決めた方でも、胸を失ったことは受け入れているけれども、服を着たとき外からそれがわからないようなものが欲しいとの声も聞いていました。プロトタイプを作るうえでリアルな声を聞かせてくださる知り合いがたくさんいますし、そういった方々は自分のためだけでなく、病気になってしまった方のためにも力になりたいと思っている人も多いので、その懸け橋になれればよいなと思っています。
大杉:今回の目玉の一つでもあるのですが、フェムテック、フェムケアのパイオニアであり、日本初のフェムテックショップとして生理用品やプレジャートイを提案してきた「LOVE PIECE CLUB」(ラブピースクラブ)の北原みのりさんにも協力していただいています。今回は海外発のデザイン性の高いプレジャートイや膣トレグッズ、生理用カップなどを扱います。ネックレスに見えるけれども実はバイブレーターとか、モデル・女優のカーラ・デルビーニュが共同経営する「LORA DICARLO」(ローラ ディカルロ)のテクノロジー吸引トイ、ドイツ製の土に還る生分解性のエコフレンドリーなグッズ、モヒートやストロベリーなどカクテルの味がする温感オイルなどもあります。オーガニック認証を得たイギリス発のデリケートゾーンケア商品や、ブルートゥースでスマホと連動してゲームをしながら骨盤底筋やインナーマッスルを鍛えられる膣トレグッズなどもあります。
田中:コンセプトや思い、テイストが明確で、見た目にもプレジャーなものを私自身がセレクトしました。ファッションをプラットフォームに、富裕層や新しい考えに賛同したりリーダーシップを持っていらっしゃるお客様たちともつなげて、ラグジュアリー市場に広げていきます。日本はカワイイとか、「無印良品」や「ユニクロ」に親近感を持つ人が多いですが、一方で、成熟したマーケットを広げて、富裕層や大人の女性に向けて、味わい深いものの提案を増やしたいんです。カーラ・デルビーニュもバイセクシャルをカミングアウトし、強く大胆でいることで共感を得ています。そんなオープンマインドなムードを日本でも作っていきたいですね。
――最後に、ファッション市場の見通しや、「IZA with FRIENDS」の今後の展開について。
田中:多分、私たちが扱うプライスポイントのファッションマーケットは大きくならず、むしろ淘汰され、一方で、“本物”はより長いスパンで愛されていくことでしょう。それもサステナブルのあり方であり、ラグジュアリーはそちらにシフトしていくでしょう。人と思う存分会えなくなった今、無理して会いたくない人と時間を費やすよりも、好きな人ともっといろいろなことに取り組んだり、もっと仲良くなりたいですよね。それってセックスパートナーに限らず、家族でも友達でも職場でもそう。そういうきっかけの一つに、「IZA with FRIENDS」がなればいいですね。そして、モノを売るというよりもマインドを発信していきたいですね。最近とくに「ご自愛ください」と言う機会が増えていますが、心身ともに「自愛」することはこれからの大きなキーワードだと思っています。シスターフッドの精神で連携し、連帯し、恐れずに、柔軟に、しなやか、かつ、したたかに、変幻し、今の状況をみんなで乗り切っていきたいですね。旅行などにも出かけにくいタイミングなので、逆に私たちが出向くなど、この取り組みをパッケージ化して全国をツアーすることも構想中です。
最新情報:2021年10月1日〜31日に乳がんの早期発見を呼びかけるピンクリボン月間に合わせたイベント「IZA LOVE and PINK」を開催する。
①「TOMO KOIZUMI」のピンクドレスを展示
②「NASU FARM VILLAGE」からイチゴを使ったピンクのスペシャルドリンクが登場
③「Albâge Lingerie」と乳がんサバイバーに向けたブラジャーを開発するプロジェクトを立ち上げ
④「Rinē」が授乳期の女性が母乳パッドなしで使用できる吸水ブラレット「マミーブラレット」の販売を開始
⑤ピンクリボン月間限定のノベルティをご用意(3000円以上購入者向け。先着順)
田中タキ:PROFILE/セレクトショップIZAの代表取締役兼オーナーバイヤーで、親会社のグルッポタナカの代表取締役副社兼CMOを務めながら「N21」や「NINA RICCI 」など複数の海外コレクションブランドの日本総代理店を手がける。ライフワークとして乳がんの正しい知識を啓蒙するピンクリボン運動などさまざまな社会活動に取り組む。
大杉真心:PROFILE/文化女子大学(現文化学園大学)とNY州立ファッション工科大学(FIT)でファッションデザインを学ぶ。セレクトショップなどでの販売職を経て、2012年からインファスパブリケーションズの「WWDジャパン」に携わる。アパレル、国内外のデザイナーズブランドなどに加え、2019年からフェムテックを担当。2021年8月に退社し独立。