観測史上最多28個目の『ハリケーン・イータ』ニカラグアに上陸
今月1日(日)、台風19号が「世界最強の上陸台風」としてフィリピンで猛威を振るいました。現在、遠く離れた大西洋でも記録的なハリケーンが発生しています。
現地時間3日(火)ハリケーン「イータ」が中米ニカラグアに上陸しました。上陸時の最大風速(1分平均)は63m/s、ハリケーンの勢力は5段階で2番目に強い「カテゴリー4」でした。
コロラド大学のクロツバック教授によると、イータの中心気圧は上陸前に927hPaまで下がり、大西洋のハリケーンとしては今年最強の強さとなったということです。一般に中心気圧が低い方が、強い風が吹きます。
予想される進路と風雨
アメリカの国立ハリケーンセンターは、ニカラグアと、その北のホンジュラスで最大890ミリの大雨が降ると予想しています。
また最大瞬間風速は87m/sと、鉄筋の建物にも被害を及ぼすような強風も予想しています。
さらに海岸線では、高波に加え、6.5メートルに及ぶ高潮のおそれもあります。海岸に建つ家などは、破壊されるか浸水してしまうほどの威力です。
1998年「ミッチ」以来の最大級の被害か
イータの上陸に伴い、1998年に中米で1万人の死者を出したハリケーン「ミッチ」以来の最大級の大災害が危惧されています。
ミッチは「カテゴリー1」(ハリケーンの中でもはもっとも弱い)の勢力でホンジュラスに上陸、その後ほとんど停滞したことから大雨が降り、大規模な洪水が発生しました。
イータの上陸は「カテゴリー4」とミッチよりもかなり強いばかりか、その進行速度も時速6キロと、人の早歩き位のとんでもなく遅いスピードで進んでいます。
こうした理由から、今回はミッチよりもさらに深刻な被害が起こることも考えられます。
そのうえイータの接近が深夜から早朝に重なったこと、さらに上陸前に急速に発達したことなどから、多くの住民が避難できずにいた可能性があります。上陸前、イータの最大風速は24時間で35m/sも強まり、まるで発生したての台風がいきなり翌日に「猛烈な」勢力になるほどの稀な発達ぶりを見せました。
ニカラグアやホンジュラスなどで、かなり甚大な被害が報告されるおそれがあります。
観測史上最多の大西洋ハリケーン
ところでイータは、今年大西洋で発生した12番目のハリケーン、また28番目に名前の付いた熱帯低気圧(※)です。
28個の名前の付いた嵐が1年で発生したのは、これまで2005年のたった一度しかありません。さらに今年は計30個の嵐が発生すると予想されており、観測史上最多の記録を塗り替えることとなりそうです。
このハリケーンラッシュの被害を特に被っているのがアメリカです。これまでに11個が上陸し、観測史上最多の記録となっています。イータもまた来週にかけてアメリカに接近または上陸する可能性があります。そうなると12個上陸となり、なんと例年の6倍に達します。
ハリケーンやら新型コロナやらと、今年世界ではいろいろな意味で忘れられない出来事が起きています。
※大西洋海域で名前が付けられる嵐は、ハリケーン(最大風速34m/s以上)とトロピカルストーム(17~33m/s)の2つ。