原油価格が10%超の急落、OPECプラス会合が決裂
3月6日のNY原油先物価格は、1バレル当たりで前日比4.62ドル安(10.1%安)の41.28ドルと急落した。取引時間中の安値は41.05ドルとなっているが、これは期近物では2016年8月以来の安値更新となる。5日の石油輸出国機構(OPEC)総会に続いて、6日にはロシアなどを加えたOPECプラス会合が開催されたが、OPECが強く要請していた追加減産の協議が決裂し、3月末で協調減産体制が終了する見通しになったショックが、原油価格の急落を促している。
新型コロナウイルスの影響で経済活動が急減速する中、当然に石油需要も大きなダメージを受けている。OPECは5日の総会において、原油需給・価格の安定化を促すためには協調減産枠の拡大(=追加減産)が必要と判断して、日量150万バレルの追加減産を、ロシアなどOPEC非加盟国との合意を前提条件に決定していた。OPEC加盟国が100万バレル、OPEC非加盟国が50万バレルの追加減産をそれぞれ引き受ける案になっていた。
しかし、従来から追加減産には難色を示していたロシアは、最期まで追加減産に対して支持を表明せず、協議は決裂している。しかも、3月末までが期限とされている現行の協調減産体制の延長さえも合意できず、2018年1月から続いてきたOPECプラスによる協調減産体制は解消される見通しになっている。
ロシアのノバク・エネルギー相は、「4月1日からOPEC加盟国、非加盟国はともに何の制限も受けない」と表明し、各国が独自判断で生産量を決定する状況になるとの認識を示している。OPECとしては、1)単独で減産体制を維持するのか、2)減産体制を終了させるのか、3)改めてOPECプラスとしての協調減産体制維持を目指すのか、難しい選択を迫られることになる。
仮に国際原油需給が過剰供給に向かっているとの認識が正しいのであれば、何らかの形で供給量を削減していく必要性がある。これまでは、OPECプラスの協調減産体制がその役割を担ってきたが、この協調減産体制が終了するのであれば、価格によって供給調整を促すことが求められる。すなわち、原油安によって生産取り止めを促すことが求められるのだ。
2014年には、意図的に原油価格の安値誘導を行うことで、シェールオイルに減産を促す需給安定化が目指されたこともあったが、その政策は失敗に終わり、16年3月の26.05ドルまで原油相場は急落した経験もある。OPECはまだOPECプラス会合の協議決裂に対する対応を表明していないが、このまま協調減産体制の崩壊が決定付けられるのであれば、シェールオイル産業などが崩壊して供給削減が始まる状況まで、原油価格は値下がり対応を迫られる可能性も浮上しているのが現状である。