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マイナンバーとスマホで選挙投票ができる日がついにやってくる?

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント
出典:NHK

KNNポール神田です。

□海外で暮らす有権者を対象に、国政選挙での導入が検討されているインターネット投票の実証実験が(2020年2月)5日、都内で行われました。

□国政選挙の投票率のアップにつなげようと、総務省は海外で暮らす有権者が行う「在外投票」に、インターネット投票を導入することを検討していて、必要なシステムの開発も進めています。

□有権者役として、世田谷区の職員らも参加しました。

□スマートフォンの専用アプリで、マイナンバーカードを読み取ってパスワードを入力すると、投票画面が表示される仕組みになっています。

□投票先を選んだ職員たちがデータを暗号化するために、再びマイナンバーカードの読み取りと、パスワードの入力をして送信すると、集計用のパソコンに得票数が表示されました。

□総務省選挙課の土屋直毅企画官は「今後はセキュリティー対策の検討を進めるなど、着実に準備を進めていきたい」と話していました。

出典:インターネット投票の実証実験 「在外投票」で導入検討

■本当の『ネット選挙投票』の夜明け

このニュースを見て、ようやく本当の意味での『ネット選挙』の解禁がやってくるような気がすこしだけしてきた。ただし、ネット選挙の解禁というよりも、総務省は、どうにかしてはじめてしまった『マイナンバー』を何がなんでも使わせる方向のベクトルで考えているのかもしれない。まずは、日本に住んでいない国外の在外日本人131万人を対象にするのはとても良い方法だと思う。

現在、在外日本人の国政選挙の参加方法は、『在外選挙制度』を利用するしかない。そのためには、『在外選挙人名簿の登録申請』の提出が必要であり、『在外選挙人証』を持ち、各国の大使館、総領事館、領事事務所などに出向いて投票する必要がある。もしくは、『郵便投票』では、日本側に『投票用紙』を請求し、『投票用紙』が届いたら、『在外選挙人証』と共に市区町村の投票所の閉鎖時刻までに到着させねばならないという面倒くさい作業が必要であった。

■マイナンバーカードの選挙投票で『期日前投票』できれば日本は変わるか?

しかし、それらの手間から比べると『マイナンバーカード』をスマートフォンでスキャンして特別なアプリで投票できるとなるととても助かるだろう。ただ、国外に在留した時点でマイナンバーの効力を失うことになっているのはザルとしか言いようがない。現行のルールでは、海外に住民方を転出した場合はマイナンバーを市町村へ返納するというしくみになっている。ただし、本人確認の番号は引き続き継承できるので、今回の実証実験になったのだろう。

もちろん、131万人の在外日本人の『ネット在外投票』で問題がなければ、次は、『期日前投票』で導入するというアイデアもでてくることだろう。そうなると、誰も選挙日当日の日曜日に、わざわざ学校や役所に投票に行く必要もなくなる。当然、候補者もポスターの掲示場所を用意するなどではなく、ネット選挙に参加できない方々のために、日曜日の投票所に新聞によくはさまれていた『選挙広報』だけ

を用意すればよくなる。お金をかけないコンパクトな選挙が実現できる。

いや、最初から、すべてスマートフォンで表示できるように比較検討サイトを総務省の選挙管理委員会で用意すればよいのだ。投票行動がクラウドで処理できるのであれば、ネット上の候補者のエントリーなども、すべて各自治体ではなく総務省側でも一括のフォーマットを用意すれば、もっと効率化がはかれるだろう。候補者への説明やら確認作業も各選挙管理委員会では膨大な時間と労務が強いられる。

■知られていない各候補者へ投入される税金

膨大なポスターを掲示するために費やされる税金。そして、あの候補者のポスター代金も、実は税金でまかなわれていることを知っている人は少ない。筆者は、国政の参議院選挙に『ネット選挙』を唱えて2007年に立候補した事があるのでよくわかっているつもりだ。あのポスター1枚あたりに当時でなんと最大940円もの還付金があるのだ。あんなポスターは個別の候補が独自に勝手に印刷するのではなく、選挙管理委員会がラクスルなどで大量印刷すれば一枚1円でも印刷できることだろう。また、候補者陣営が勝手に貼るのではなく、最初から貼ったポスターを立て掛けるか、最初から印刷したボードを立てたほうがコストも安い。いや、むしろあんな何度も立て替えるのではなく、太陽光で発電できるデジタルサイネージ化していき、災害時には、充電ステーションや情報サイネージになる災害投資の面で検討していくべきだろう。

■新聞広告なんて、誰も読まないのに、選挙広告の税負担

また、候補者はこれも税金で新聞広告を突き出しというサイズで国政ならば5枠も税金で掲載できる。当時、筆者が計算すると一人の国政選挙の候補者で、最大1,000万円近く税金が新聞社や広告代理店に使うことができた。しかもテレビ局もNHKと民放の2局で『政見放送』を流せる。当然、民放側も時間がたとえ早朝の4時からの誰も見ていない放送枠であっても一円も値引きもせずに正価で買ってくれるのだから、とてもありがたい収入源となっていることだろう。立候補してみてびっくりするのが、すべて合算すると、供託金300万円ではとても足りないくらいの税金が選挙だけでなく候補者にも投入されていることだったのだ。また、供託金も当選した人や、落選しても供託ポイント(有効投票総数と議員定数の8分の1)と呼ばれる票を獲得すると全額もどってくる。そう、これらの選挙行動もすべて『ネット選挙』にするだけで、膨大な税金の節約につながるのだ。

■マイナンバー普及の壁 国の職員でさえ取得率25.3%だった!

『マイナンバー』を総務省がどれだけ普及させようとしても、そこには大きな壁があることも発見された…。

これでは、国民に普及すらできない…絵に書いたモチだ。

□国の職員約79万人のマイナンバーカードの取得状況を省庁などが調べたところ、昨年10月末時点の取得率が25%であることが分かった。政府は2023年3月末にほとんどの住民が取得することを目標にしているが、足元の国家公務員らにすら十分に浸透していない実態が明らかになった。

□政府は(20)21年3月末からマイナンバーカードを健康保険証としても使えるようにする予定

□取得率が低いのは文部科学省の11・7%。次いで防衛省17・7%、法務省19・3%。

一方、会計検査院、公正取引委員会、内閣法制局は100%、カード事業を所管する総務省は91・4%

□職員の家族約77万人の取得率は、申請中も含めて13・1%だった。

出典:マイナンバーカード、国の職員も取得率25% 昨秋時点

国家公務員でさえ、取得できていないマイナンバーカードを国民にだけ普及させようとしてもまったく無意味だろう。

また、選挙投票に行く半数の人は、マイナンバーカードでスマートフォンだと楽になるかもしれないが、本来選挙に行かない人たちにとっては『マイナンバーカード』でネット選挙が実現できても何も変わらないだろう。

本当に『マイナンバーカード』を普及させるには、『マイナンバーカード』を取得すると、『源泉徴収』ではなく、すべて『確定申告』制度を選べるようにすべきではないだろうか?これで、一気に短期的にサラリーマンの収入が毎月2割近く増えるから経済インパクトも大きいだろう。そして、いざ確定申告をするとなると、『青色申告』への選択肢に気づき、経費処理ができる『副業起業』も考えることができるだろう。それでこそ、DX化されたデジタル・ガバメントが実現できることだろう。

政府が今後の税収を懸念して『副業』やら『70歳就業』を謳わくても、『源泉徴収』を実験的にやめてみるという景気対策をうちだしたほうがよいのではないだろうか?

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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