【なぜ仮面ライダーは世代を超えて愛され続けたのか?】最初からクライマックスな仮面ライダーって誰?
みなさま、こんにちは!文学博士の二重作昌満(ふたえさく まさみつ)です。
いよいよ待ち焦がれたゴールデンウィークが始まります。
皆さま、いかがお過ごしでしょうか?
さて、今回のテーマは「電車」です。
私達が通勤、通学の際に利用する身近な交通手段である「電車」。
日本という国、とくに都市圏で暮らす人々にとって必要不可欠な乗り物と言っても過言ではないほど、「電車」とは日常に勤しむ私達を安全に輸送してくれる大切な交通手段です。
さてこの電車、もちろん普段の生活における移動手段としても勿論ですが、我が国が世界に誇る「特撮ヒーロー番組」でも、普遍的に使用されてきたモチーフでもあります。
・・そんな数ある「電車」の特撮ヒーロー番組の中で、今回ご紹介するのは東映制作の特撮ヒーロー番組『仮面ライダー電王(2007)』。
本作は、国民的特撮ヒーロー番組である『仮面ライダー』シリーズの1作品であり、電車モチーフの仮面ライダーが活躍する物語。
本作ではさらに、桃太郎(赤鬼)や浦島太郎(亀)、金太郎(熊)といった昔話の要素も導入され、日本のお伽噺を題材にした怪人達が仮面ライダーに力を貸し、人々の大切な「時の運行」を悪い怪人達から守る物語が展開されました。
そんな個性豊かな『仮面ライダー電王』の物語の中で、特に強烈な個性を発揮したのが、桃太郎の世界から飛び出した赤鬼の怪人、モモタロス。
見た目は赤鬼で乱暴者、口は悪いけど、実は人情深くて単純な性格。そんなモモタロスですが、『電王(2007)』放送終了後から現在まで絶大な支持を誇る大人気キャラクターであり、約55年に渡る仮面ライダーシリーズの歴史を語る上で、今やなくてはならない存在です。
本記事では、そんなモモタロスの愛すべき魅力について掘り下げていきます。
※本記事は「私、アニメや特撮にくわしくないわ」という方にもご覧頂けますよう、可能な限り概要的にお話をしておりますので、ゆっくり肩の力を抜いて、気軽にお楽しみ頂けたらと思います。
【栄光の仮面ライダーシリーズの歴史!】挑戦に次ぐ挑戦!新たなヒーロー像を確立した平成仮面ライダーシリーズを振り返ろう!
さてさて、本記事ではこれより仮面ライダー電王こと、モモタロスのお話に入る前に入りますが・・・少しだけ、仮面ライダーシリーズについてご紹介をさせてください。
仮面ライダーは、漫画家・石ノ森章太郎先生の原作で生み出された特撮ヒーローのことです。1971年にシリーズ第1作『仮面ライダー(1971)』の放送が開始され、主人公が悪の秘密結社ショッカーによって改造手術を施されて、バッタの能力を持った大自然の使者・仮面ライダーとなり、人間の自由と世界の平和を守るため、愛車であるバイク(サイクロン号)に乗り、毎週ショッカーが送り込む恐ろしい怪人達と戦う物語が展開されました。
その結果、『仮面ライダー(1971)』は国内で社会現象的な大ヒットを巻き起こすことになりました。その後、次回作『仮面ライダーV3(1973)』や『仮面ライダーBLACK RX(1988)』等の派生作品が次々に放送され、昭和の仮面ライダーシリーズとして定着していくことになります。
時代が昭和から「平成」に変わると、平成仮面ライダーシリーズの放送が開始されました。その第1作となったのが『仮面ライダークウガ(2000)』であり、本作で試みられたのが、仮面ライダーシリーズにおける「既成概念の破壊」でした。
つまり「仮面ライダー=改造人間」、「仮面ライダー対悪の秘密結社」、「奇声を放つ戦闘員の集団と、それを率いる悪の怪人」といった、昭和の仮面ライダーシリーズで定着していた概念、いわば「お約束」を破壊し、平成という時代に適合した新たな仮面ライダーを創造しようとしていたのです。
その結果、『仮面ライダークウガ(2000)』は、主人公(五代雄介)が古代遺跡から発掘されたアークル(変身ベルト)を身に宿して変身する仮面ライダークウガが、警察組織と共に、古代の封印から解かれた戦闘民族(グロンギ怪人)相手に「みんなの笑顔を守る」ために戦うという、全く新しい世界観で好評を得た『仮面ライダークウガ(2000)』は無事放送を終了します。
シリーズのバトンは『仮面ライダーアギト(2001)』や『仮面ライダー龍騎(2002)』といった後続の仮面ライダーシリーズに次々と受け継がれることとなり、元号が平成から令和に変わるまで放送された全20作の仮面ライダーシリーズは、「平成仮面ライダーシリーズ」として定着することになりました。
そんな約20年に渡る平成仮面ライダーシリーズの歴史ですが、第1作の『クウガ(2000)』からシリーズを通じて共通して行なわれたのは、やはり先述した「既成概念の破壊」でした。ざっくりいえば「どこまでやれば仮面ライダーとして許されるのか?」といった、まるで世間の仮面ライダーに対するイメージを解体するような挑戦が続いていたのです。
人間を守る仮面ライダーだけでなく、倒される怪人側にも重厚なドラマを展開した仮面ライダーシリーズがあれば・・・。
「鬼」を素材に、バイクに乗らない上に清めの音で怪人(妖怪)を退治する仮面ライダーシリーズも放送されました。
このように『仮面ライダークウガ(2000)』で実践された、これまでの仮面ライダーシリーズに対する「既成概念の破壊」に対する姿勢は、後の平成仮面ライダーシリーズにも継承され、挑戦に次ぐ挑戦の繰り返しの中でシリーズを存続させていくことになりました。
これを総括するならば、平成仮面ライダーシリーズはまるで「仮面ライダーってなんなんだ?」といった命題を視聴者に突きつけるような試行錯誤が続いてきたともいえますが、その流れの中で誕生したのが平成仮面ライダーシリーズ第8作『仮面ライダー電王(2007)』でした。
本作の主人公・仮面ライダー電王は、赤鬼の怪人達と力を合わせ、電車に乗ってタイムトラベルをするという、これまた奇天烈な活躍をする仮面ライダー。
次章からは、そんな摩訶不思議な『仮面ライダー電王(2007)』の物語と、本作に登場する仮面ライダーの良きパートナー、モモタロスに焦点を当てていきます。
【俺、参上!】その強さ、最初っからクライマックス!!野上良太郎とモモタロスの途切れることない熱い絆とは?
ここからは、本記事の主役であるモモタロスが登場する『仮面ライダー電王(2007)』の物語についてお話をしていきたいと思います。
『仮面ライダー電王(2007)』は、とにかくツイてない上に不運な主人公・野上良太郎(演:佐藤健)が、時の運行を守る戦士・仮面ライダー電王となり、未来からやって来た人類の精神体であるイマジン(怪人)から、時の列車・デンライナーに乗って、人々の大切な時間と思い出を守る物語。
つまり仮面ライダー電王は、従来の仮面ライダーシリーズのような「世界の平和」ではなく、過去から未来へと続く正しい「時間の流れ」を守る仮面ライダー。
過去へ飛んで悪さをし、歴史を変えることで未来を自分達の都合の良いように書き換えようとするイマジン(怪人)と戦うことを使命としていました。
この流れを見ていく中で、「そもそも、モモタロスってなんなの?」とお感じの方も多いかと思います。
モモタロスも、本来ならば電王と敵対するイマジンのひとり。つまり仮面ライダーがやっつけるはずの「怪人」の同族でした。しかし、モモタロスは他のイマジンと異なり、良太郎(仮面ライダー電王)と共に闘うことを選んだ、かなり型破りな存在だったのです。
同族であるはずの怪人からも「バカか?」と呆れられた彼ですが・・・
モモタロスが電王である良太郎と組んだ理由のひとつは「カッコ良く暴れること」でした。まるで「桃太郎」に登場する赤鬼のように、好戦的で暴れん坊な性格である彼は、仮面ライダー電王となって暴れたいことから、良太郎と共に闘うことを選んだのです。相手は関係ありません。暴れられればよかったのです。
しかし、それには1つ問題点がありました。それは良太郎が生きる「現代」の時間では、モモタロスは実体を保てず、まるで魂だけの存在であることでした。
そこでモモタロス、良太郎の体の中に入り込み、一心同体となることで「仮面ライダー電王(ソードフォーム)」を名乗ります。
体は良太郎でも、性格はモモタロス。「俺、参上!」の決めゼリフと共に戦闘を開始し、ソードフォームという名にふさわしい剣術(といっても、剣を振り上げて斬りつけることがメインのラフファイト)を駆使し、必殺技は「俺の必殺技 パート2」と、単純な性格のモモタロスらしい上、明らかに今考えたのではないかという呼称でした(他にも「俺の必殺技 パート2ダッシュ」、「幻の俺の必殺技 パート1」、「俺の必殺技 パート3と見せかけてストレートど真ん中」と、複数種バリエーション有り)。
とはいえ、その強さは本物の彼。はじめて良太郎と共に「仮面ライダー電王」となったことを機に、2人は共に戦うことになりますが・・・
しかしモモタロスはその暴れん坊な性格な故、以降もトラブルを次々と引き起こしてしまいました。
モモタロス自体は決して「悪い性格」ではないのですが、口が悪く単純なため、けんかっ早いだけでなく、良太郎の協力者である女性(ハナ)を「ハナクソ女」と呼んで怒りを買うこともしょっちゅうでした。彼が実体を保つことができる「デンライナー」の中で、腕っ節の強いハナからぶん殴られるわ、ひっぱたかれるわ、蹴りを喰らうわと、大騒ぎの日常を過ごしていました。
しかしその行動はエスカレートし、ついには彼の宿主である良太郎にも悪影響を及ぼします。良太郎がひ弱な性格であることをいいことに、変身もしていない彼の体を好き勝手に乗っ取って悪行を働き、一線を越えたモモタロスの行動はとうとう良太郎の怒りを買ってしまいます。
「一緒に戦いたくない。泥棒や人にお金を要求したり、取り上げたり、好きじゃない。大切なものとか、お金とかなくすのって、辛いよ。」(良太郎)
良太郎がモモタロスを拒否するということは、モモタロスにとってもう暴れることはできないことを意味していました。
良太郎はモモタロス抜きで、単身怪人と戦いますが、とにかく非力でツキのない良太郎だけではまともに戦えません。一方的に怪人に殴られやられ続ける良太郎の状況に、モモタロスはいても立ってもいられなくなります。
「バカヤロウ!死んじまうぞ!俺を呼べよ!わかった!もう二度と泥棒の味方したり、金の要求とかしねぇ!だから俺を呼べ!良太郎!」(モモタロス)
「・・・『ごめんなさい』は・・・?」(良太郎)
「え・・・?」(モモタロス)
「・・・『ごめんなさい』は・・・?」(良太郎)
「・・・アアアア、もう!・・・ごめぇんなさぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーい!」(モモタロス)
謝罪したモモタロスは良太郎と一心同体になり、仮面ライダー電王(ソードフォーム)となって怪人を倒します。この戦いを機に、良太郎とモモタロスの力関係は逆転し、以降も共に闘う仲間として行動を共にしていくことになります。
物語が進むにつれて、ウラタロス(浦島太郎)、キンタロス(金太郎)、リュウタロスと、電王と共に仲間達が増えていき、モモタロス達が普段滞在しているデンライナー(時の列車)の中はますます賑やかに(騒がしく)なっていきます。
良太郎はイマジン達と共に闘い、苦楽をともにしながらも、明るく楽しい性格であるモモタロス達と絆を深めていきました。
しかし、そんな『電王(2007)』の物語にも終着点の時がやってきました。
それは、これまで出現したイマジン(怪人)達を率いてきた存在との戦いにおいて、良太郎はこれ以上敵と戦えばモモタロス達は消失してしまう衝撃の事実を知ります。
戦うことを躊躇する良太郎に寄り添ったのは、やはりモモタロスでした。
最終決戦を前に、今にも消失しかけている体であるモモタロスは、良太郎に問います。
「お前、ここまで来て迷ったりはしてねぇだろ?してねぇよな良太郎?良太郎!返事ぐらいしろ!」(モモタロス)
「モモタロス・・・?」(良太郎)
「なんだっ!」(モモタロス)
「望みを言うよ・・・」(良太郎)
「いっとくが、出来ねぇ望みは聞かねぇぞ。」(モモタロス)
「僕と・・・最後まで一緒に戦ってくれる?」(良太郎)
「お前の望み・・・聞いたぜ!」(モモタロス)
良太郎は新しい電王の姿(ライナーフォーム)となり、モモタロスと最後の戦いに挑みます。彼らの戦いに他のイマジン達も加勢し、最後の敵を打ち破りました。
しかし、良太郎のまわりにはモモタロス達の姿はありません。
「モモタロス。ウラタロス。キンタロス。リュウタロス。まだ話したいこと一杯あったのに、さよならも言えなかった・・・。」
そう、モモタロス達は消滅し・・・・・・ていませんでした。
悲しみに暮れる良太郎達の雰囲気を邪魔しないように、こっそり隠れてワチャワチャ騒いでいたのを良太郎に発見されます。
「記憶こそが時間。そしてそれこそが、人を支える。もう、誰の記憶に頼ることもない。彼らが共に過ごした、時間と記憶が・・・彼らを存在させるんです。」(デンライナーのオーナー、演:石丸謙二郎)
「時の運行を守る仮面ライダー」としての使命を終えた良太郎は、変身に使用するライダーパスをデンライナーのオーナーに返却し、デンライナーを去ることにしました。
「みんな・・・・ありがとう。」(良太郎)
デンライナーを降り、日常生活に戻った良太郎に車窓から手を振り別れを告げたのは、他でもないモモタロスでした。
「また会おうぜぇーーーーーーーー!」(モモタロス)
「・・・いつか。未来で。」(良太郎)
【電王の次なる戦いの使者は、ショッカー?】ショッカーの度重なる時間改変に挑んだ電王のその後の活躍とは?
1年に渡り放送された『仮面ライダー電王(2007)』は、最終話『クライマックスは続くよどこまでも』にて全49話の物語が完結しました。
大好評の中で幕を閉じた『電王(2007)』ですが、その後も本作の続編映画が次々と公開されることとなり、数ある平成仮面ライダーシリーズの中でも屈指の人気を誇る、正に「特異点」のような作品となります。
このようにテレビから映画へと活躍の場を移した『電王』ですが、毎作新しい敵と衝突していきます。その中で、特に何度も火花を散らした因縁の相手がいました。
それは、初代仮面ライダーと戦った悪の秘密結社「ショッカー」でした。
ショッカーとはご存知、シリーズ第1作『仮面ライダー(1971)』において、仮面ライダー1号と2号によって壊滅させられた悪の組織。
しかしショッカーは平成の世に、何度も組織を再編成して復活し、恨み重なる仮面ライダー達に再挑戦を重ねます。さらにショッカーは自分達が壊滅する未来を変えるため、仮面ライダーではなくショッカーが勝利するという「歴史の改変」を実行し、なんと日本を占領してしまったことさえありました。
そんな「歴史の改変」に真っ向から立ち向かったのは、仮面ライダー1号、2号と並び、時間を旅することができる仮面ライダー電王、そして新ヒーローの仮面ライダーオーズでした。日本を占領したショッカーから世界の平和を取り戻すため、そして仮面ライダーを信じる人々の想いに答えるために、電王達は戦います。
「僕たちが、未来へ伝えたい想いはただひとつー。仮面ライダーは正義の味方。俺もそう信じてるよ。ライダー!」
人々の仮面ライダーに対する強い想いは、「歴史の改変」の影響で消え去っていた仮面ライダー達を次々に復活させます。
「ライダーは4人だけではない!」(仮面ライダーV3)
仮面ライダーV3を皮切りに、ライダーマン、仮面ライダーX、アマゾンと昭和の仮面ライダー達に続き、仮面ライダークウガ、アギト、龍騎と平成の仮面ライダー達も次々に復活していきます。そしてなんと、キカイダーやイナズマンといった他の東映特撮ヒーロー番組の主人公達まで復活させたのです。
不測の異常事態に戸惑うショッカー達に、デンライナーのオーナーは力説します。
「ライダーの歴史は変えられても、ライダーへの想いを・・・変えることはできなかったようですねぇ。人々の想いが、時間を作るんです。つまり、人々の想いがある限り、仮面ライダーは何度でもよみがえるのです!!」
歴代仮面ライダーシリーズの主人公達が一堂に会し、「オールライダー」となった仮面ライダー達は、ショッカーの首領を追い詰めます。しかし首領は真の正体を現わし、全長4000mを誇る超巨大な「岩石大首領」となってオールライダーに迫ります。
そんなオールライダーに加勢したのは、「仮面ライダーは正義の味方」という想いに集った、たくさんの平成の仮面ライダー達でした。
「我々の40年の想い!受けてみよ!」(仮面ライダー1号)
仮面ライダーシリーズ40年の想いを背負った仮面ライダー達は、岩石大首領を撃破します。戦いを終えた仮面ライダー1号、2号は、次世代の仮面ライダーである電王やオーズに、未来を託して去って行ったのでした。
「時の列車」に乗って戦う仮面ライダー電王の物語は、仮面ライダーを愛してきたたくさんの人々の想いを繋げるまでに至ったのです。
そして電王はショッカーを壊滅させた後も、他の仮面ライダー達と力を合わせ、幾度も平和を乱す者達から世界の平和を守っていきました。
そしてモモタロス(電王)の中には、彼の大切なパートナーである良太郎(演:佐藤健)への想いがあり続けました。
「・・・バカヤロウ。俺達も、お前を忘れるかよ。良太郎・・・。」(モモタロス)
たとえ時が流れても、モモタロス達と良太郎の絆は永遠。
忘れることなんてできない、大切な想い出・・・記憶なのです。
最後までご覧頂きまして、誠にありがとうございました。
(参考文献)
・菅家洋也、『講談社シリーズMOOK 仮面ライダー Official Mook 仮面ライダー平成 vol.8 仮面ライダー電王』、講談社
・宇城卓秀、『僕たちの「仮面ライダー」怪人ランキング』、株式会社宝島社