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ウクライナ侵攻で使用されたクラスターテルミット焼夷ロケット弾

JSF軍事/生き物ライター
2014年、ウクライナ侵攻で使用された焼夷兵器

 現在は停戦し小康状態になっているウクライナ東部での戦争では、2014年に「白燐弾が使用された!」と騒ぎになった事があります。

 しかし着弾現場に落ちていた不発弾が回収され、ロシア製多連装ロケット「BM-21グラード」のクラスター焼夷弾型ロケット「9M22S」の弾頭に入っている特徴的な六角柱の子弾が発見され、白燐弾ではなかったことが判明しています。六角柱の金属ケースはマグネシウム製で内容物はテルミットだったのです。

 9M22S焼夷ロケット弾はクラスター型の為、多数の子弾が燃えながら落ちて来ます。その様子がファルージャやガザで使用されたM825A1白燐弾に似ている為に当初混同されてしまったのでしょう。

 ただしM825A1白燐弾は剥き身の白燐を空中でバラ撒く仕様で煙幕弾として設計された兵器であり、特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)の付属議定書3の焼夷兵器の定義からは除外されています。一方で9M22S焼夷クラスターロケット弾は明確に攻撃兵器として設計されており、CCWで使用制限をされる焼夷兵器に分類されます。

 つまりM825A1白燐弾よりも深刻な問題とされるべきものでした。ですが、ウクライナ東部での9M22S焼夷クラスターロケット弾の使用に付いて、国際的には殆ど騒がれずに終わっています。

Convention on Certain Conventional Weapons (CCW) Protocol III: Incendiary Weapons - 国連軍縮局・UNODA

 しかし、焼夷兵器の使用制限に関する特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)の付属議定書3に、ロシアとウクライナの国名が載っています。

※記事内容の訂正:この戦争は事実上ロシアによるウクライナ侵攻なので、内戦という表記は不適当であり訂正し、表現を「侵攻」に改めます。

追記参考記事

4. Were incendiary weapons used in the 2014-2015 conflict in eastern Ukraine?

Russia-backed separatist forces used ground-launched incendiary weapons, in particular 9M22S Grad rockets, in July-August 2014 in at least two towns in eastern Ukraine, Ilovaisk, and Luhansk. They burned several homes and endangered civilians.

4. 2014年から2015年にかけてのウクライナ東部の紛争で焼夷弾が使用されたのか?

ロシアに支援された分離主義勢力は、2014年7月から8月にかけて、ウクライナ東部の少なくとも2つの町、イロヴァイスクとルハンスクで、地上発射型の焼夷弾、具体的には9M22Sグラードロケットを使用しました。彼らはいくつかの家を燃やし、市民を危険に晒しました。

出典:Q&A: Incendiary Weapons in Ukraine | Human Rights Watch (HRW)

軍事/生き物ライター

弾道ミサイル防衛、極超音速兵器、無人兵器(ドローン)、ロシア-ウクライナ戦争など、ニュースによく出る最新の軍事的なテーマに付いて兵器を中心に解説を行っています。

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