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2013年下半期要注目の男女二人組“唄合戦”ユニット、蜜!

ふくりゅう音楽コンシェルジュ
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蜜が繰り広げるシアトリカルでハッピーなせつない物語。

2013年下半期要注目の男女二人組“唄合戦”ユニット、蜜が繰り広げるシアトリカルでハッピーなせつない物語。男女ボーカルの掛け合いによる演劇的な世界観が、メロウな渋谷系サウンドによって可視化されていくワクワク感。2ndアルバム『HeとSheでShow』では、さらに驚き展開多めなアレンジっぷりも特徴だ。デジタルツールの普及によって、レイヤー(階層構造)の足し算でアートが作られる時代、そんな風潮にも同期する足し算の快楽。とはいえ、蜜はアコースティックなオリジナル主義だと思うんだけど、精神性が新しいんだよなと分析。楽しいんだけどせつない。せつないんだけど嬉しい。各種素材にこだわった、ほどよくコンフォート(快適)な最新の蜜ワールド! 今こそ出来たてをご賞味あれ。

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蜜、今のスタイルの完成とは?

●木村さんと橋詰さん、とても自分たちの見せ方をわかっているユニットだなと思いました。今のスタイルが完成したのはいつぐらいからなんですか?

橋詰遼(唄とギター):最初は2曲だけの予定のユニットだったんです。なので特に自我も無いままやっていました。でも2年くらい経ってだんだん今のスタイルになっていきました。

木村ウニ(唄と鍵盤ハーモニカ):ホームである南堀江(大阪)のKnaveでワンマンライブをやるようになって、楽しいライブをやりたいという気持ちが濃くなってきたあたりから、お客さんと一緒に楽しめることを意識しだしましたね。

橋詰:木村さんだけ踊りまくってる感じだったよね。

木村:なんか静と動みたいな感じだったんです。でも、だんだんそういうのが壊れてきて(苦笑)。2人ともちゃんと前に出るという形になって今がありますね。

蜜、二人の子供時代とは?

●もともとダンスはずっとやってたんですか?

木村:ダンスは小学校6年生くらいの時にジャズダンスのスクールに行っていました。フラメンコも習ってました。歌か踊りで生きていけたらなと思っていて、あと絵描きもしたくて、いろいろやりたいことがあって全部同時進行でやろうと思ってました。でも今は蜜が楽しくて中心ですね。

●お二人って子どもの頃どんな感じだったんですか?

木村:このまんまなんですよ(笑)。写真を見ると今とあんまり変わってないっていう。

橋詰:ちょっとでかくなった感じだよね(笑)。

●たとえば学校で発表会とかあるじゃないですか? ああいうとき頑張る感じの子でしたか?

木村:そうですね。『王様の耳はロバの耳』の王様役やりたいって言って「なんだあいつ!」って思われたり(苦笑)。そのとき転校生で「王様役やってるよ、しかも女の子なのに!」みたいなことを言われて。

橋詰:僕も発表会とかで独唱に立候補したり、小学生の時まではすごく歌が好きだったんです。でもそこから思春期になって中学生になったときは、人前で歌うこともなくなっていたし、音楽も聴いていなかったですね。それで高校に入ってまた歌をやるようになって今があります。

●歌うきっかけになったのは?

橋詰:ゆずさんですね。友達でギター弾ける子がいて、コピーをしていました。

木村:わたしは、もともと日本に自分が向いていないんじゃないかと思っていたことがあって。「民族舞踊をやりにアフリカに行きたい!」と親に話していたら、「アフリカはよく知らないけど、フラメンコなら日本でもやっているとこ知っているよ」と言われて。それで一緒に見学に行って踊りにハマった感じです。歌は中学の頃に、ラジオで桃乃未琴さんの「雨声」という曲を聴いたのがきっかけですね。衝撃的ですぐ録音してそのテープを繰り返し聴いて覚えて、みんなの前で歌っていた記憶があります。

蜜、ライブの極意、そして新作アルバムについて

●蜜は男女二人の掛け合い、それを唄合戦として表現されているのが面白いです。掛け合いって構造的に“演じる感”って大事なんじゃないかなと思いました。普通のライブだったらある意味一方通行なところがあると思うんですけど、蜜の場合、劇場感というか空間のあり方が変わるなとライブを観て思いました。

木村:他のバンドと蜜との違いで思うのは、自分が蜜でやっているのってぜんぜんファッションって感じがないことですね。

橋詰:一つの歌詞を一緒に歌うわけだから他のバンドよりも、よりリアルで具体的なのかもしれませんね。

●新作アルバム『HeとSheでShow』は、もともとどんな作品にしたいと思ってつくられたんですか?

橋詰:今まで以上に二人でいることに意味がある楽曲を揃えました。さらに、もうちょっとわかりやすくしようと歌詞だったり、コンセプトをざっくり決めて制作に入りました。サウンドは今までどおり声をメインに、あんまり詰め込みすぎないようにしました。

●レコーディングってどんな雰囲気なんですか?

橋詰:バンドじゃないので、曲によってサポートしてもらうミュージシャンが変わるのが毎回新鮮ですね。今回、曲を作りながらのレコーディングだったので、ドキドキハラハラでした。

木村:自分が今好きな言葉とか、ナウいものをたくさん入れられたなと思います。最新型の蜜をあらわせましたね。

●本作をつくる上でモチーフになったものってありますか?

橋詰:このアルバムをつくる前によく聴いていたのは、マーヴィン・ゲイのデュエットアルバムですね。掛け合いがいっぱいあって、二人で歌うために作ったんだろうなっていう曲の面白さがあってモチーフとなりました。

木村:あと自分たちもカバーしていたんですけど「木綿のハンカチーフ」とかも、二人での掛け合い曲なんですね。「北酒場」とかも、歌詞世界観的には参考になりました。

蜜、「ハズミだした小さなエンジン」

●アルバムの1曲目「ハズミだした小さなエンジン」。日本語ラップ、それこそ演劇的なノリが面白いなと思いつつ、でもサビでせつないポップ感が入ってくるナンバーですがこれはどんな風に?

木村:わたしがちょっとだけラップの歌詞を書いて橋詰くんに送ったらメロディーをつけてくれて、それで二人で合わせつつ徐々に完成させました。なので二人でつくった感じがあります。

橋詰:循環コードをずっと繰り返して展開だけで遊ぶって曲は蜜では初めてなんです。あとラップもライブでは即興でやってたんですけど、あんまりラップっぽいラップというのは曲の中ではほぼなくて。そんな意味でも新しくって楽しかったですね。

木村:兄の影響なんですけど、すごいヒップホップ好きで、蜜でいずれはやるなと思っていたんですが、今回やれてすごく楽しかったです。

●どんなサウンドがお好きなんですか?

木村:ジャパニーズヒップホップですね。RIP SLYMEとかKICK THE CAN CREWとかRHYMESTERとか。わたしけっこう言葉を覚えるのに、音の感じとか映像をびたっと覚えるのが好きなんです。絵本とかも丸覚えするのが好きなんですけど、ラップも言葉をリズムに乗せて、なおかついろいろ伝わってくる感じがすごい好きで。バネがずっとバインバインはねながら、なんか伝えている感じが好きなんですよね。

橋詰:それこそ渋谷系の音楽もよく聴いていました。なのでサウンドもけっこう近しい雰囲気になりましたね。

蜜、「ひとりぼっちのレース」

●2曲目は「ひとりぼっちのレース」。これもまたすごい良い曲で、ぐっと入ってきますね。イントロの空気感のつくりかたが絶妙だなと。

橋詰:フジロックに去年出してもらった時に、似合う曲を作りたいってモチベーションで伸びやかな感じになりました。

木村:わりと誰もが心に抱いているつぶやきを書いている曲ですね。この曲は橋詰くんが歌詞を書いたのですが、いままでわりと歌詞も抽象的な言葉でそれとなく表現するってことが多かったので、こういう具体的な人の気持ちを歌った歌詞はすごく珍しいというか、橋詰くんも進歩しているんだなと思いました。

橋詰:誰やねん、先生みたいになってるぞ(笑)。

蜜、「特別な人」

●3曲目が「特別な人」なんですけど、これも最強にファンキーなナンバーですよね。PVも、二人の演技も最高で、すごいはっちゃけてて良かったです。

橋詰:そうとう監督さんに遊ばれた感がありますね(笑)。

木村:蜜的に尖っているというのは、誰かに対して攻撃的だったりするんじゃなくて、こういうことだなと思います(笑)。

●サウンド展開も含め情報量めちゃくちゃ多いですよね。

橋詰:そうですよね、組曲みたいな感じですね。でもだいたいこうなっちゃうんですよ、なんか詰め込んじゃうクセがあって。そこが一番自分の蜜らしさを出せるポイントですね。やりすぎ感もあるんですけどね(苦笑)。

木村:ライブでは、わたしタンバリン叩きながら歌うんですけど、熱が入りすぎて左手がグローブみたいに腫れちゃって(苦笑)。

蜜、「ふたりの公園」

●4曲目が「ふたりの公園」。これもすごい好きなナンバーで、映像が浮かぶ歌詞世界が素晴らしいと思いました。

木村:これも完全に自分の幼少期、転校が多かったので思い返せばあのときけっこう寂しかったなと。そんな自分を思いだして書くということは多いんですけど。わたしの歌詞ってだいたい映像と一致するんですね。これは幼少期に6年間福岡にいたのですが、その時のイメージを思い出して書きました。メロディーもすごい素朴な感じで良かったです。

●ASA-CHANGのトランペットもやばいですよね。

橋詰:トランペット専門の人じゃあの感じは出ないですね。味がでまくってます。

木村:最初、淡谷のり子さんが歌ってるのかなみたいな。録る時もクリックにあわせるんじゃなくて自分たちの歌のリズムで録ったので、うまいこと素朴な味になったかなと思います。

蜜、「まじない」

●5曲目は「まじない」。音的に深さを感じられて、サビへの展開っぷりが気になります。

橋詰:最初のブルース的なくだりはずっと同じコードなんですけど、マイナーな感じから、いきなりメジャーなサビ展開へという流れへの面白さを意識しました。

木村:歌詞は、曲を橋詰くんから貰ったときに、ちょっと皮肉たれているおばあさんが“昔はこうだった”とかいろいろ言いつつも心の中にピュアな部分があってとか、そういうポイントをサビで伝えたいなってイメージだったんです。でも、最終的に自分が思っていることを言うみたいな感じに変わっていきました。

蜜、「CHAMBARA」

●6曲目が「CHAMBARA」。これ大好きな曲なんです。大人だったら誰しもが思い当たるような日常感に近い物語性が楽しいですね。

木村:そうですね。これって夫婦喧嘩をイメージして書いた曲なんです。夫婦ってなんで喧嘩するのかな?という妄想をチャンバラに見立てて(苦笑)。

橋詰:最初にキメリフがあって、そこから歌謡曲な展開へ流れていくという感じですね。

【7】蜜、「蝸牛」

●7曲目が「蝸牛」。カタツムリですね。サウンド的には物語が見えるナンバーですね。

橋詰:昔からあった曲で、ずっとライブでもやっていた曲なんです。でも発表のタイミングがなくて、この機会にようやく出せた感じで。なのでほんまに初期の曲ですね。

●二人の声が中心というのは結成時からのイメージなのですか?

橋詰:声でどれだけ遊べるかというのは初期からこだわってますね。とはいえ、サポートのミュージシャンの方々に、曲が“求めている”楽器を鳴らして頂いてます。なのでレコーディングとか楽しいですよ。

蜜、「シュガーハニー」

●8曲目は「シュガーハニー」。決めポイントがカッコ良いナンバーですよね。

木村:曲自体は昔の曲をリアレンジした感じです。歌詞はけっこうその時のものから変えました。RCサクセションの「スローバラード」の主人公の男の子が、好きな女の子を鼻垂らしながらニヤニヤしているイメージで書きました。

蜜、休みの時は?

●というわけで以上で全曲解説となりましたが、蜜の二人は普段レコーディングやライブで忙しいと思うんですけど、休みができた時は何されてるんですか?

木村:掃除ですね。あとは、ライブや演劇ですね。もともと劇団に入ろうとしてたんですよ。

橋詰:劇団もかっ!

木村:全部やっときたい派なんです(苦笑)。買い物も好きですね、美術館行くのも好き。

橋詰:僕の趣味は酒を飲むことです。こういう質問に答えられるように去年とか落語に興味があったので通ったんですけどなかなか行けなくって。あ、最近は釣り堀も好きですね。お酒呑めますしね。

木村:サイクリングも好きじゃなかったっけ?

橋詰:あれは趣味じゃないよ、ママチャリだしね(笑)。むしろ移動とか大変なんだから……。

木村:わたしも落語好きだけど、桂枝雀の落語をきいていたら次のリハから自分の顔が枝雀さんみたいになっちゃうんですよ。音楽もそうで、Charaさん聴いていると歌い方もCharaさんみたいになっちゃうという。映画で観たキャラとか、自分がなんかひっかかったものに憑依しちゃうんですね。

蜜、宇宙人説?

●本作のアルバムタイトルが『HeとSheでShow』という、わかるようで何か気になる由来が気になります。

木村:蜜が男女ユニットであるということと、曲の中身も男女の物語を表現していることを伝えたくて名付けました。

●なるほど。ショーというのがある意味シアトリカルな雰囲気にぴったりで似合ってますね。では、最後にリスナーへのメッセージを!

木村:おしゃれカフェユニットではないんだよということですかね。まったりした森ガールみたいな感じじゃないよ、森にいないよってことは伝えたい。でも、木村とはっちゃん(橋詰)は、けっこう宇宙人っぽいってよく言われてますね(真顔で)。

橋詰:えっ、宇宙人? 俺は言われたことないぞ(苦笑)。

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happy dragon.LLC 代表 / Yahoo!ニュース、Spotify、fm yokohama、J-WAVE、ビルボードジャパン、ROCKIN’ON JAPANなどで、書いたり喋ったり考えたり。……WEBサービスのスタートアップ、アーティストのプロデュースやプランニングなども。著書『ソーシャルネットワーク革命がみるみるわかる本』(ダイヤモンド社)布袋寅泰、DREAMS COME TRUE、TM NETWORKのツアーパンフ執筆。SMAP公式タブロイド風新聞、『別冊カドカワ 布袋寅泰』、『小室哲哉ぴあ TM編&TK編、globe編』、『氷室京介ぴあ』、『ケツメイシぴあ』など

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