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27歳のエースを放出した球団が、同じ歳の外野手と1億ドルの延長契約を交わす。この動きは矛盾する!?

宇根夏樹ベースボール・ライター
バイロン・バクストン(ミネソタ・ツインズ)Aug 28, 2021(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 この夏、ミネソタ・ツインズは、エースのホゼ・ベリオスをトロント・ブルージェイズへ放出した。その4ヵ月後、センターを守るバイロン・バクストンと7年1億ドルの延長契約を交わした。

 2人とも、9年前のドラフトでツインズに指名され、プロ入りした。バクストンは全体2位、ベリオスは全体32位だ。来シーズンの年齢(6月30日時点)は、ともに28歳。2021年の開幕時点で、FAになるまであと2シーズンだったことも共通する。今オフ、バクストンに先駆け、ベリオスはブルージェイズから7年1億3100万ドルの延長契約を得た。

 どちらとも1億ドル以上の契約を交わす資金は、ツインズにはない。それぞれを3年6000万ドル程度の契約でつなぎ止める選択肢も、存在しなかった。この年数では、ベリオスもバクストンも受け入れないはずだ。

 一方、2人を相次いで放出し、ここから再建をスタートさせるのも、もったいない。ツインズには、2023年まで契約の残る選手が何人もいる。ジョシュ・ドーナルソンは4年9200万ドル(2020~23年)、マックス・ケプラーは5年3500万ドル(2019~23年)、ホルヘ・ポランコは5年2575万ドル(2019~23年)、昨年2月にロサンゼルス・ドジャースから獲得した前田健太は8年2500万ドル(2016~23年)だ。

 そこで、一方を放出しながら、もう一方とは延長契約を交わした。ツインズが2人を比べ、ベリオスではなくバクストンを選んだのかどうかは、わからない。ベリオスをつなぎ止めることができず、バクストンとの契約を延長した可能性もある。

 バクストンは、直近の出場162試合で、41本のホームランと44本の二塁打を打ち、19盗塁を決め、打率.281(556打数156安打)と出塁率.324、OPS.916を記録している。センターの守備も優れる。ただ、この162試合は、2019年5月1日から2021年のシーズンが終わるまでだ。故障が多く、出場100試合以上のシーズンは2017年だけ。今シーズンの出場も、61試合にとどまった。

 それに対し、ベリオスは、2018年から4シーズン続けて規定投球回をクリア。短縮シーズンの2020年を除くと、3シーズンとも190イニングを超えた。各シーズンの防御率とFIPも、2020年の4.00と4.06以外は3点台、2018年が3.84と3.90、2019年が3.68と3.85、2021年は3.52と3.47を記録している。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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